【BARKS編集部レビュー】電池駆動、マイク入力、LOOPER機能も装備、ストリートでも実力を発揮するローランド アコースティック・ギター用アンプAC-33-RW

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▲AC-33-RW
ローランドの“アコースティック コーラス”ACシリーズは、アコースティック・ギターのためのアンプ。フラットでクセがなく、アコースティック・ギターならではの温かみのあるサウンドを出せることで、すでにアコギ用アンプの定番になっている製品だ。ロックバンドのステージでも使える90W(45W+45W)のAC-90を筆頭に、60W(30W+30W)のAC-60、コンパクトな30W(15W+15W)のAC-33の3モデルがあり、いずれもステレオ仕様で、ギター・チャンネルのほかにマイク/ライン・チャンネルや外部機器を接続できるAUXイン、さらにはライン・アウトも備えており、弾き語りからレコーディングまで様々な場面で活用できるのが特徴といえる。

この中で特に注目したいAC-33。乾電池(単3×8本)でも駆動でき、弾いたフレーズをその場で録音、再生できるLOOPER機能があるなど、独自の強みをいくつも持ったモデルだからだ。これならストリートでも便利に使えるし、自宅のコンパクトなシステムで録音するのにもちょうどよさそうだ。


■コンパクトなのに高級感があるローズウッド仕様

今回チェックしたのは、AC-33-RWというモデル。AC-90・60・33はブラックの外観だが、型番の末尾にRWがついていて、キャビネットを木目パネルにしたローズウッド仕様を意味している。ちなみにこのRWのモデルがあるのは今のところAC-33とAC-60だけ。

AC-33-RWは、とてもコンパクトで軽い。以前採り上げたローランドのギターアンプCUBE-80XLがとても重く感じたのと正反対だ。サイズは幅(W)318×奥行き(D)223×高さ(H)243mm、ちょうど小型のモニタースピーカーくらいの大きさで、重量は4.7kgしかないから、上部のハンドルを握って片手でホイホイと運べてしまう。これならストリートにも簡単に持ち出せる。それでいて、ローズウッド仕様の本体は、黒に近いつや消しのこげ茶が引き締まっていて、とても高級感がある。ウッドパネルは、使いこんでいくとさらに味わいが増した感じになりそうだ。

■ステレオ仕様で広がるサウンド


さっそくエレアコをつないで演奏してみた。まず感じたのは、予想以上に自然な響きで鳴ってくれるということ。クリーンなサウンドに定評あるローランド・アンプの名機“ジャズコーラス”JC-120にも通じるようなサウンドだが、それをもっと自然にしたような温かみを感じる音だ。アンプを通したときの“エレクトリック”な感じが少なく、アコースティック・ギターを生で聴いたときに近いサウンドといっても言い過ぎではないだろう。もちろんアンプを通した“エレクトリックぽさ”を利用したエレアコらしい音を使いたいこともあるだろうが、生々しいアコギサウンドが欲しいときも多い。あえてマイクを立てるなど試行錯誤したギタリストも多いだろう。しかしAC-33-RWがあればそんな苦労は不要。アコギらしいサウンドを簡単に得ることができるのだ。12cmスピーカー2発を搭載したステレオ仕様になっていることもあって、音の広がりも本当に自然で心地よい。ちなみに、背面にあるLINE OUT(ライン出力)もステレオ仕様なので、ステレオで録音することも可能だ。

コントロールはVOLUMEのほかにBASS、MIDDLE、TREBLEのイコライザーがあるだけのシンプルな構成だが、このイコライザーもそれぞれがアコギ向けの絶妙な帯域に設定されていて、TREBLEを上げれば歯切れよく、激しいストロークもつぶれずに前に出てくるし、BASSを上げればアコギならではの低音弦のウォームなサウンドを作ることができる。

ただし、演奏の微妙なニュアンスまできっちりと表現してくれるサウンドになるため、演奏する側にもそれなりのテクニックが要求される。エフェクトを通したエレキのように、アンプの音が演奏を補ってはくれない、ということは頭に入れておいてほしい。

■コーラス、リバーブも装備

エフェクトはコーラスとリバーブ/アンビエンスを装備する。コーラスは、OFF/SPACE/WIDEを切り替えるだけで、かかり具合の調整などはないシンプルなもの。SPACEは3バンドの帯域分割コーラスで、低音域/中音域/高音域それぞれの帯域に適したコーラスがかかる。中域から高域は広がるが、低域はどっしりと中央に定位して聴こえるため、音が散ってしまわずに、独特の奥行きが感じられるようになる。特にアルペジオは、立体的になってすごくカッコよく感じられた。またWIDEは空間合成コーラス。エフェクト音は右スピーカー、ダイレクト音は左スピーカーから出力され、これらが空間でミックスされることでコーラス効果を生んでいる。こちらはJC-120の内蔵コーラスにも似た感じ、SPACEに比べるとちょっと加工された雰囲気になる。言ってみれば“わかりやすいコーラス”といった感じだろうか。ストロークやリードなど様々な場面で使えそうだ。

リバーブ/アンビエンスは、1つのつまみで両方のエフェクトのオン/オフとかかり具合を操作するタイプだ。つまみの12時の位置から右半分がリバーブ、左半分がアンビエンスになっていて、つまみを回していくと、最初はリバーブが深くなっていき、12時の位置でオフ、そこから右に回すにしたがってアンビエンスが深くかかるようになる。この2つはどちらもリバーブ系のエフェクトなのだが、リバーブは自然な質感の残響が残り、音に深みが出てくる印象。アルペジオに適しているのはもちろんだが、ストロークのときも残響が邪魔にならないのがいい。これに対しアンビエンスはより広がりがあり、リバーブより若干派手に聴こえるので、単音のリードがちょっとさびしく感じるときなどに使うといいかもしれない。

■ストリート・パフォーマンスに便利なマイク入力、アンチフィードバック、乾電池駆動

AC-33-RWは、ストリートで演奏するのに適したアンプだ。コンパクトで持ち運びしやすいのはもちろんだが、それ以外にもストリート向けといえる機能が豊富に備えられている。まずはACアダプターのほか電池駆動もできること。野外では電源の確保も難しいから、これはストリート派にはうれしい機能だろう。使用する電池も単3乾電池8本なので、万一電池切れになっても近くのコンビニに駆け込めばいい。電池ボックスは本体背面側にあり、電池交換も簡単に行なえる。ただし、乾電池使用時は出力が20W(10W+10W)になる。といっても、音量は十分に出るから心配はいらない。

AC-33-RWにはギター入力のほかにマイク入力やAUX入力も備えられている。たとえばマイクとギターを両方使って弾き語りをしたり、もう1本のエレアコをマイク入力につないでギターデュオの演奏もできる。さらに、AUX入力にiPodなどのプレイヤーをつなげば、伴奏を従えてギター演奏する、といったことも可能なのだ。ちなみにマイク入力にはXLRと標準フォーンの2つの端子が用意され、標準フォーンではTRSタイプと標準タイプの両方に対応する(1系統のみ使用可)。また、AUX入力端子はRCAピンジャックとステレオミニジャックの両方があり、入力レベルを調整するつまみもある。伴奏の音量をここでサッと調整できるのは非常に便利だ。

ギターの音がよくても、マイク入力はオマケ機能だろう、と最初は考えていたのだが、実際に弾き語りをやってみると、これがかなり使える機能であることに驚いてしまった。ヴォーカルの音質も、ギター・アンプとは思えないほど(エレキギター用アンプではないのだから当然かもしれないが)自然でクリアだ。場合によってはこれをヴォーカル・アンプに使ってもいいのではないかと思えるくらい。ギター、ヴォーカル両方の音量をかなり上げても音割れすることもないし、トータルの音量もかなり出る。ストリートやライヴハウスなどでも十分に使えるだろう。また、ギターチャンネルと共通のリバーブ/アンビエンスも使えるし、コーラスはマイク/ライン・チャンネル用に独立して装備している。とくにこのコーラスは派手ではないのでヴォーカルにも十分使える。ちょっと声を分厚くしたい、というようなときに使ってみると面白そうだ。

また、ライヴの際に困るのがフィードバック(ハウリング)。特にアコースティック・ギターはスピーカーからの音を拾いやすいのでフィードバックを起こしやすいのだが、AC-33-RWにはアンチ・フィードバック機能がある。スイッチをオンにしておけば、自動的にフィードバックを引き起こす周波数帯域の音を抑えてくれる。オンにしても音質にほとんど変化はないので、これはライヴの際には常にオンにしておきたい。

■フレーズをその場で録音、再生できるLOOPER機能

AC-33-RWには、LOOPER機能も搭載されている。弾いたフレーズをその場で録音し、ループ再生することで一人セッションができるという、ギターアンプのCUBEシリーズでもおなじみの機能だ。AC-33-RWでは、2つのボタンで簡単にLOOPER機能を操作することができる。

では、アルペジオにコードストローク、そしてリードの3パートを重ねてみよう。まずはじめにREC/PLAY/OVERDUBボタンを押すと、RECの赤いLEDが点滅して録音待機状態になる。このまま演奏を始めれば、自動的に録音が開始され、RECの赤いLEDが点灯状態になる。とりあえずコーラスをSPACEにして、アルペジオを8小節弾いてみる。そして再びREC/PLAY/OVERDUBボタンを押して録音を終了すると、PLAYの緑LEDが点滅している。これは今の演奏が本体メモリーに録音されていることを示している。さっそくREC/PLAY/OVERDUBボタンを押して再生してみると、リズムがヨレヨレで次のフレーズを重ねにくそうだ。そこでSTOP/CLEARボタンを長押しして消去。今度はイヤフォンで手持ちのメトロノームを聞きながら再度挑戦。今度のテイクはOKだ。弾いていたときとまったく同じクリーンなサウンドで、音質にもまったく文句はない。

次はストロークのオーバーダブ。これは再生中にREC/PLAY/OVERDUBボタンを押せばOKなのだが、ここで音色をちょっと変えてみることにした。LOOPER機能のセクションは、アンプやエフェクトの後ろにあるので、エフェクトをかけて演奏すればそのままの音で録れるし、オーバーダブのときはエフェクトやイコライザー、音量の設定を変えることができるのだ。ストロークはコーラスをオフに、リバーブを控え目にかけて録り、最後のリードはWIDEのコーラスと深めのアンビエンスをかけて録ってみた。同じギターなのだが、3つのフレーズそれぞれの広がりや奥行きが微妙に違うので、とても立体感のあるアンサンブルに聴こえてくる。だから一人セッションをしているだけでも楽しいし、ストリートライヴならとても効果的に色々な曲を演奏することができるだろう。また、このLOOPER機能では、マイク/ライン・チャンネルやAUXインの音も録音できるから、声を重ねたり、伴奏を重ねたりといったこともできる。普通の一人だけの弾き語りではとてもできないような表現を可能にしてくれるのだ。

なお、LOOPER機能の操作やエフェクトのオン/オフは、別売のフットスイッチ(BOSS FS-5U、FS-6)でも行なうことができる。ギターから手を離せないライヴの際には必須だろう。


▲AC-60-RW
■ストリート向けのAC-33-RW、レコーディング向けならAC-60-RW

このAC-33-RWは、フラットでクリーン、とにかく自然な響きのアコースティック・ギター・サウンドが出せるアンプだ。そしてサイズがコンパクトで乾電池駆動も可能、様々な表現ができるLOOPER機能も搭載するなど、まさにストリートやライヴハウスで一人で弾き語りをしたい人にはベストマッチのアンプと言えるだろう。ライン・アウトのXLR端子やDI/チューナー・アウトが省かれているため、本格的なレコーディングでも使いたいなら、16cmスピーカー2発、30W+30WのAC-60-RWを薦めたい。こちらはレコーディング用にTRSバランス出力に対応するダイレクト・アウトがあるし、簡易PAとしても使えるサブ・ウーファー出力や、ギターの持ちかえ時などに便利なミュート機能など、大きなライヴ向けの機能も充実している。ただ、LOOPERなどAC-33-RWのストリート向け機能は捨てがたい。ギタリストにとって、これは悩ましい選択になりそうだ。

○AC-33-RW 主な仕様
定格出力:30W(15W+15W)(ACアダプター使用時)、20W(10W+10W)(アルカリ乾電池使用時)
スピーカー 12cm(5インチ)×2
接続端子: ギター・インプット(標準タイプ)、マイク/ライン・インプット(XLR※、TRS標準)、AUX IN(ステレオ・ミニ、RCAピン)、ライン・アウト(L/MONO、R)(標準タイプ)、ヘッドホン(ステレオ標準)、フット・スイッチ(TRS標準)、DC IN
※ファンタム電源の供給はできません
電源:DC13V(付属ACアダプター)または、単3形アルカリ乾電池×8、単3形ニッケル水素充電池×8
連続使用時の電池の寿命:アルカリ乾電池=約8時間、ニッケル水素充電池=約9時間
外形寸法:幅(W) 318 mm 奥行き(D) 223 mm 高さ(H) 243 mm
質量(電池除く):4.7 kg

AC-33-RW
価格:オープン(予想実売価格 4万3,000円前後)
発売中

AC-60-RW
価格:オープン(予想実売価格 6万2,000円前後)
2011年11月下旬発売予定

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