ローランドのフラッグシップ・シンセ「JUPITER-80」のサウンド表現力を継承した使いやすくて持ち運べる新モデル「JUPITER-50」

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▲アナログ時代のJUPITER-8から受け継いだカラーリングが目を引く本体。カラフルに色分けされたボタンで瞬時に目的のサウンドが選択できるようになっている。
ローランドの最新シンセサイザー「JUPITER-50」が5月25日に発売された。JUPITER-50は、2011年に発売されたローランドのフラッグシップ・シンセサイザー「JUPITER-80」の弟分といえるモデルだ。

コンパクト化とともに価格も大幅に引き下げられているが、JUPITER-80の機能のほとんどを継承。最大同時発音数やパート数こそ異なるが、奏でられるサウンドはJUPITER-80と遜色なく、表現力の高さもクラス最高のものとなっている。また、演奏を支える鍵盤をはじめコントローラーも充実しており、まさにプレーヤーのためのライブで使えるシンセサイザーとなっている。さらに、アルミ・パネルの堅牢なボディを採用しながら本体重量はJUPITER-80と比較して約6kgの軽量化を実現、電車での持ち運びもOKといううれしい仕様だ。

■自然で豊かな表現を可能にするSuperNATURALサウンド

まず注目したいのはそのサウンド・クオリティ。JUPITER-80はアコースティック楽器音色の表現力の高さで注目を集めたが、JUPITER-50にもそれは継承されている。たとえば、アコースティック・ピアノやエレクトリック・ピアノの音色では、無段階の音色変化や自然な減衰音を実現。オルガン音色では、ローランドのオルガン専用機であるVKシリーズやV-Comboを受け継いだコンボ・オルガン・サウンドを搭載する。また、楽器特有の奏法や音色変化が特徴的な楽器も得意とするところ。バイオリンやトランペットをはじめ、二胡やシタールなどの民族楽器、フラメンコ・ギター、オーボエ、マリンバなどのクラシック楽器まで、その楽器ならでは奏法、表現を可能にしている。

こうした表現力を実現しているのが、最先端の音源技術「Behavior Modeling Technology」による「SuperNATURALサウンド」。大容量のメモリーでサンプリングされたリアルな音を再生する従来のPCM音源の手法に加え、楽器が発音する仕組みを解析&モデリングし、演算によりさまざまなサウンドを生み出す。楽器そのもののモデリングに加え、奏法における各楽器独特の振る舞いもモデリングすることで、リアルタイムに自然で豊かな表現を可能にするのが「Behavior Modeling Technology」なのだ。レガートやグリス、単音・和音による使い分け、レバー操作など弾いたフレーズに合わせJUPITER-50が自動解析、楽器に適した演奏方法を表現し、次々と表情を変える「Behavior Modeling Technology」ならではのサウンドは要チェックだ。

また、SuperNATURALサウンドは、シンセサイザーならではのオシレーターやフィルター、エンベロープの振る舞いも解析、忠実に再現。ビンテージ・アナログ・シンセからデジタル・シンセまでリアルに表現可能だ。先ごろリリースされた「JUPITER-80 Version 2」では、ビンテージ・タイプのローパス・フィルターが新たに3種類搭載されるなどシンセサウンドが強化されたが、JUPITER-50ではこれらも最初から搭載。アコースティックもシンセもオールマイティにこなせるシンセになっている。

ライヴにおける高い表現力はもちろん、壮大な世界観を求められる映画音楽制作などにも活用できる幅広い音色の搭載は大きな戦力となるはずだ。

■音を重ねてさらにパワフルなサウンドを

個別の楽器音を鳴らすだけでなく、複数のサウンドを重ねて(いわゆるレイヤー)、よりパワフルなサウンドが得られるのも特徴の1つ。JUPITER-50では最大4個のSuperNATURALトーンを重ねて「ライブ・セット」として演奏することが可能だ。和音を弾くと弾いた鍵に応じてレイヤーの各楽器が自動的に割り当てられたり、4つのマルチエフェクトも使用できるので、より重厚で表現力の高いサウンドが作り出せる。

このライブセットが利用可能なアッパー・パートに加え、各1トーンを割り当てられるソロ・パートとパーカッション/ロワー・パートも同時使用が可能。鍵盤を分けて(スプリット)それぞれ個別の演奏ができるほか、アッパー・パートで弾いた和音のトップノートのみソロ・パートを鳴らすといった柔軟な設定が可能だ。これらの組み合わせ、設定は保存可能で、レジストレーション・ボタン一発で呼び出せる。パートごとの音量調節用に設けられた専用スライダーと併用することで、曲中でさまざまな楽器・音色のバリエーションを次々繰り出すといったプレイもできる。ちなみに、レジストレーションの登録は、メニューの深い階層を辿ることなくパネル上のボタンでスピーディに行えるのもうれしい配慮だ。

■多彩な演奏を可能にする鍵盤&コントローラー

高い演奏性を実現した76鍵おもり付き鍵盤に加え、さまざまなコントローラーが用意されるのもポイント。たとえば、ピッチベンド/モジュレーション・レバーの上にはリアルタイムに音色を変化させられるS1/S2ボタンがあるし、オルガンに欠かせないロータリー効果をコントロールするボタンは、ON/OFFに加えSLOW/FAST、シンセサウンドに不可欠なカットオフとレゾナンスつまみも独立して装備。手をかざすことで、ピッチやボリューム(その他自由にパラメーターをアサイン可能)をリアルタイムに変化させられるDビーム・コントローラーや、ペダル用にはホールド×1、コントロール×2の端子も用意される。


▲トップパネルの左側は演奏のためのコントローラーを配置。Dビーム、カットオフとレゾナンスつまみ、パートごとのバランスをとるスライダーなどが並ぶ。
楽器特有の奏法はレバーやS1/S2ボタンなどでコントロール可能だ。ギターでは弦をこするノイズやピッキングノイズが出せたり、ティンパニやスティール・ドラムはモジュレーションレバーでロール演奏が可能。ピッチベンドレバーでは、トランペットやホーンならピッチ変化/フォール効果、ハーモニカなら手でハーモニカを覆うワウ効果が得られる。

また、アッパー、ロワー個別に設定可能なアルペジオ(鍵盤を押し続けなくてもアルペジオ演奏を持続するHOLDボタンも装備)、そして、ロワー・パートで押さえたコードを元に、最適なハーモニーをアッパー・パートの最高音に加えるハーモニー・インテリジェンス機能もそれぞれボタンを装備。シーケンスを使わずとも多彩な表現が可能になるのはもちろん、鍵盤がそれほど得意ではないという人にとっても、JUPITER-50のポテンシャルを存分に味わえる仕掛けが豊富に揃っている。

■iPadアプリでシンセサウンドをエディット


▲iPad用アプリ「JP Synth Edit」を使って、大画面のディスプレイでシンセ・トーンをコントロール。画面は、OSC/FILTER/AMP、LFOの2画面構成。
JUPITER-50は軽量・コンパクト化のため、各種情報を表示する液晶パネルは小型化された。JUPITER-80が大型カラー液晶でタッチパネルを搭載しているのと比較すると、特にパラメーターが多いシンセ・サウンドのエディットにおいてはJUPITER-50は不利となる。それをカバーしてくれるのが、無償配布されるiPad専用アプリ「JP Synth Editor」だ。

iPadをApple iPad Camera Connection Kitで経由でUSB接続。「JP Synth Editor」を起動すれば、iPadの大きな画面で、シンセ・トーンのパラメーターをコントロールしたり、レイヤーのオン/オフを切り替えることが可能となる。複数のパラメーターを同時に操作することも可能だし、リアルタイムの音色変化も自由自在。JUPITER-50の演奏性をより高めてくれるアプリとなっている。こちらもJUPITER-80 Version 2で新たに加えられた機能で、JUPITER-50には最初から搭載されている。

■ライブの仕込みに便利なUSBソング・プレーヤー/レコーダー搭載! パソコンとの連携もOK


▲トップパネル左上のカバー内にはUSBメモリー端子を装備。写真右下に見えるのはロータリースピーカーのコントロール用ボタン。
JUPITER-50は、JUPITER-80同様、シーケンス機能をいっさい持たない潔い仕様だが、ライブ・パフォーマンス時のバッキング・トラックを仕込んでおきたいという要望にはしっかり応えてくれる。それがUSBソング・プレーヤー/レコーダー機能だ。本体に装備されたUSBコネクタにUSBメモリーを装着するだけで準備OK。USBメモリーに録音、再生できるほか、あらかじめ保存しておいたオーディオファイル(WAV、MP3、AIFF)の再生も可能。JUPITER-50本体で録音しておいてもいいし、別途パソコンで仕込むのもいい。シンプルで使い勝手のよい機能に仕上がっている。


▲液晶パネルの左側には、各種パラメーター設定用のVALUEセクションと、ソングプレーヤー/レコーダー機能用のボタンを配置。
さらにこのUSBコネクタは、無線LANで音声/演奏データ通信を行う「Roland Wireless Connect」(オプション)を接続することで、ケーブルレスでiPhoneやiPadにJUPITER-50の音を直接録音できる。iPhoneでバッキング・トラックを再生、JUPITER-50本体の音といっしょに出力することもできるので、こちらもライブなどに幅広く活用できるだろう。

パソコンとの連携機能の充実も特筆すべき点だ。パソコンとUSB接続することでオーディオ/MIDIインターフェイスとして使用可能、音楽制作ソフト「SONAR LE」(Windows用のみ)が同梱されるので、アイディアのスケッチもカンタン。個別にパートを録音していけばJUPITER-50数台分の音を重ねたより壮大な楽曲も制作可能になる。さらに、SONARや、SONAR上のプラグイン・エフェクトやプラグイン・シンセの各種操作を、JUPITER-50のスライダーやボタン本体で可能にする「Control Surface Plug-in」というソフトウェアも用意される。パソコンでの音楽制作環境の中核をなすシンセとしてもJUPITER-50が活躍してくれる。

パワフルで使い勝手のいいハードウェアシンセであり、パソコンやiOSデバイスといった最新環境への対応も充実したJUPITER-50。ライヴ・パフォーマンスをするキーボーディストはもちろん、楽曲制作環境を充実させたいトラック・メーカーも注目のシンセサイザーとなっている。その実力はぜひ楽器店などで実機を触って確かめてほしい。

■兄貴分も新機能追加で進化! JUPITER-80 Version 2登場

本文でも触れているが、フラグシップ・シンセサイザー「JUPITER-80」はこの春、新機能を追加し、Version 2に進化している(既存ユーザーは無償バージョンアップ)。


▲アナログ時代のJUPITER-8から受け継いだカラーリングが目を引く本体。カラフルに色分けされたボタンで瞬時に目的のサウンドが選択できるようになっている。

シンセサウンドでは、ビンテージタイプのローパス・フィルターを3種類追加。オリジナルとあわせて4種類の中から選択可能となった。それぞれカットオフ、レゾナンスの変化が異なるタイプが追加されたことで、往年のシンセサウンドをイメージした音づくりが楽しめる。また、シンセの新規音色も増え、アコースティック楽器だけでなく、シンセサウンドも強力なシンセとなった。

マルチエフェクトは従来のパラレル接続に加えて、最大4基のシリアル接続も可能になったことで、多彩なエフェクトを最大限に活用したサウンド・メイクが実現。そして、プレーヤーにうれしいのが「レジストレーション・プレイ画面」の追加。8個(1バンク)のレジストレーションが一望でき、タッチスクリーンで選択可能。音色選択がより快適になっている。このほか、JUPITER-50と同様に、「JP Synth Editor」、「Control Surface Plug-in」への対応も図られている。

<おもな仕様>
鍵盤: 76鍵(ベロシティー対応)
●音源部
最大同時発音数: 128音(音源負荷に依存して変化)
パート数: 3(アッパー、ソロ、パーカッション/ロワー)
レジストレーション: 128(プリロード・データを含む)
ライブ・セット: 2,560(プリロード・データを含む)
エフェクト: マルチエフェクト(MFX)[4系統、76種類]、リバーブ[1系統、5種類]※マルチエフェクトはライブ・セット(アッパー・パート)でのみ使用可能。
●USBメモリー・ソング・プレーヤー/レコーダー部
トラック数: 1(ステレオ)
再生可能ファイル・フォーマット: オーディオ・ファイル:WAV、AIFF、MP3
録音ファイル・フォーマット: オーディオ・ファイル:WAV(44.1kHz、16ビット・リニア、ステレオ)
対応メディア: USBメモリー(別売)※ローランドが販売しているUSBメモリーを使用してください。それ以外の製品を使用したときの動作は保証できません。
●その他
アルペジオ: プリセット 128スタイル、ユーザー 16スタイル
ハーモニー・インテリジェンス: 17タイプ
コントローラー: Dビーム・コントローラー、ピッチ・ベンド/モジュレーション・レバー、アサイナブル・ボタン([S1]、[S2])、アサイナブルつまみ([CUTOFF/C1]、[RESONANCE/C2])、パート・レベル・スライダー(PERC/LOWER、UPPER、SOLO)
ディスプレイ: 240×64ドット(バックライト付きグラフィックLCD)
接続端子: PHONES端子(ステレオ標準タイプ)、MAIN OUT端子(L/MONO、R)(TRS標準タイプ)、SUB OUT端子(L、R)(標準タイプ)、AUDIO IN端子(ステレオ・ミニ・タイプ)、FOOT PEDAL端子(CTRL 1、CTRL 2、HOLD)、MIDI端子(IN、OUT)、USB COMPUTER端子(オーディオ/MIDI対応)、USBメモリー端子、DC IN端子
電源: ACアダプター
消費電流: 800mA
付属品: 取扱説明書、CD-ROM(USBオーディオ/MIDIドライバー)、DVD-ROM(SONAR LE)、USBメモリー・プロテクター、ACアダプター、電源コード、ローランド ユーザー登録カード
別売品: キーボード・スタンド=KS-G8、KS-12、KS-18Z(KS-18Zをお使いになるときは、設置の高さが1m以下になるようにしてください。)、ペダル・スイッチ=DPシリーズ、フットスイッチ=BOSS FS-5U、エクスプレッション・ペダル=EV-5、ステレオ・ヘッドホン、USBメモリー
●外形寸法 / 質量
外見寸法: 幅 (W) 1,268mm×奥行き (D) 361mm×高さ (H) 117mm
質量: 11 kg

◆JUPITER-50
価格:オープン
発売日:2012年5月25日

◆JUPITER-50 製品詳細ページ
◆ローランドシンセサイザー・カテゴリーサイト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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