雅、歌って踊れる新世代のギターヒーローへのインタヴュー

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──デビュー直前、いまの気持ちは?

雅 -miyavi-(以下、雅):いたって普通(笑)。何も変わらないし。

──ところで、ドームのイベントをやる前から肉体改造を始めましたね。やり始めた動機って何だったんですか?

:前に進むために、自分の足りないところを踏まえてるだけですよね。例えば、2ndライブの野音でベテランの方々をバックメンバーにやらしてもらったのも、自分に足りないものがあると思ったからだし…。今年全国ツアーをやったのも、圧倒的にライブの経験値が足りないと思ったからだし…。アジアにライブしに行ったのも含めて、一つ一つの物事に自分に足りないもの、補うべきことを見い出して俺の場合やってるわけですよ。それで、武道館前、自分にとってまだ足りないもの、今補うべきとこは、体力面だと判断したんでジムに通いだしたんです。すべては、自分が自分であるために、変わらない自分であるためには変えていかなきゃいけない。それを実践してるだけですね。

──常に自分の未来を見据えて“今”を行動してるんですね。

:そう。だから、ドームやってる最中は食事制限してる時期だったんで。糖質・脂質をとってないから、じつは頭がぼぉ~としてたんですよ(笑)。確かに食事制限とか辛いとか苦しいとかはありますよ。けど、それを乗り越えた先にあるうま味を俺は知ってて。そっちへの期待が大きいから。

──雅ってS、Mどっちなんでしょうね。

:Mですよ。-miyavi-ですから。

──ギャハハハ!

:いや、そんなおもろないから(笑)。まぁストイックに見られがちなんでしょうけど、俺はそんな痛い、とか苦い感覚ではとらえてなくて。これを乗り越えた先の、高見に到達することの気持ちよさを知ってるからこそ、楽しめてるんですよ。辛さを。

──身体は明らかに変わってきましたよね?

:でしょうね。武道館とかも超余裕だったから(笑)。

──どうでした、武道館のライブの出来は?

:最高だけど最悪だったっていう…。いつもと一緒ですよ。やってる最中に次への課題もどんどん見えてくるし、終わってからもそう。自分のアラを目をそらさずに見ることが、次につなげるために一番大切なことだと思うから。

──その武道館ライブでギターを解禁したわけですが。その流れがそのまま、今回のギター全開のデビュー・シングルにつながっている気がしました。

:すべてはね、運命なんです(笑)。そもそもギターってものに出会って弾きだしたのは、そこに創作する魅力を感じたから。俺このままずっとギター弾けてたらどんだけ幸せなんやろ……。じゃあ弾き続けるにはどーしたらいいか? じゃあそうするためにはこれを職にすればいいと。それがあって今の俺がいるわけで。今回、デビューするにあたって、自分はなぜ音楽やってんだ? という初期衝動を見つめ直す機会があったんですね。インディーズ・ラストシングルの『あしタ、元気二なぁレ。』でアコギのアンプラグドな楽曲を出して、その反動で“ギター弾き倒してぇ、かきむしりてぇ”っていうのもあったし。あと、全国ツアーでギター持たずしてマイク1本で乗り切ったからこそ“歌い手”という部分に対して踏ん切りがついたのもあって、武道館でギターを解禁したんですけど。そういうタイミングが重なったところで“ギター”っていうキーワードが浮かび上がってきて……。

──水玉のフライングVがうにょ~っと。

:そうそう(笑)。もう最近ずっとギター弾いてて。でね、第2の自分のキャッチフレーズを考えたんですよ。“歩くリフ製造機”ってどう?(一同笑)。やっぱリフなんですよ、最近は。自分が聴いてきた音楽って'90年代ミュージックで、リフっていうのは、ホント自分の音楽のルーツなんですよ。だからコレ(「ロックの逆襲ースーパースターの条件ー」)とか頭で作ってないですもん。指先で作った小手先ミュージックですよ(笑)。って、なんだそれ!(一同笑)。

──それぐらい自分に染みついた音楽をそのまんま出した音楽ということ?

:そう。曲の作り方としてはね。今回、形的にはデモのまんまですよ。ギターは。

──雅のギター小僧っぷりをそのまんまブチ込んだ感じ。

:小僧って……(一同爆笑)。まぁ、おもちゃみたいにギターに接してる感じですよ。ギターキッズというのとは違うと思うんです。なんか、職人っぽい感じ? 俺は弦の張り方ももう忘れたし、カスタマイズすることにも興味ないんです。俺が興味あるのは弾くことだけ。そこに重きを置いてるから。ギターが好きなんじゃなくて、ギターを使って創作することが好きという。曲をコピーすることじゃなくて、ギターを使って創作していくことに自分の楽しみを見い出したんで。しかも音楽って、その創作の枠に終わりがないんですよ。だから、僕にとっては無限に遊べるおもちゃですね。やっぱり。

──『21世紀型行進曲』。こちらは“進め”というサビの一言に雅の生き方が凝縮されてる気がしました。

:この曲ね、歌録りが大変やったんです。ちょうどレコーディング時期に食事制限が入ってて。“レコーディングブースでノドを潤すために刺し身食ってるヴォーカリストを初めて見た”って言われて……。まあ俺も初めてでしたけどね(笑)。これまではオレンジジュースとか喉飴を使ってたんですけど、今回はそれがダメだったんで、ノドがしゃりしゃりしてきたら刺し身をスルッと食べてやってたんで、“進め”とか歌ってますけど、自分が一番進めてなくて苦労しました(笑)。

──メジャー初のレコーディングはこれまでとは違いました?

:違いました。今回はデモを作り終えた段階で俺の手から離れて、最終的には海外まで渡って、向こうのエンジニアが音を仕上げたっていう。そのエンジニアとは会ってないし、会話もまともに交わしてない。本来、こんなの“なし”ですよ。ただ、メジャーに行ったということでフィールドは広がるわけで。“そこのワサビ取って”って言うのが“駅前のコンビニまで行ってワサビ買ってきて”っていう感じになる(一同笑)。じゃあ、そこで“顔も見てない人に任せるのはナシだ”って言うことは俺的にはナンセンスかなと。逆に俺は試すべき価値があると思ったから。これまでずっと俺は宅-rock-録で(一同笑)一人で全部やってきて。自分でなんでもやってやる、という本質は変わってないんですけど、いま俺がすべきことは“音楽制作”であって、ミックスすることではない。そういう意味で、その音楽制作のフォーマットを作るということが今の俺の優先順位の一番にあるんですね。メジャーに行って何がしたいですか? ってね、もぉヘドが出るぐらい聞かれるんですけど(笑)。それについて、俺は売れることよりも名を残すことが重要なわけであって。そのためにも、俺はいま音楽制作をする環境を作っていくこと。10年後、20年後にも制作していけるフォーマットを作っていくこと。それを作るためには、たくさんの外部の脳みそが必要なわけで、そこをこれから整えていきたいんです。

──では、最後にこれを読んでくれている人に一言お願いします。

:ネット、つなぎ放題なの? 大丈夫? って(一同笑)”

取材・文●東條祥恵
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