【BARKS編集部レビュー】ドブルベとドブルベ・ヌメロドゥ、人気の秘密は?

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小さな筐体の中で2つの振動板を駆動してしまうというこれまでなかった構造で衝撃登場、あっという間にインナーイヤーヘッドホンのヒット作となったのが、このドブルベだ。

◆ドブルベ、ドブルベ・ヌメロドゥ画像

ラディウスから2009年11月に登場したドブルベは、その重厚な中低音の響きと高級感を伴った落ち着いたワインレッド・カラー(バーガンディ)のセンスの高さもあいまって、イヤホン・ヘッドホン好きから高評価を得た。そんな状況であったから、第2弾となる上位機種ドブルベ・ヌメロドゥが2011年3月に登場したときも諸手を上げての歓迎を受け、ドブルベ・シリーズはすっかりヘッドホン界の人気者となった。

ドブルベもドブルベ・ヌメロドゥも、共通して言えるのは低域の充実さで、背中をドスンと押されるようなベードラの心地よさは、まさにライブ会場の空気感のそれを体感させてくれるもの。ことバンドサウンドにおいて、だぶつかない非常にタイトで引き締まった太さは至宝の心地よさで、リスニングの邪魔をしないこの分厚さが、音楽を聴く楽しさを倍増させてくれた。「今までの知っている音源がこんなに迫力でカッコいいなんて…」と、ドブルベが鳴らすサウンドは常にセンセーショナルだ。

低域が充実したヘッドホンは他にもいろいろあるが、ドブルベシリーズの低域が「何故にこんなに気持ちいいのか」…聴き込んでいるうちにわかったことがひとつある。

多くのヘッドホンの場合、キックとベースが同時に生み出すアタックの厚みに耳を奪われるものだが、ドブルベが描き出す低域には、その後のベースの音の切り際を鮮やかに伝えてくれるデリケートな分離の良さがある。つまり「ドラマーが引っ張るビート」と「ベーシストが生み出すグルーブ」を、余すところなく伝えることができる稀有なヘッドホンということだ。

グルーブに必要なのはアタックのインパクトではない。その音の切際…音符の長さがどうなっているかだ。ベースが音符の長さをどのようにコントロールするかによって音楽の表情はダイナミックに変化する。ベースの音の切り方次第でバンドサウンドはタイトにもルーズにも変わり、ベタベタな8ビートなのか跳ね気味のファンキーなグルーブなのかも、ベーシストがコントロールする白玉の長さでその表情が作り出される。

重要なサステインのディテールをしっかりとオーディエンスに伝えるには、100Hz以下の重低域の帯域ではなく300Hzあたりの低域寄りの中音域の充実が効いてくる。リズム隊が生み出すこの絶妙な表情と表現のツボを、抑えた価格で端的にリスナーへ届けてくれるからドブルベは凄いのだ。

さて、平均実売価格13,000円のドブルベと平均23,000円というドブルベ・ヌメロドゥ、その違いと、コスト・パフォーマンスはどうなのかが、最も気になるところ。両者を使い込んだので、その使用感をお伝えしたい。

まず、見た目はもとより装着感も両者はまったく違う。ドブルベはハウジングが耳にあたり痛みを生じる例があるようだ。私はどれだけ長時間使用してもそのようなことは一切なかったが、BARKSの営業スタッフでプレイベートでドブルベを使っている彼は痛みを感じる箇所があるという。そんな声を反映したのか、ドブルベ・ヌメロドゥは世に数多あるインナーイヤーの中でもトップクラスの装着感だ。自然に耳の穴にはまり、すんなりそのままボディも安定してくれる。

ただし遮音性はドブルベのほうが高い。きっちり密着させれば電車でも使用可能なドブルベに対し、ドブルベ・ヌメロドゥは空気穴が複数開いていることもあってか、遮音性は並以下で、外界の騒音はそれなりに入ってくる。幹線道路沿いや電車内などはせっかくの極上低域がすべてマスキングされてしまい、存分に楽しむことができないので、ご注意を。

なお、細かい話だが、ドブルベ・ヌメロドゥのLR表記は青と赤のカラー印字になった。ドブルベのLR表記もはっきりわかりやすく必要十分な視認性を持っているが、この色使いによって視認性は格段にアップしている。些細な変更だが、耳にはめるときの小さなストレスを軽減させることは、日々の使い心地をさらに向上させる。使用者の立場を理解したきめ細やかな心遣いこそ、ブランドの姿勢と開発者の心意気を映し出す鏡だ。ドブルベからドブルベ・ヌメロドゥへ、清く正しいバージョンアップが図られたひとつの象徴的なポイントなのではないか。

はめやすさとその後の装着感、「もっとハイが欲しい」といったドブルベ・ユーザーからの声に対する回答がドブルベ・ヌメロドゥであるとメーカーは語っているが、同時に音場も広がり分離の良さも向上しているようだ。しかしながら、音が塊となって耳にぶつかってくるドブルベの魅力とは、また違う性質のもので、価格通りの上下位の優劣で判断する両者ではないと思う。

どちらも絡みつくような中低音がクセになるし、私の耳には高域もどちらも必要にして十分に出ていると感じる。ドブルベとドブルベ・ヌメロドゥのサウンドにおける一番の違いは「音の近さ」で、鼓膜の近くで熱く迫力の聞かせ方をしてくれるのがドブルベであり、広い定位をもって、大きな空間を感じさせてくれるのがドブルベ・ヌメロドゥだ。ドブルベの音の近さは、1kHzあたりの若干の強さから感じてしまうものかもしれない。このサウンドキャラクターはハウジングの物的周波数特性に起因するものではないかと思う。

そもそもハウジングの容積と構造・通気制御で、サウンドはデザインされる。ドブルベ・ヌメロドゥの筐体デザインは形状・装着感ともに素晴らしいが、実は、風切音がケーブルのみならず、複雑化した筐体自体からも発生している。ケーブルのタッチノイズを盛大に受け取ってしまうという事実もあるが、このあたりに関しては、合成樹脂の軽量素材起用に要因があるのではないだろうか。

ドブルベに求めたい唯一の改善ポイント、それはケーブルのタッチノイズの軽減に尽きる。想定外の使い方ながらドブルベは耳掛けして使うことでタッチノイズはずいぶんと軽減することができるが、ドブルベ・ヌメロドゥは、その考え抜かれた形状ゆえに、耳掛けは不可能なのだ。ケーブルのスライダーをしぼり顎に密着させればケーブル・ノイズは格段に軽減するので、それで問題は解決…なんだけど、体育時間の紅白帽を思い出す感覚がどうにも微妙すぎるのだ。

大幅な価格増になってしまうかもしれないし、重量増がデメリットかもしれないが、ドブルベ・ヌメロドゥのハウジングを剛性の高い金属で作ったら、それに似合うだけの質感と引き締まったサウンド、ノイズの軽減までもが図られるのではないかと、頭の中に新ドブルベ妄想が広がる。加えて6kHz~8kHzあたりが+3db程度上がるだけで鮮やかさが向上し、ハイが物足りないという意見も払拭、最強の存在となるのではないかと思ったり。

カラーバリエーションからサウンドデザインまで、メーカーには愛用者からのいろんな声が届いているだろうが、それもこれもドブルベの誇る分厚く濃密なサウンドに惚れたオーディエンスから送られる、未来へのラブコールだ。ドブルベ・シリーズは、ぎりぎりまで抑えられた価格で音楽の楽しさを格段に向上させてくれる「メイド・イン・ジャパン」を誇る名機として、これからも我々を存分に楽しませてくれることだろう。

text by BARKS編集長 烏丸

●ドブルベ(W)※ドブルベとはWのフランス読み
型番:HP-TWF11R バーガンディ(レッド)
型番:HP-TWF11K ノワール(ブラック)
形式:ダイナミック型
ドライバー:φ15mm/φ7mm DDM方式
出力音圧レベル:105dB/mW
再生周波数帯域:10~18,000Hz
最大入力:20mW
インピーダンス:24Ω
プラグ:3.5mmステレオミニプラグ
コード長さ:約120cm(Y型)
コード材質:ナイロン
質量:約5.5g(コードを除く)

●ドブルベ・ヌメロドゥ(W n°2)※ヌメロドゥとはナンバー2のフランス読み
型番:HP-TWF21K ノワール(ブラック)
形式:ダイナミック
ドライバー:φ15mm/φ7mm (Dual Diaphragm/CCAW)
出力音圧レベル:107dB/mW
再生周波数帯域:10Hz-20,000Hz
最大入力:20mW
インピーダンス:24Ω
質量:約7.3g(コードを除く)
コード材質:ナイロン
プラグ:φ3.5mm 金メッキステレオミニプラグ
ケーブルの長さ:約120cm(Y型タイプ)

◆ドブルベ・オフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル

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