【BARKS編集部レビュー】ローランド×フェンダー、COSMギター・モデリング搭載VG Stratocaster(R)「G-5」はテレキャスやアコギ、12弦の音も出せるストラト

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▲VG Stratocaster(R)「G-5」
エレキ・ギターには、ストラトやレス・ポール、テレキャスといった様々なタイプのものがあり、それぞれ音に特徴がある。取り付けられているピックアップの影響も含め、タイプによって大まかに“らしい”音というのがあり、同じアンプでもギターが違えば歪み方も違ってくるし、エフェクトのかかり方も変わる。だから、どんな曲のどんなパートでも同じ1本のギターを使い続けるという頑固なギタリストもいるだろうが、やはり現在は曲調などによって異なるタイプのギターを使い分けるのが主流だ。しかし、ステージでは何本ものギターを持ち替えるのは面倒だし、アマチュア・ギタリストならそう何本もギターを買いそろえるのも厳しい。1本で様々なタイプのギターの音を出せたらいいのに、と思うギタリストも多いだろう。そんな難題を、ローランドのVギターシリーズは簡単に解決してしまう。リアルな音作りに定評あるCOSMギター・モデリング・テクノロジーにより、1本のギターで様々な定番ギターの音を作ることができるのだ(COSMとは、楽器の素材や回路、さらに電気的、電子的な影響、そして空間特性も含め、考えられる様々な要素をDSP処理し再現するローランド独自の技術)。

そのVギターシリーズの新製品が、VG Stratocaster(R)「G-5」だ。あのフェンダーとの提携によって生まれたもので、ストラト本体の内部に、様々なギターのボディ形状やピックアップの特性をモデリングする「COSMギター」を組み込んだギターだ。出力を処理する外付けユニットは不要だし、ギターのタイプ変更や変則チューニングの設定は手元のツマミでサッと設定できる。このギター1本ですべて完結しているから、アンプ直結のシンプルなシステムだって組める。多彩な音を出せるのに、普通のギターと同じようにまったく違和感なく扱える新しいギターなのだ。1977年のGR-500以降、つねに世界のギター・シンセをリードしてきたローランドのVギターと、エレキ・ギター界の定番中の定番、フェンダー・ストラトキャスターが手を組んだ次世代のギター「G-5」を試奏してみた。


▲VG Stratocaster(R)「G-5-BLK」
■3シングルの普通のストラトに秘められたCOSMギター

「G-5」は、パッと見たところ何の変哲もない普通のストラトだ。「G-5-BLK」はアルダーのボディにシンクロナイズドのトレモロ、メイプル1ピースのネック(Cシェイプ)にフレットは22。基本的にはAmericanシリーズのストラトキャスターだ。ちなみに今回試奏した「G-5-BLK」のほかに3トーン・サンバーストの「G-5-3TS」もあり、こちらはローズウッド指板になっていること以外は共通の仕様だ。

「G-5」をよく見てみると、通常のストラトと異なるところがいくつかある。まずはツマミの数。ボリュームとトーンが1つずつあるほか、“T”と“M”の黒い小さいツマミが2つ設けられている。これはTUNING(チューニング・コントロール)とMODE(モード切り替え)で、COSMギターのモデリング・モードや変則チューニングを切り替えるためのスイッチになっている。そしてツマミの近くにはLEDインジケータがある。これはシールドをギターに接続して電源がオンになると点灯し、バッテリーの消耗を点滅、バッテリー切れを消灯で知らせてくれるもの。ちなみにバッテリー・ケースは裏側にあり、単3乾電池4本を使用。COSMギターのシステムはこのバッテリーで駆動されるため、バッテリー切れ、またはバッテリー不使用の場合は、COSMギターは使えなくなるが、その場合でも普通のストラトとして演奏可能になっている。

そして、ピックガードと同じ白い色なので目立たないが、COSMギターのためのデバイデッド・ピックアップ(GKピックアップ)が、ブリッジのそばに取り付けられている。ローランドのVギターやギター・シンセでおなじみのこのピックアップは、6本の弦の振動をそれぞれ個別に取り出すことができる。1つ1つの音を個別に処理することができるから、緻密にモデリングされたサウンドを使えるし、各弦のチューニングを個別に変更する変則チューニングも可能になるのだ。


▲ボリュームとトーンのほか、“T”と“M”の黒い小さいツマミが2つ。これがTUNING(チューニング・コントロール)とMODE(モード切り替え)。
■素の音とモデリングの音、2タイプのストラト・サウンドを楽しめる

「G-5」のMODEスイッチでは、N、S、T、H、Aの5つのモードに切り替えることができる。つまり5タイプのギターに瞬時に切り替えられるということだ。まずはMODEスイッチをNに合わせ、ノーマルのストラト・モードで弾いてみる。これは普通のフェンダー・ストラトのサウンド。それもそのはずで、これはCOSMギターシステムのモデリングがオフになるモードで、このギターの素の音が出ているのだ。張りがあって甘みも感じられる、レンジの広いストラトらしいサウンドだ。ピックアップの切り替えスイッチは5ポジションで、ネック側からフロント、フロント+センター、センター、センター+リア、リアの5つの音色に切り替え可能。これも通常のAmericanシリーズと同様だ。

MODEスイッチをSにすると、モデリング・ストラトキャスター・モードになる。これは読んで字のごとくストラトキャスターのモデリング。もともとこのギターがストラトなのにストラトのモデリングが用意されているというのも面白いが、より典型的なストラトをモデリングしたものということなのだろう。ノーマルのストラトと同じようなキャラクターだが、粒立ちがよく、音圧も増していて、若干パワフルに感じるサウンドになっている。しかも、シングル・コイル特有のノイズが極めて少ないのも魅力だ。ピックアップ切り替えはノーマルと同じ5ポジションだ。リアの軽快な音でのカッティングも心地いいし、フロントやフロント+センターの甘いトーンならゆったりしたジャズっぽいリードもカッコよく決まりそうだ。



▲VG Stratocaster(R)「G-5-3TS」
■テレキャスター、ハムバッカー、アコースティックも非常にリアル

Tは、モデリング・テレキャスターのモード。アタックがシャープで抜けがよく、ジャキジャキした粗っぽいサウンドはまさにテレキャスの音。フロントよりリアの方がパワフルなところもまさにテレキャスの特徴がそのままだ。このモードでは、5ポジションのピックアップ切り替えのうち、真ん中の3つはフロントとフロント+リアのミックス、リアだが、両端はワイド・レンジのフロントとリアになっている。つまり実際のテレキャスターのサウンドだけでなく、さらにパワフルなサウンドもこのG-5なら出すことができるわけだ。実際、ワイド・レンジのリアでは、中低域が追加されてより太くパワフルになり、それでいて硬質で歯切れのよいテレキャスらしさはちっとも失われていないという、利用価値の高そうなサウンドが出せる。歪ませ方によってかなりワイルドな音になるから、クラッシュみたいなパンクにはぴったりだし、初期のブラック・サバスみたいなメタルだって似合いそうだ。また、ワイド・レンジのフロントはかなりパワーがある。フロント・ピックアップが若干非力なことはテレキャスの特徴であり弱点とも言われているが、それを克服するサウンドがこの「G-5」には用意されているということになる。この弱点があるからテレキャスを避けていたという人でも、このG-5ならテレキャスならではのサウンドを存分に楽しめるだろう。

Hはモデリング・ハムバッカーのモードだ。中域がグッと前に出てきてウォームな雰囲気、軽くナチュラルに歪んだ感じはまさにハムバッカー・ピックアップ。とくにリア・ピックアップはパワーがあってけっこう歪むので、ブルースやブギーならアンプのクリーン・チャンネルのままでもこなせそうだし、ちょっと歪ませたときの低域が分厚くパワフルなドライブ・サウンドは、当然ながらハードロック向きのキャラクターだ。ピックアップ切り替えはテレキャスター・モードと同様に中央の3つがフロントとフロント+リア、リアで、両端はフロントとリアそれぞれのブライト・ハムバッカー・モードだ。中低域の分厚いハムバッカーの特徴を残したまま、明るい高域のある抜けの良いサウンドになる。リバーブなどをかけるとより艶やかになるのも面白い。

最後のAはモデリング・アコースティック・ギター。このモードでは、ピックアップ切り替えスイッチによって、ギターのタイプを変更することができる。使用できるのは、ジャズ、エレクトリック・シタール、アコースティック・ナイロン弦、それに2タイプのアコースティック・スティール弦の合計5タイプだ。アコースティックのスティール弦は、中高域が強くてカッティングなどに向いていそうな歯切れ良いタイプと、ギターのすぐ近くにマイクを置いたような低域豊かなタイプ。どちらも色々な場面で使えそうなスタンダードな音色だ。ジャズは太く甘いトーンのサウンドで、フルアコのような雰囲気。B.B. Kingなんかをやったらハマりそうだ。エレクトリック・シタールは、ビヨーンという倍音のあるシタールの音。ビートルズの後期にもよく出てきたし、70年代歌謡曲でいえば野口五郎の「私鉄沿線」のイントロのあの音である。また、アコースティックのモードでは、トーンは無効になり、トーンのツマミはリバーブのコントロールとなる。手元でリバーブの量を調整できるのも便利だ。

■変則チューニングの設定も一瞬でOK

ノーマル・ストラト以外のモードでは、TUNINGスイッチで変則チューニングに切り替えることができる。もちろん実際にチューニングを変更する必要はなく、スイッチを切り替えれば瞬時にアンプから出ている音の音程が切り替わる。これはちょっとした驚きだ。

用意されているチューニングは、N、D、G、d、B、12の計6つ。それぞれを簡単に説明しよう。Nはノーマルで、これはチューニングに変更を加えないモード。実際の弦の音程がそのまま出力される。Dは“ドロップD”で、6弦が通常のEから1音下げたDになる。メタルなどでへヴィさを出すためによく使う手法だ。Gは“オープンG”で、6弦から順にD-G-D-G-B-Dというチューニングになる。これはカントリーやブルース、そしてボトルネック奏法のときによく使われるチューニングだ。dは“Dモーダル”。1弦、2弦と6弦をそれぞれ1音下げてD-A-D-G-A-Dというチューニングで、アイリッシュ系の音楽でよく使われるもの。一般にはダドガト(DADGAD)チューニングとも言われている。Bは“バリトン”で、通常のギターより低音域を出せるバリトン・ギターで使われるチューニングだ。そのため、B-E-A-D-F#-Bと、かなり低い音程のチューニングになっている。最後の12は“12弦”で、低音弦にはオクターブ上の音程、高音弦にはデチューンされた音程が付け足されて、リアルな12弦ギターのサウンドを楽しめる。ツェッペリンの「天国への階段」とか、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」だって、「G-5」が1本あれば、重いダブルネックを持ち出す必要はないのだ。

12弦以外のチューニングでは、いずれも通常のチューニングより音程を下げる弦が含まれているのだが、普通のギターでこれをやると、弦のテンションが下がってしまって弾きにくくなってしまう。とくにバリトンのチューニングなどは、6弦は下のBなのでまともには弾けないだろう。しかしG-5のチューニング・コントロールを使えば、弦のテンションはいつものままで、いつもの通り演奏することができるのだ。逆に実際の12弦ギターのように弦のテンションが高くなったりネックが太くなったりすることもない。しかもスイッチ一つでこの6タイプのチューニングを瞬時に切り替えることができる。変則チューニングを使うプレイヤーにとってこの機能はかなり役立つに違いない。


▲ギターの基本的な音色を、演奏中にフレーズごとに切り替えることも可能。
■「G-5」はまさに“オールラウンド”なギター

普段はストラトだけど、この曲はテレキャスで弾きたいとか、1曲の中でもこのパートはハムバッカーのギターで弾きたい、と思うことは少なくないだろう。そんな場合でも、このG-5なら、ギターを持ち替えるのと同じように、ギターの基本的な音色を手元で簡単に変えられる。極端な話、演奏中にフレーズごとに音を切り替えることだってできるわけだから、これは相当便利だ。それに、色々なフレーズを色々な音で弾いてみることができるから、弾いていて単純に楽しいし、そこから曲やフレーズ、リフなどのヒントを得ることもできるだろう。テレキャスターのワイド・レンジやハムバッカーのブライトなど、実際のギターでは難しい音が出せるのも魅力だ。しかも、どれも本当にリアルで“使える”音なのがうれしいところ。「G-5」は、まさにオールラウンドに使える次世代のエレキ・ギターなのだ。


▲「G-5」とよく似ているが、コントロール部にはっきりとした違いがある「GC-1」はVG-99やGR-55との組み合わせで強烈なパフォーマンスを発揮する。
■実はもう1機種別の新製品もデビュー。GK-Ready Stratocaster(R)「GC-1」はVギター・システム「VG-99」との組み合わせで

「GC-1」は、「G-5」に搭載しているローランド独自のピックアップ技術をフェンダー・ストラトキャスターに取り入れ、ローランドのVギター・システム「VG-99」や、ギター・シンセサイザー「GR-55」と専用ケーブル1本で接続して、独創的なギター・サウンドをつくり出せるモデル。チョーキングやビブラートなど、ギターならではの多彩で繊細な演奏テクニックを生かしながら、ギター・モデリングやシンセサイザー・サウンドなど自由度の高い音づくりが楽しめる。「GC-1」と組み合わせて使用する上記の「VG-99」は、完全2系統のCOSMギターを搭載し、チャンネルごとに音づくりが可能なVギター・システムの最高峰モデル。「GR-55」は、シンセサイザー音源とCOSMギターを融合した最新のギター・シンセサイザーだ。

text by BARKS編集部 森本

◆VG Stratocaster(R)「G-5」
価格:オープン(予想実売価格 13万円前後)
発売日:2012年3月下旬予定
◆GK-Ready Stratocaster(R)「GC-1」
価格:オープン(予想実売価格 9万円前後)
発売日:2012年3月下旬予定

<主な仕様>
ギター仕様:
G-5-BLK:ボディー塗装色=黒、ネック=1ピース・メイプル
G-5-3TS:ボディー塗装色=3トーン・サンバースト、ネック=ローズウッド指板(メイプル・ネック)
共通仕様:ボディー材質=アルダーネック:指板R=9.5インチ(24.1 cm)、ネック形状=モダン "C" シェイプ、スケール長=25.5インチ(64.8 cm)、フレット数=22、フレット・サイズ=ミディアム・ジャンボ
ピックアップ:シングル・タイプ×3、デバイデッド・タイプ×1
ブリッジ:ヴィンテージスタイル・シンクロナイズド・トレモロ
コントロール:
MODEつまみ(計5タイプ選択可能):
 N:通常のストラトキャスター信号(この設定はモデリング音ではありません。)
 S:モデリング・ストラトキャスター
 T:モデリング・テレキャスター
 H:モデリング・ハムバッキング
 A:モデリング・アコースティック
TUNINGつまみ(計6タイプ選択可能):
 N:ノーマル・チューニング
 D:ドロップ D
 G:オープン G
 d:Dモーダル
 B:バリトン
 12:12弦ギター
TONEつまみ、VOLUMEつまみ、5wayスイッチ
インジケーター:パワー・インジケーター
規定出力レベル:-20dBu
出力インピーダンス:2kΩ
推奨負荷インピーダンス:20kΩ以上
接続端子:ギター・ジャック(標準タイプ)
電源:DC 6V:アルカリ電池、または充電式ニッケル水素電池(単3形)×4
消費電流:230mA(DC 6V)
※連続使用時の電池の寿命(使用状態によって異なります)
アルカリ電池:約6時間、充電式ニッケル水素電池:約9時間
※電池が消費しきった場合、または楽器から取り外された場合でも、通常のストラトキャスターとしてはお使い頂けます。
付属品:
G-5 VG Stratocaster(R)取扱説明書(保証書含む)、OWNER'S MANUAL FOR FENDER(R) GUITARS (英文)(※ 日本語のマニュアルが必要な場合はwww.fender.com の「SUPPORT」からダウンロードできます。)、トレモロ・アーム、六角レンチ、アルカリ電池(単3 形)×4 本、特製キャリング・バッグ
質量:3.8 kg

※Fender,Strat,Stratocaster,Tele,Telecasterは米国Fender Musical Instruments Corp.の登録商標です。

◆VG Stratocaster(R)「G-5」製品詳細ページ
◆GK-Ready Stratocaster(R)「GC-1」製品詳細ページ
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