渡辺美里:偶然な幸せを見つける力『Serendipity』に込めた想いを聞く

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渡辺美里

New Album 『Serendipity』 2011.8.3 Release

INTERVIEW

ふと心持ちを変えれば、なんて私は幸せなんだと思えることがきっといっぱいある……というふうに自分自身が思いたい。

――実際のところ、ミディアム・バラッドだったり、3拍子の曲だったり、そうした楽曲が目立ちますね。

美里:そうなんですよ。しっかりと言葉を届ける、気持ちを届けるというタイプの曲が多くなった。別に意識的に選んでいたわけではないんですよ。「新月」っていう曲はキーボードの斉藤有太さんが曲を書いてくれたんですけど、それこそ3年ぐらい前にもらったものなんです。“あとは歌詞しだいだな”なんて話しもしていて。なかなか手ごわい曲だったんですよ。夏休みの宿題を最後までとっておくタイプの私としては“この曲はあとから”と思っていた(笑)。でも、最終的にいちばん私の心の内に近いことが書けたのではないかと思います。斉藤さんはピアニストならではの難しいコード感で曲を書いてくれるので、私としては歌い甲斐がある。

――作家陣の新旧ブレンドというところも、いいバランスです。

美里:曲選びに関しては、私の場合、完全にひらめきなんです。「My Revolution」の時から変わらない。デモテープの段階で聴かせてもらって“これ、おもしろい!”とか“楽しくなりそう!”とかの勘だけで選んでる(笑)。

――ひらめきで曲を選んだものの、いざ書いてみるとなかなか書けないだとか、歌詞が書けても譜割りがうまくいかないという場合もあるでしょう?

美里:たまにありますけど、たいがい当たりますよ。アルバムの中の「新月」などは、変わった曲なので、セオリー通りに歌詞をはめようとしても、はまらなかった。情景と心理とのバランスをとって乗せるのが難しいし、伝わらない。そういうところで苦労した曲ではあるんですが、でも、いちばん歌いたいことが歌えた曲です。歌詞を書くのが難しい曲は、やはり時間がかかります。ノートにたくさんの言葉を書き連ねて、その中から“自分が何を書きたいのか?”を探すというか。そうやって書く場合もある。でもね、自分の内面ばかりを“私は、私は”と書いていくのは、ポピュラー・ソングとしてどうなんだろう?と思っているところもあります。ただアルバムの中には内面ソングがあってもいいかなと。

――アルバム・タイトルである“Serendipity”というワードには、何かを探している時に、探しているものと別の価値あるものを見つける能力や才能という意味がありますが、美里さんがこのタイトルに込めた思いというのは?

美里:私自身が幸せだと思いたい……というところから来ています。以前から“Serendipity”っていう言葉の響きが好きでいて。いろいろな人たちとの出会いはビックリするような偶然なんだけど、結局自分でチョイスしてきた部分もあったなぁと。でもそれは自分の力ではなくて、出会った相手がいたからこそありえたことなんですよね。でも、そこで相手を選ばずに別の人を選んだら、今の自分はないわけで。そう思った時に……激しく孤独だなと思うことが多々ある世の中だけど、ふと心持ちを変えれば、なんて私は幸せなんだと思えることがきっといっぱいある……というふうに自分自身が思いたいというところなんです。

――見つけるということ?

美里:でもあるし、気づくということでもある。“あの人どうしているかなー”と思ったら、その人からメールが来たりとか、“そう言えばずっと連絡してないな”と思っていたら、ばったりその人と道で会ったりすることが、私はすごく多いんですよね。そんなことも“Serendipity”なんじゃないかなと思ってみたり。私がヴォーカリストになるために受けたオーディションは、何十、何百とある中のたったひとつだったり……なぜ他に受けなかったのかは自分でもわからないけど(笑)。そこからたくさんのチョイスをして今に至ってる。本来の“Serendipity”の意味とは違うかもしれない私の解釈かもしれないけど、そう解釈することによって何かの力・気力になるのだとしたら、そうしたいし、そう思いたいんですよね。

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