“デスティニーズ・チャイルド=運命の子供”の正体

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“デスティニーズ・チャイルド=運命の子供”の正体

3枚目のアルバム『サヴァイヴァー』が大ヒットし、がぜん日本でも大注目をあつめているデスチャことデスティニーズ・チャイルドが、'01年6月25日、渋谷AXに登場した。
今回の来日は、10月の本格的来日への前哨戦というか、ショウケース的意味合いの強いものだったが、チケットを一般売りしたところ、またたくまに売り切れた。しかも、一旦4月に来日が決まり、メンバーのビヨンセの病気のために、延期となっていた公演だけに、ファンの熱狂度も半端なものではなかった。

「デスティニーズ・チャイルド」とは、「運命の子供」を意味する。
はたして、「運命の子供」とは一体だれのことなのだろうか。

「レス・メンバー、モア・パワー」

最新ALBUM

『Survivor』

Sony Records SRCS-2424
2001年4月25日発売 ¥2,520(tax in)

1Independent Women Part I
2Survivor
3Bootylicious
4Nasty Girl
5Fancy
6Apple Pie A La Mode
7Sexy Daddy
8Perfect Man
9Independent Women Part II
10Happy Face
11Dance With Me
12Survivor(Maurice's Radio Mix)
13My Heart Still Beats(Featuring Beyonce)
14Emotion
15Brown Eyes
16Dangerously In Love
17The Story Of Beauty
18Gospel Medley(Dedicated to Andretta Tillman)
19Outro(DC-3)Thank You

最新Single

「Survivor」

Sony Records SRCS-2423
2001年4月11日発売 1,260(tax in)

1Survivor [Album Version]
2Survivor [Instrumental]
3Say My Name [Maurice's Last Days Of Disco Millenium Mix]
4Say My Name [Daddy D Remix w/Rap]

最新DVD

「The Platinum's On The Wall」

Sony Records SRBS-1419
2001年5月30日発売 2,625(tax in)

1No, No, No part1
2No, No, No part2
3Bills, Bills, Bills
4Bug A Boo
5Say My Name
6Jumpin, Jumpin
(日本盤DVDのみボーナストラック)
7Independent Women PartI (Live at The Brits 2001(Video Version))

▲「デビュー曲「No, No, No Part 1&2」から「Jumpin, Jumpin」までのヒット曲を収録した初のビデオクリップ集DVD。日本盤DVDにはボーナストラックとして、イギリスのBRIT AWARDSでの「Independent Women Prat1」のパフォーマンス映像が収録されている。

ビヨンセ、ケリー、ミッシェルの3人がステージに登場すると、それまで何か月かたまっていたマグマが一挙に噴火するかのように、観客は熱狂し、彼女たちを迎えた。

熱気あふれる1階のフロアの中にいると、その大歓声にバック・トラックの音もかき消されるかと錯覚しそうなほどだ。

今回のライヴが正式なライヴというよりも、むしろ、お披露め/ショウケース的な色彩が強いのは、バックにバンドをつけず、テープで彼女たちが歌っているためでもある。

だが、彼女たちほどのオーラがあれば、バックがバンドであろうと、テープであろうとまったく関係がないと言わせしめるだけの力があった。

Set List

・Intro
01.So Good
02.No,No,No Part 2
03.Say My Name
04.Survivor
05.Bootylicious
・Dance Break 1
06.Sail On
07.Emotion
08.Gospel Medley
・Dance Break 2
09.Bug A Boo
10.Bills, Bills, Bills
11.Jumpin, Jumpin
12.Independent Women Part 1
(Brit Award Version)

再来日公演

■10月18日(木)
大阪城ホール
【問】大阪ウドー音楽事務所
06(6341)4506

■10月19日(金)、20日(土)
横浜アリーナ
【問】ウドー音楽事務所
03(3402)5999
2作目『ライティングス・オン・ザ・ウォール』からの「ソー・グッド」で始まったショウは、1stからの「ノー、ノー、ノー」、さらに、大ヒット「セイ・マイ・ネイム」、「サヴァイヴァー」、最新ヒット「ブーティリシャス」まで怒涛の勢いで観客をつかんでいく。

2作目まで4人組だったデスティニーズ・チャイルドは、3作目でビヨンセを中心に3人組となった。そして、このメンバー変更がグループに新たなマジックを与えたことは疑う余地がない。

通常、メンバーを減らせばパワーは落ちるものだが、彼女たちの場合、さらに強力なメンバーに差し替え、その変更によってエネルギーがアップしたと言える。少々厳しい言い方をすれば、少しばかり力のないふたりをカットし、やる気のある新メンバー(ミッシェル)を加え、スリムにしながらも、力を凝縮して爆発させる構成にしたというわけだ。

メンバーを減らして、力をアップさせたグループなど、ロック・エラが始まって以来、見たことがない。

ダンス・ブレイクのあと、ライオネル・リッチーの大ヒット曲「セイル・オン」、さらにビージーズの作品「エモーション」、「ゴスペル・メドレー」などを歌い彼女たちの別の魅力も垣間見せた。ゴスペル・メドレーは、彼女たちのシンガーとしての力量をみせつけるに充分なものだった。

歌って、振りつけられた激しいダンスを踊り、彼女たちはステージ狭しと動き回った。

それにしても、リーダーであり、リード・シンガーのビヨンセの魅力にはおそれいった。CDの音から、また、プロモーション用のビデオ・クリップからではわからない強烈なスーパースターのオーラが感じられた。

それは、存在感なのか、ほとばしる音楽的才能なのか、人間的魅力なのか。おそらくは、そのすべてなのだろう。

ライヴのステージで、間近に観て初めてわかるもの、あるいは感じられるもの、それが、ビヨンセにはあった。そういったものを感じさせるアーティストは滅多にいない。彼女は、その点で非常にたぐいまれな才能の持ち主ということになる。

デスティニーズ・チャイルドとは、疑うことなく、ビヨンセそのものだ。かつて、マイケル・ジャクソンジャクソンズそのものであったように、ライオネル・リッチーがコモドアーズのほとんどすべてであったように、ビヨンセは、デスティニーズ・チャイルドのすべてだ。

ということは、いつか、彼女は必ずソロ・シンガーになり、スポットライトを浴びることになる。

「デスティニーズ・チャイルド」は、「運命の子供」と訳す。チルドレン(複数形の子供たち)ではないところに注目してみよう。つまり「運命の子供」とは、ビヨンセそのものを表しているのだ。

わずか55分弱のライヴだったが、僕は、この夜、AXで「運命の子供」の正体を知ったのだ。

吉岡正晴


オフィシャルサイトはこちら


──Destiny's Childの軌跡──

ヒューストン出身の4人組、Beyonce、Kelly、Le Toya、La TaviaからなるDestiny's Childは、'97年「No,No,No Part 2」でデビュー。R&Bシーンにおいてガールズ・グループ自体の勢いが弱まわり、ソロ・シンガーの活躍が目立っていた、そんな時期である。中でもZhaneやSWV、または4人から3人になって復活したEn Vogueなどベテラン勢だけは孤軍奮闘していたが…。

人気ガールズ・グループが少ない中、Destiny's Childがこの時期にデビュー出来たのは逆によかったのかもしれない。しかしほぼ同時期に同じ4人組みのガールズ・グループAllureがデビューし、リスナー側はこの2組を差別化することなく“流行りのサウンド”として消化してしまう。

Wyclefによるプロデュース…さらにラップでも参加を得たDestiny's Child。一方のAllureは、大ネタ「Bridge」使いのトラックにNasにラップで起用した。華やかなジャケに若々しさを売りにデビューした両グループとも幸先のよい船出であり、特にDestiny's ChildはR&Bチャートで堂々の1位を獲得し大ヒットを記録した。

…が、その後の航海は快晴とはいかなかった。ビジュアル先行で完全に作られたグループ的な見え方があったためか2ndシングルは不発に終わり、翌'98年にリリースされた1stアルバム『Destiny's Child』も、ゴールド・ディスクに輝くものの、大きなセールスを残すに至らなかった。リスナー側にとっては「No,No,No Part 2」の大ヒットの印象が強く、その後の作品は全てこけたイメージがあり、アルバムリリース後の期待感はとても薄かった。

しかし、ここが並みのグループとは違うのか、強運なのか、ガールズ・グループの競争率はとても低く、いつしか代表的な存在になる。
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'99年になると、サントラへの楽曲提供など地味な露出で我慢していた彼女たちの2ndアルバム『Writing On The Wall』に先駆けて、久々となるシングル「Bills,Bills,Bills」をリリース。この曲はだらしない男性に向けた強烈な叱咤ソング。現在、彼女たちが持つスタイルの原点とも言えるだろう。

女性R&Bの歌詞というとどこか弱く、恋愛の歌詞が主だったが、ある意味開き直りとも言えるこの歌詞に多くの女性が支持し、ビルボードR&Bチャート9週連続1位という大ヒットを記録した。

この曲で完全にガールズ・グループの代表的な存在になった彼女たちは、この“強い女”路線のオリジネーターとして流行を作ることに。ちなみにその後TLCToni Braxtonなどの成功も、この手の歌詞が大きく貢献していると考えられる。

満を持してリリースされた2ndアルバム『Writing On The Wall』は、新鋭プロデューサーであったShakespereと元ExcapeのKandiをメインプロデューサーに迎え、その大抜擢が当たることになる。そして何よりも彼女たちにとって転機となったのは良くも悪くも、Rodney Jerkinsプロデュースによる「Say My Name」のリカットであろう。

成功の階段を一歩ずつ着実に登ってきた彼女たちだが、同時に方向性の違いによるメンバー間のトラブルが勃発、Le ToyaとLa Taviaの2人が脱退することになる。すぐさま新メンバーにMichelleとFalaが加わるものの、この曲のジャケにはLe ToyaとLa Taviaがしっかり鎮座し、プロモーション・ビデオでは新メンバーが登場しているというイレギュラーな世界となった。皮肉な事にこの曲はグラミー賞で<最優秀R&Bグループ賞>と<最優秀R&B楽曲賞>に輝いた。
.続く4thカットとなるBeyonceがソング・ライティングを手掛けた「Jumpin' Jumpin'」も大ヒット。しかしながらこのシングルの直後、新メンバーとして加入したFalaが脱退してしまう。既にこの頃にはメンバーの中心的な存在であるBeyonceに全てが注目され、旧メンバーとの確執の噂と同時に、マスコミはこぞってDestiny's ChildをあたかもBeyonceのソロ・デビューのためのグループとして取り上げた。

しかし3人になってもグループの勢いは衰えることがなかった。

3人の女性が主人公の映画「チャーリーズ・エンジェル」の主題歌となった「Independent Women Part 1」がまたも全世界で大ヒット。プロモーション・ビデオでは映画にインスパイアされたのか実際に戦うシーンもあり。

「Bills,Bills,Bills」以来のキーワードだった“強い女”も既に板につき、様々な困難やマスコミの攻撃なども結果として“強い女”のイメージ作りに効果的であった。

そして3人としての活動も落ち着き、'01年に入り3rdアルバム『Survivor』の先行シングルとなる「Survivor」が話題になる。もちろん全てのメディアが新世紀のトップ・アーティストとして彼女たちを取り上げている。

これまでも多くのグループ/アーティストが記録を作ってきたが、20歳そこそこの彼女たちは、きっと今までにない記録を作り上げてしまうだろう。今までにないビッグ・グループとして、彼女たちの可能性はまだまだ奥深い。

日本先行で発売される3rdアルバム『Survivor』を引っさげてDestiny's Childは5月に初来日を遂げる。

文●桜井克彦

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