BUMP OF CHICKEN、生命を深遠に描く魂の歌「ゼロ」大特集

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BUMP OF CHICKEN

ニュー・シングル「ゼロ」 2011.10.19 Release

INTERVIEW

──『FINAL FANTASY 零式』とのコラボレーションは突然オファーをもらったという感じだったんですか?

藤原基央(以下、藤原):いや、突然ということでもないんです。

直井由文(以下、直井):『零式』のクリエイティブプロデューサーであり、キャラクターデザイナーでもある野村哲也さんとは数年前にお食事をご一緒したことがあって。

藤原:そう。『FINAL FANTASY VII アドベントチルドレン』という映像作品(2005年9月リリース)の試写会に誘っていただいたんですよね。ホントに光栄なことに。その試写会は六本木ヒルズで行われたんですが、すごく華やかな席で。僕らは隅っこのほうで萎縮しながら試写会が始まるのを待っていて(笑)。作品にも感動したし、後日、まさか野村さんとお食事させていただけるとは、という感じでした。食事の席での僕らは、ただただ“『FINAL FANTASY』シリーズが大好きです”ということを伝えまして(笑)。

直井:そうだったね。僕らが一方的に『FINAL FANTASY』への思いを語るものだから、野村さんも“ありがとうございます”って言うしかないみたいな(笑)。そういうこともあって、野村さんをはじめスタッフの方々と面識はあったんです。そのときは別に“主題歌をお願いします”とか、そういう具体的な話はなかったんですけど。

藤原:話の流れのなかで野村さんと“いつかお仕事をご一緒できたらいいですね”という会話はあったんですが、当時の僕らはそれが現実のものになるとは思ってもみなくて。

──資料によると、「ゼロ」の楽曲制作に入る前に、藤原さんと『零式』制作チームとのミーティングがあったということで。そこではどんな会話を交わしたんですか?

藤原:えーっと、どんな話をしたかな……まず資料を見せていただいて、開発中の『零式』の画面も見せていただきましたね。資料も5、6ページくらいのもので。文章よりもイラストが大きく載っているようなものでした。キャラクターだったり、イメージカットが。先方から“こういう曲にしてほしい”とか“テンポはこのくらいで”とか具体的な要望は特になかったんですよね。ああ、任せていただけるんだと思って。

──先方からの具体的な要望がないなかで、どういうイメージをもって作曲をスタートさせたんですか?

藤原:まず、ミーティングのときに見せていただいたイラストのイメージがとても大きかったと思います。それは『零式』のキャラクターが一同に介しているものなんですけど。あとはもう、作曲用に録ってもらったスタジオのブースに入って、イラストのイメージと自分がミュージシャンとして、BUMP OF CHICKENとして表現したいことを曲にしていくといういつもと同じ流れでしたね。

──『零式』のストーリーを思い浮かべたりすることは?

藤原:いや、特になかったと思います。強いていえばキャラクターのイラストと戦争の歴史を追っていくようなストーリーであること、というくらいかな。ブースに入ってギターを持つと、自然と意識がニュートラルになるんです。だから、そこで特にあらたまるようなことはなくて。気づいたら曲が書けているような感覚でした。ギターをバンバン弾いて、バンバン歌って、言葉をちょっとずつ書いていく。こういう曲にしようという明確なイメージを心に抱くということはなかったですね。

──「ゼロ」は、生命と生命の交わりとその終わりを深遠な筆致で焼きつける、魂の歌だと思いました。サウンドは全体的に荘厳かつシリアスなムードをたたえているけれど、音、メロディ、言葉の連なりが皮膚感覚に近いものとして迫ってくるような感動があって。『零式』の世界観の核心を想起させながら、その実やはりBUMP OF CHICKEN然とした歌になっている。

藤原:ありがとうございます。これは……ホントに自動的にこうなったという感じなんですよね。特別新しい何かにチャレンジしているわけでもないし……。

──テーマ的にも、藤原さんが、BUMPが、これまでもずっと描いて鳴らしてきたことですよね。

藤原:僕もそう思うんです。で、『零式』の制作チームのみなさんもそういうものを求めてくれていたと思うので。それゆえにありがたいご依頼だったんですけど。ホントにね、最近は曲を作るぞってギターを持つと、本能的というか、無自覚な作業になってくるので。

──ますます作曲という行為が言語化しづらいものになっているという感じですか?

藤原:そうですね。気づいたらできていました、みたいな感じで。気づいたらブースで何時間か経っていて、ある程度できていましたみたいな感じですね。

──話しづらいところを食い下がるようで申し訳ないんですが、確かにテーマはこれまでも一貫して描いてきたことだと思う。ただ、この「ゼロ」という曲は、過去の楽曲群を鑑みても、命の在り方や魂の気配が色濃く描かれていると思うんです。

藤原:うんうん、確かに。僕の曲のなかでもそういう成分が強い曲だと思います。そうですね……最初にいただいた『零式』の設定資料に十数人の主要キャラクターが描かれていて。そのバックの背景は赤黒い感じで、あれは燃えているんだと思うんですけど。

──戦火?

藤原:うん、戦火って感じなんですかね。そこに十数人のキャラクターがそれぞれ武器を持っていて。闘いを予感させるようなイラストですね。その記憶が曲の全体像に作用しているのかなと思うんです。ただ、曲を書くときはどうあがいても、自分が生きている現実に意識が行くので。最終的にはメンバーのことや家族のこと、そしてずっと僕らの音楽を聴いてくれているリスナーのみなさん、ライブを観に来てくれる人たち。そういうところに向けての歌になっていくんです。だから、この曲も僕にとっては日常を唄っているものでもあって。

──日常で感じていることを。

藤原:そう、日常で感じていることを唄っていますね。いま32歳ですけど、32年間生きてきたことを書いている。それをどう捉えるかは、受け取ってくれたリスナーのみなさん一人ひとり次第なんだと思うので。うん、そういうことですね。

──ちなみに『零式』のなかで「ゼロ」がどのようなシーンで流れるのか確認したんですか?

直井:はい、そのシーンだけ確認させていただきました。いやあ……感動しました。そのシーンだけを確認しているから、僕らはストーリーの前後関係はわかってないんですよ。あくまでミュージシャンとして音をチェックさせていただいたので。でも、涙が出てきた(笑)。すごく美しいムービーシーンと重なって「ゼロ」が流れるんですけど……早く全編プレイしたいと思いましたね。

増川弘明(以下、増川):ストーリーの前後関係はわからないけど、物語の象徴的なシーンで「ゼロ」が流れているのはすぐわかったんですよね。その時点で曲をすごく大事にしていだだけていることが伝わってきました。

藤原:感動したね。

増川:すごかったよね。例えば映画のワンシーンだけ観てもなかなか感動できないと思うんですけど。勝手にストーリーの前後関係を予想しただけで泣けてくるというか。

升秀夫(以下、升):ゲームの世界観と曲が必然的に融合していることを強く感じることができました。それがすごく感動的でしたね。

藤原:うん。だから、ただのいちファンとして観ているような感覚でしたね。

直井:僕らとしては、実際に完全版をプレイして、「ゼロ」のシーンに辿り着いたときに、ようやく自分たちが主題歌を担ったんだって実感できると思うんですよ。

──いよいよ12月5日から約3年半ぶりの全国ツアーがスタートします。いまはどんな心境ですか?

増川:3年半ぶりの全国ツアーって感慨深いものがありますね。僕らもすごく楽しみにしています。

直井:この前、メンバー4人とプロデューサーで集まりまして。曲を決めたりとか、どういうライブにしようかという話し合いをしました。練習はまだこれからなんですけど。

──え、なんで?

直井:なぜかというと、いまレコーディングをやっていまして。

──では、さらなる新曲も生まれていると。

藤原:うん、ちょいちょいあるんですよ。

直井:そのレコーディングが終わったら、一気にライブモードに変わると思います。早くライブを観たいという人たちの声も聞かせていただいているので。みなさんに会えることに僕らも感謝してます。セットリストのアイデアもみんなのなかからいっぱい出すぎて“結局全部じゃん”ってなってるんですよ(笑)。

藤原:すごく久しぶりのツアーになるんですけど、そのあいだに僕らが何をやっていたかというと、曲を作っていたわけで。そのすべての曲を作っているときにお客さんに聴いてもらうことを前提にしていたんですよね。僕らには曲を聴いてくれる人がいるんだという事実に助けられてきたから。お客さんに会えること、みなさんの前で演奏できることをすごく楽しみにしています。

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