Alicia Keys特集’04 ライヴ・レポート編

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意外なことにアリシア・キーズにとってこれが初の本格的なジャパン・ツアーである。前回は2年前の春にグラミー賞総ナメの実績を引っ提げての赤坂BLITZでのワン・デイ・ライヴ。その頃から、まだ大学生くらいの年齢とは思えないほどの冷静さと貫禄、バック・バンドに対する圧倒的な指揮統率能力には驚かされたものだが、あれから2年、アリシアはすっかり大物アーティストのオーラを携えて帰って来た。

そんなアリシアを迎える日本の客層は20代のOLの女性が大半。R&B系のアーティストのライヴとしてはBガールの姿は予想されていたよりも随分と少ない。その代わりにむしろ30歳過ぎの殿方の姿の方が目立つほど。日本における彼女の支持はR&B的な感じよりはノラ・ジョーンズ的な感じに近いかもしれない。これもグラミー効果なのだろうか。

そんなアリシアのライヴだが、なんとオープニングBGはフィル・コリンズの名曲「イン・ジ・エア・トゥナイト」で荘厳にスタートという予想外の幕開け。BGが明けるとステージ中央の小階段にタンクトップにジーンズ姿のアリシアが颯爽と登場し、2ndアルバム冒頭の楽曲を立て続けて披露。アリシアの華麗にして扇情的な身のこなしに会場全体がたちまちホットになった。一般的には上品でシックなイメージの強いアリシアだが、前回日本に来た時以上にステージではとにかくエモーショナルで、ダンサーを混じえての激しいダンス・シーンも随分と様になる。“ピアノに向かいあった優等生”なプロト・イメージはこの姿を目にすれば、たちまちにして吹っ飛んでしまうと思う。

そして、合間合間に披露するカヴァー曲のセンスも随分とファンキー仕様。ジェイムス・ブラウン・メドレーや「汚れた街」「ハイヤー・グラウンド」などのスティーヴィー・ワンダー・メドレー、クール&ザ・ギャングの「ジャングル・ブギー」など、60~70’sの大定番ファンク・クラシックのオン・パレードに加え、アウトキャストの「ヘイ・ヤ!」の後半に登場する“Shake It Like Poraloid Picture“のフレーズやアッシャーの「Yeah!」のイントロをギタリストがプレイしてみたりと、生バンド全体で肉厚なグルーヴでグイグイと攻撃。

その勢いたるやロック・バンド並でさえあったが、そんなバンドをことあるごとに指揮棒を振るふりをしてコンダクトしていたアリシアの堂々とした立ち姿が実に印象的だった。そうした“動のアリシア”のイメージを強く打ち出したアリシアはトークも快調で終始朗らかさをアピール。もはや彼女のライヴでの定番となったプリンスのカヴァー「ハウ・カム・ユー・ドント・コール・ミー」では、ラストでのお馴染みのイタズラ電話パフォーマンスもバッチリとキメてそこでも会場を賑わせた。

そんなアリシアではあるが、しかし、やはり会場が釘付けとなって目を凝らしたのは、ピアノに向かい合ってのヒット・チューンの熱唱シーン。「会場にいるビューティフル・ウーマンは手をあげて!」とオーディエンスの女性達を鼓舞させてスタートした「ア・ウーマンズ・ワース」をはじめ、現在の彼女の最大の代表曲と言える「ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム」にデビュー・ヒットの「フォーリン」、そして最新ヒットとなった「イフ・アイ・エイント・ガット・ユー」では、鍵盤に全身全霊を打ち付けてあらん限りのパワーで熱唱するアリシアに場内が静まりかえり、緊迫感に包まれる。バック・バンドの操縦も抜群だが、リスナーのハートを掌握する能力も相当なもの。まだ23歳とはとても思えない。シンガーとして、ソングライターとして優れ、おまけに中年男性をたちまちノックアウトさせてしまうほどの美女。同性なら思わず嫉妬してしまいそうな、ちょっと手に届かない完璧な女性アーティスト。その隙のなさが若いリスナーにはまだ少し神々しすぎるかもしれないが、現在、“才色兼備”という言葉がこれほど相応しい女性が存在しないことはまぎれもない事実。今後がますます楽しみだ。

取材・文●沢田太陽

<ALICIA KEYS 2004 DIARY TOUR>
SET LIST
1. KARMA
2. HEARTBURN
3. ROCK WITH YOU
4. WOMAN’S WORTH
5. Alicia Keys PIANO part
6. IF I AIN’T GOT YOU
7. AK Conducting BAND
8. Medley:
   THE LIFE
   STREETS
   HIGHER GROUND
9. SLOW DOWN
10. DIARY
11. FALLIN’
12. BV Solos /YOU DON’T KNOW MY NAM

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