【BARKS編集部レビュー】BOSS、エフェクト充実&簡単操作のLOOP STATION「RC-505」で初心者でも簡単にボイス・パーカッション・パフォーマンス

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BOSSのLoop Stationは、演奏や歌のフレーズを録音し、その場でループ再生しながら次々にフレーズを重ねて音楽を作ることができる“ルーパー”と呼ばれるギアだ。ボイス・パーカッションや短い歌のフレーズなどを次々にループして重ねるパフォーマンスもよく見かけるようになってきたが、あのパフォーマンスに欠かせないのがルーパーだ。ルーパーとしては、これまでにもBOSSブランドからコンパクト・エフェクターの「RC-3」をはじめ「RC-30」、「RC-300」といったルーパーが発売されていて、それぞれ人気を博しているが、今回のRCシリーズ最新製品、「RC-505」はこれまでとは異なるユーザーを狙ったものになっている。

まず見た目ですぐわかる大きな違いは、これまでのRCシリーズ製品が床置きで主にペダルで操作するものだったのに対して、このRC-505は卓上型になっていることだ。ボタンやフェーダーで操作できるので、パフォーマンスでもリアルタイムに様々な操作が素早くできるようになっている。だから、従来製品がどちらかといえばギタリスト向けのイメージだったのに対し、こちらは主にヴォーカル・パフォーマー向けの製品といえるだろう。録音やループ再生は5つのループ・トラックで行うことができ、最大で3時間分まで録音ができる。しかも各トラックでオーバーダブが可能だから、ほぼ無限に音を重ねられる。さらにエフェクトも充実している。入力に21種類、出力には25種類ものエフェクトが用意されているのだ。たとえば声を加工しながらロボットボイスのような音で録音することもできるし、録った音をループさせるときにエフェクトをかけることもできる。自分の声だけでも幅広いパフォーマンスが可能だ。

■操作しやすく見た目にもカッコいいインターフェイス


▲再生/録音は押しやすい大きなボタンで。トラックの音量はスライダーで調整できるので直感的に素早く操作できる。
ブラックのボディにボタンやスライダーがいっぱいに並んだRC-505のルックスはなかなかカッコいい。電源を入れると自照式のボタンやインジケーターが赤や緑、黄色に点灯する。この派手な見た目には気分も上がってしまう。インターフェイスは上下に二分割されていて、上半分が全体の設定やエフェクトの操作を行なう部分、下半分がフレーズの録音やループ再生を行なう5つのループ・トラックの操作を行なう部分になっている。頻繁に使うことになるフレーズの録音やオーバーダブ、再生は、大きなボタンを押すだけで行えるし、各トラックの音量はスライダーで調整できるから、直感的に素早く操作できる。また、エフェクトのパラメーターやシステムの設定を行なう場合は、中央にある液晶パネルに表示される数値などを確認しながら、つまみをくるくる回すだけで操作可能だ。カッコいいだけではなく操作性にも優れたインターフェイスになっている。


▲INPUT MICはXLRタイプになっている。INPUT INSTにはギターやベース、エフェクターなど、さらにINPUT AUXにはオーディオ・プレーヤーなどを接続できる。
RC-505には、3種類の入力端子が装備される。マイクを接続するためのINPUT MICは、ノイズの少ないバランス(XLR)タイプになっている。ここにはファンタム電源も搭載されているので、電源の必要な高音質のコンデンサマイクも使用可能だ。INPUT INSTにはギターやベース、エフェクターなどの出力を接続できる。さらにINPUT AUXにはオーディオ・プレーヤーなどを接続できるので、お気に入りの曲の一部を使ってループを作ることも可能になっている。

■バッキングとしても使えるガイド用リズムパターンを豊富に内蔵

今回は、声だけを使ってRC-505でのパフォーマンスに挑戦してみよう。まずはループの素材となるフレーズの録音だ。操作は簡単で、録音したいトラックの丸い大きな再生/録音ボタンを押すだけだ。といっても、筆者はボイス・パーカッションをやったこともないので、何もない状態でいきなりカッコいいリズムパターンを録音するのはとても無理。そこでRC-505に内蔵されているリズムパターンを使って、これをガイドにバスドラムやハイハットなどのリズムを一つずつ録音して重ねてみることにする。ちなみに、リズムパターンはヘッドフォンのみに出力することができるので、人前でのパフォーマンス時などにはガイドの音を外に聴こえないようにすることも可能だ。

リズムパターンは全部で65パターン収録されている。単純なメトロノームやシンプルな8ビートからロックっぽいドラムパターン、グルーヴィなラテン・パーカッション、ファンクやボサノヴァなど様々なジャンルがあり、拍子も2/4、4/4、3/4といったシンプルなものから5/8や11/8、15/8などの変則拍子までそろっている。ガイドにするリズムパターンによってノリも違ってくるだろうから、色々と聴いてみて、気に入ったものを選ぶといいだろう。もちろんガイドにするだけでなく、伴奏として使うこともできる。今回はシンプルなパターンを作ってみようと思ったので、拍子を4/4に設定、シンプルな8ビートのSimple Beatというリズムパターンをガイドにして録音を行なった。

■ボタン一発で録音開始、ループの位置が一目瞭然のインジケーター


▲TAP TEMPOボタンを押せば、その間隔がテンポに設定。RHYTHMのSTART/STOPボタンを押せばリズムパターンがスタート。トラック1の再生/録音を押すとボタンが赤く点灯し録音が開始される。
INPUT LEVELつまみでマイクからの入力のレベルを調整したら、次はテンポの設定。テンポの数値を直接設定してもよいのだが、いくつにすればよいかわからないことも多いだろう。そんな場合は、自分の思うテンポでTAP TEMPOボタンを何度かポンポンと押してやれば、ボタンを押した間隔がテンポ値として設定される。RHYTHMのSTART/STOPボタンを押せばリズムパターンがスタート。次にトラック1の再生/録音を押すとボタンが赤く点灯し、録音が開始される。まずはバスドラムらしく4分音符の間隔で、低い声で“ドン、ドン”と言ってみる。2小節分、“ドン”を8回入れたところでトラック1の停止ボタンでストップ。これで1回目の録音は完了だ。

再び再生/録音ボタンを押すと、今入れた声が再生される。録音するフレーズの長さはRC-505が自動的に判別してくれるので、録音を止めたところの小節の終わりまでが、自動的に繰り返してループ再生される。今回は2小節分だけで止めたが、そのまま4小節分続ければ、その4小節分が一つのフレーズとしてループ再生されることになる。


▲再生すると録音/再生ボタンが緑に点灯。ループ・インジケーターは録音されたループ1回分の長さで一周する。
再生時は録音/再生ボタンが緑に点灯、その周りにあるループ・インジケーターが赤く光るのがとてもカッコいい。このループ・インジケーターの赤い光は、再生が進むにつれて左から時計回りに消灯していく。一周分が録音されたループ1回分の長さ、つまり今回の場合は2小節で一周する。そして2小節のループが終わったところで全部消灯、次のループの先頭で再び全部点灯するという仕組みだ。光の位置で、現在のループ内での位置を簡単に知ることができるので、後からタイミングを見計らって行なう操作(オーバーダブやエフェクトがけなど)もとてもやりやすい。

実際に録ったフレーズを聴いてみると、思ったよりうまくできていないこともあるだろう。そんな場合はフレーズを消去してやり直せばいい。トラックの停止ボタンを長押しすれば、録音したフレーズを消去することができる。

■オーバーダブもボタン一発、何度でも重ねられる

次は今録ったバスドラムに、オーバーダブでハイハットのパターンを重ねてみよう。録ったフレーズを再生しているときに、トラック1の再生/録音ボタンを押すと、ボタンは黄色に点灯。これでオーバーダブを行なえる。ループ・インジケーターが一周する間、“チッチッチッチッ”とハイハットらしい音を入れて、停止。再生してみると、“ドッチッチッチッ”と、少しずつリズムパターンらしくなってきているのがわかる。同様にして2拍目、4拍目に“パッ、パッ”とスネアらしい音を入れると、リズムは多少ヨレヨレだがシンプルな8ビートのリズムパターンが出来上がった。

今回は一つのパターンごとに再生を停止しながらオーバーダブを行なっていったが、実はオーバーダブは何度も続けて行なうことができる。録ったフレーズをずっとループ再生させていれば、その間にマイクに向かって吹きこんだものはすべて重ねて録音されるのだ。今回の場合でいえば、最初に録ったバスドラムのパターンを再生しながら、ループの1周目でハイハット、2周目にスネアというように、次々に続けて音を重ねていくことができる。アイデアの続く限り、無限に音を重ねていけるわけだ。


▲オーバーダブがうまくいかないときは、UNDO/REDOボタン+トラックの再生/録音ボタンを押せば、直前分だけを取り消すことができる。
とはいえ、連続したオーバーダブですべてうまくいくのはよほどの達人。筆者も挑戦してみたが、ループが一周したところですぐに次のフレーズに頭を切り替えられず、テンポがずれたり音がうまく出せなかったりと失敗の連続だった。こういうときには、アンドゥ機能を使おう。UNDO/REDOボタンを押し、トラックの再生/録音ボタンを押せば、直前の一回分だけを取り消すことができる。前述のトラックの消去機能を使うと、そのトラックに録音されていたすべてのフレーズが消去されるが、アンドゥなら最後のループ一回分の録音だけを消去できる。何度でもやり直せると思えば、録音にもリラックスして臨めるはずだ。

ちなみに、オーバーダブの最中に再生/停止ボタンを押せばそのまま再生モードに切り替わり、今録った音がどう重なっているかを確認することができる。再びボタンを押せばオーバーダブに切り替わる。この方法を使えば、ループ再生を止めずに録音と確認を行なえる。音を止めたくないパフォーマンス時にはもちろん使えるし、フレーズを聴きながら次に入れる音を考えるのにも有効だろう。

■音を劇的に変えられる強力エフェクト

ここまで、音を重ねてドラムパターンらしきものは出来上がったが、聴いてみれば“ドン、パン、チッチッ”と自分の声で言っているだけで、とてもボイス・パーカッションと呼べるようなものではない。しかしRC-505には強力なエフェクトがいくつも内蔵されていて、劇的に音を変えることができる。

RC-505には、マイクや楽器からの入力使っていわゆる“かけ録り”ができるインプットFX(21種類)と、トラックごとに録音したフレーズにかけられるトラックFX(25種類)がある。どちらもA、B、Cの3つのボタンにエフェクトを割り当てることができ、ボタンを押して赤く点灯させると瞬時にそのエフェクトがかかる。そして隣にある大きいつまみを回せばエフェクトのかかり具合を調整できる。

先ほど作ったドラムパターンにトラックFXを使ってみると、これがかなり強力であることがわかった。たとえばSYNTHはアナログシンセのようなサウンドを作り出すエフェクト。ハイハットの“チッ”こそあまり変化しないものの、“ドン”というバスドラムは“ビャオッ”といういかにもアナログシンセ風になり、とても口で言ったとは思えない音になる。またGUITAR TO BASSは文字通りギターをベースにするピッチ検出系のエフェクトで、本来は音程のある楽器に使うものだが、声に使っても面白い。単にオクターブが下がるだけでなくフィルターがかかったように音質も変化する。だから全体が機械っぽい音になって、けっこう使えるドラムの音に変身させることができた。またGRANULAR DELAYはいわゆるショートディレイの一種だが、発振器のような音になるので、まるでバネをはじいているようになる。つまみの設定で音程が変化するのも面白い。

このほかフランジャーやフェイザーといったオーソドックスなエフェクトもあるし、入力信号を高域、中域、低域に分割し、特定の音域をカットするISOLATORや、“ウ~”と伸ばした声を“ウゥッ、ウゥッ”とスライスしてくれるSLICERなど面白いエフェクトが満載だ。とくにSLICERはテンポに合わせてフレーズが発声されるようになるので、リズムが不安な場合でもこれを使ってジャストなビートを作ることができる。さらにトラックFXとしては、テンポに合わせてフレーズの一部が繰り返されるBEAT REPEATや、つまみを回すことでDJがターンテーブルで行なうスクラッチプレイのような効果を得られるVINYL FLICKなどもあって、もともと自分の声だったことがまったくわからなくなるほど。まさに劇的に音を変えられるエフェクトなのだ。

前述のとおり、これらのエフェクトのほとんどはインプットFXとしてかけ録りができるので、あらかじめエフェクトで加工した音を重ねていくことも可能だ。どんな音にしたいかが最初からわかっているときは、かけ録りをおすすめする。自分の発した声が機械音やロボットボイスになるのを聴きながら録れば、よりノリノリでプレイできるだろう。

■5つのループ・トラック、エフェクトのリアルタイム操作で無限のパフォーマンス

RC-505ではこのような、録音、オーバーダブ、再生、エフェクト処理を、5つのループ・トラックでそれぞれ行なうことができる。再生/録音ボタンを押せば、いつでもどのトラックでも再生やオーバーダブを開始できるし、停止ボタンを押せばそのトラックだけ再生を停止できる。さらにトラックごとに用意されたスライダーで、そのトラックの再生音量も調整できるので、ミックスのバランスも変えられるし、フェードイン/アウトさせることも可能だ。各トラックの再生や停止、入力と出力のエフェクトのオン/オフやかかり具合まで瞬時に操作できるので、音作りの幅は本当に広い。まさに無限大のパフォーマンスができるだろう。といっても、そう難しく考える必要がないのがRC-505の良いところ。ボタンで音を出したり消したり、エフェクトのつまみで音を変化させたり、スライダーで音量をいじったりと、リズムに合わせて適当に操作しているだけでも、けっこうそれっぽく聴こえてくる。とにかく色々操作してみれば、その面白さはすぐわかるし、コツもつかめてくる。

■バックアップやライヴ・パフォーマンス向け機能も多数


▲USBでPCと接続すればフレーズをWAVファイルとしてPCにバックアップすることも可能。またMIDI端子を使えば、外部機器でRC-505を操作することもできる。
5つのループ・トラックに録ったフレーズやエフェクトの設定は、フレーズ・メモリーとして99まで本体に保存することができる。また、USBでPCと接続すれば、トラック内のフレーズをWAVファイルとしてPCにバックアップすることも可能だ。RC-505をPCのUSBオーディオインターフェイスとして使うこともできるので、PCの音をRC-505で鳴らしたり、RC-505の音をPCで録音したりといったことも可能だ。また、RC-505には外部MIDI機器と接続できるMIDI端子も用意されている。これを使うと、外部機器でRC-505の再生や停止をコントロールしたり、テンポを同期させたり、逆にRC-505の操作で外部機器のプログラムチェンジ(シンセの音色切り替えなど)を行なうことができる。シンセやリズムマシンと同期した、よりスケールの大きいパフォーマンスも可能だろう。また、ペダル操作にも対応していて(ペダルは別売)、エクスプレッション・ペダル「EV-5」では入力レベルの調整、「FS-5U」や「FS-6」ではアンドゥやリドゥ、リズムパターンの音量切り替え(0または100)を行なえる。素早い操作が必要なライヴ・パフォーマンス時には重宝しそうだ。

■リズム感までサポートしてくれるRC-505

ボイス・パーカッションもルーパーも初体験だったのだが、簡単にある程度のものが作れたことには少々驚いた。それはもちろんRC-505が様々な場面でサポートしてくれたからだ。録音やオーバーダブはボタンを押すだけだし、フレーズの長さもRC-505が判断してくれて、自動的にループ再生してくれる。テンポに合わせて音をカットしたり音色を変化させてくれるエフェクトもある。リズム感までRC-505がサポートしてくれるのだから、できて当然かもしれない。音感やリズム感に自信がなくても十分楽しめるのがよくわかったし、慣れてくれば動画サイトでよく見るような高度なパフォーマンスができるようになるかもしれない。興味があればぜひ使ってみてほしい。あまりの簡単さにきっと驚くはずだ。



text by BARKS編集部 森本

●RC-505 主な仕様

最大録音時間:約3時間(ステレオ)
最大保存:フレーズ・メモリー数=99、トラック数=5、
録音データ形式:WAV(44.1kHz、16ビット・リニア、ステレオ)
エフェクト・タイプ:INPUT FX/TRACK FX(FILTER、PHASER、FLANGER、SYNTH、LO-FI、GUITAR TO BASS、TRANSPOSE、ROBOT、VOCAL DIST、VOCODER、COMP、EQ、ISOLATOR、OCTAVE、PAN、SLICER、DELAY、TAPE ECHO、GRANULAR DELAY、CHORUS、REVERB、BEAT REPEAT *、BEAT SHIFT *、BEAT SCATTER *、VINYL FLICK *[* TRACK FXのみ])、MASTER FX(COMP、REVERB)
リズム・タイプ:85
接続端子:INPUT MIC端子=XLRタイプ(バランス、ファンタム電源:DC 48V、10mA Max)、INPUT INST(L/MONO、R)端子=標準タイプ、INPUT AUX端子=ステレオ・ミニ・タイプ、PHONES端子=ステレオ標準タイプ、LINE OUTPUT(L/MONO、R)端子=標準タイプ、CTL 1, 2/EXP端子=TRS標準タイプ、USB端子=USBタイプB、MIDI(IN、OUT)端子、DC IN端子
付属品:ACアダプター、取扱説明書、保証書、ローランド ユーザー登録カード
外形寸法 / 質量:幅 (W) 420 mm 奥行き (D) 210 mm 高さ (H) 68 mm 質量 1.4 kg

◆RC-505
価格:オープン(予想実売価格 6万円前後)

◆RC-505 製品詳細ページ
◆RC-505 製品解説ムービー
◆FrontScene RC-505
◆BOSS
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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