トラットリアレーベル、10年の活動に幕をおろす

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トラットリアレーベル、10年の活動に幕をおろす


レーベルの歴史が網羅されたラストコンピレーション『ANCHOR』リリース

最新アルバム

『ANCHOR』

trattoria 発売中
PSCR-6055~6057 3,800(tax in) CD3枚組

【DISC 1】
1 Slalom/Marden Hill
2 Every Planet Son/Venus Peter
3 Wanna Be Tied/Salon Music
4 Football Football I Like Football/Alan Randall
5 Watermelon Bikini/Bridge
6 Cymbal Hit(Like My Feelin')/Citrus
7 Young Gocart Champion/暴力温泉芸者
8 Motorhead/Corduroy
9 Gauloise/ムッシューかまやつ
10 Chocolate Buttermilk/Wack Wack Rhythm Band
11 若草の頃/Kahimi Karie

【DISC 2】
12 Tidal Wave/The Apples In Stereo
13 Sugar Clip/想い出波止場
14 Clouds Across The Moon/Rha Band
15 Suddenly,Sibylla(シヴィラはある日突然に)/Hideki Kaji
16 X-City Dope Core/Xox
17 Kutsu/Asa-Chan&巡礼
18 When The Party's Over/Border Boys
19 Angel/Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her
20 誕生日/Hiromix
21 We're Both Alone/Rocketship
22 Right Hand Ponk/Ooioo
23 Knm/Rovo
24 Lazy/Cornelius

【DISC 3】
25 Prelude/The Millennium
26 Purple Mania/Indian Rope
27 Plash/Takako Minekawa
28 Sunday Morning/Margo Guryan
29 Silverclothes/Luminousorange
30 Girl/Papas Fritas
31 Heartbeat(Demo Versio)/Tahiti 80
32 E Quick Boogie/Freedom Suite
33 Use Onece And Destroy/Dymaxion
34 Espacio Verde/yoshie
35 Two Flames/Dots+Borders
36 Red Vangogh On/OIO
37 Everybody Is a Star/The Pastels

言ってみれば、会員限定のファン・クラブのような。あるいは、パスワードを持っている者だけが立ち入りできる秘密結社のような。入会の条件は、イギリスやフランス仕込みの粋なウィットが分かること。そして、音楽以外にも映画や洋服やフットボールが大好きなこと。

それがフリッパーズ・ギターを解散したばかりの小山田圭吾も運営に関わるトラットリアというレーベルだった。

スタートは'92年6月。小山田らが大好きだった'80年代のイギリスを代表するインディ・レーベル、チェリーレッドやelでA&Rをしていたマイク・オールウェイの全面協力を得て、“分かる人には分かる”憎いチョイスで自由気ままにリリースし始める。その第一弾となったのはサッカーをモチーフにしたユニークなオムニバス『BEND IT!』(menu3)。後のラウンジ・ブームを予見していたようなこのオイムニバス以降は、ヴィーナス・ペーター、カジヒデキが在籍したブリッジ、コーデュロイなど洋邦織り混ぜたセレクトで時代をシニカルに切り開いていく。

英米の音楽シーンとリンクしながらも、その趣味性強い“痒いところに手が届く”姿勢を貫くトラットリアの存在は、過去に数多く存在した日本のインディー・レーベルのどれとも異なるものだった。

そして、'93年9月、ついに小山田圭吾によるコーネリアスが1stシングル「The Sun Is My Enemy/太陽は僕の敵」(menu21)をリリース。トラットリアはいよいよ勢いづいていく。

初期から作品の中にリリース作品のカタログを封入するなどかつてのelを意識したような可愛いパッケージでコレクタブルなファン心理をくすぐってきたが、じきにTシャツやアナログ盤など関連グッズも制作。また、ブライアン・オーガーやフリー・デザインといった洋楽名盤、アップルズ・イン・ステレオやパパス・フリータスなどアメリカのインディ・バンドや想い出波止場、OOIOOといったボアダムズ周辺のアーティストなどを積極的にリリースするなどその振れ幅はどんどん大きくなっていった。

しかしながら、発売されたばかりの3枚組コンピレーション『ANCHOR』を最後に10年の歴史にとうとう幕をおろす。アーティスト同士の交流が密であることが大きな特徴だっただけに一抹の淋しさは否めないし、作品としてその全てが素晴らしかったとは言えなくもないけれど、日本において“レーベル買い”させる稀有なレーベルの1つとして'90年代をかけぬけていったこのトラットリアが、フェイクと遊び心をモットーにまたどこかで形を変えて復活することを楽しみにしていたい。
        

文●岡村詩野

                 
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