DAWでの曲作りに威力を発揮! 現代の音楽スタイルにマッチしたローランドの新ワークステーション・シンセ「FA-06」&「FA-08」

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ローランドから、ワークステーションタイプのシンセサイザー「FA-06」と「FA-08」が2月15日より発売される。音楽制作とライブの両方に求められる要望に応えるモデルで、「FA-06」はシンセタッチの61鍵、「FA-08」は「RD-300NX」などで好評の88鍵ピアノタッチ鍵盤を備える。今回は、「ゼロから音楽生み出す新しいワークステーション」と銘打った新機種FAシリーズの注目すべき点をチェックしていこう。

◆「FA-06」「FA-08」拡大画像

<「FA-06」「FA-08」シリーズのおもな特徴>
・INTEGRA-7直系のサウンド・エンジン
・複雑な設定を必要としないオーディオ・インターフェース/DAWコントローラー機能
・DAWと連携した作業環境を実現するシーケンサー
・クラス初16パートMFX、パフォーマンスに活用できるTFXなど、充実のエフェクト
・オーディオ・ループを縦横無尽に操るサンプラーを実装

■思いついたフレーズを即座に残せるシーケンサー機能


▲写真上:シーケンサー画面。録音ボタンを押せば即座にレコーディング・モードに入ることができる。写真下:ミキサー画面。
FAシリーズの最大の特徴は、「現代の音楽スタイルに必要な要素を見直して再構築した、新しいワークステーション」であるという点。先に挙げたおもな特徴を見れば、シーケンサーやサンプラー、パソコンとの連携など、いわゆる「全部入り」のシンセサイザーだということがわかる。そして、実際に触ってみると、単に機能を詰め込んだだけでなく、音楽を生み出すための機能を実にうまくインテグレートした製品であることが実感できるのだ。

それを特に感じさせるのは、演奏をデータとして記録・再現できるシーケンサー機能だ。まずはこの機能を中心にFAシリーズならではの音楽制作の流れを見ていこう。

FAシリーズではどの状態でも録音ボタンを押せば即座にレコーディング・モードに入ることができる。指定した範囲を繰り返しながら録音できるループレコーディングにも対応しているので、曲全体を録音するというより、思いついたフレーズを数小節単位で記録していくのがいい。たとえば、4小節をループさせて、ドラム、ベース、キーボードとどんどん重ねていくといった具合だ。


▲シーケンサー部。
ベースパートのレコーディングといっても「ルートを連打する単調なフレーズくらいしか弾けないよ」という人でも大丈夫。アルペジエーターが用意されているので、コードを押さえるだけで、音楽的なフレーズが即座にレコーディングできる。リズム・パターンもあらかじめ多数プリセットされているので、ドラム・パートのトラックもすぐに形になる。とりあえずボトムを支えるパートを形にしてしまいたいという場合には非常に重宝する。

もちろん、アルペジエーターはピアノやパッドなど、いわゆるウワモノパートでも活躍する。さらに単音を弾いただけでコードを演奏できる、鍵盤が苦手なクリエイターにもうれしい機能も用意。シーケンサーは16トラック用意されるが、こうした機能だけでトラックを埋めていってもスケッチ以上の出来に仕上がるはずだ。

昨今の音楽制作はパソコンのDAWソフトを使うのが主流となっているが、パソコンやソフトウェアの起動を待つうちにインスピレーションがスポイルされることもしばしば。しかし、FAシリーズなら適当に鍵盤で弾いたフレーズやコード進行を即座にカタチにできる。電源オンですぐに弾ける・記録に残せる(しかも後でエディット可能な)環境は、DAWユーザーにこそぜひ味わってほしいところだ。

ちなみに、シーケンサーの装備はユーザーからの強い要望に応えたものだという。この使い勝手はその要望を十分以上に満足させてくれるものだろう。

■MIDIファイルに加えオーディオ・データのエクスポートもOK

FAシリーズ本体のシーケンサーに記録したデータは、スタンダードMIDIファイル(SMF)としてエクスポートが可能。SMFをSDカード経由でパソコンに持って行って、DAWソフトで編集を施すことができる。本体のシーケンサーもステップ・レコーディングやイベント・リストを備えるが、細かい編集はDAWの大きな画面で効率よくやりたいという人も多いはず。

さらに、WAVファイルでのエクスポートができるのも注目だ。本体で作成したMIDIトラックをオーディオ・データに変換可能、SDカード経由でFAシリーズ内蔵音源のハイクオリティなサウンドを手間なくDAWに取り込むことができる。しかも、最大16パートを一度の操作で順次書き出しOK。これまでのハードウェアを使った音楽制作環境のように、1パートずつレコーディングや変換するといった手間は不要。時間も大幅に節約できるというわけだ。また、書き出したオーディオ・データは、本体のサンプル・パッドにアサインすることも可能だ(詳細は後述)。


■DAWとの連携で曲をブラッシュアップ

こうしてFAシリーズ本体で作ったMIDI&オーディオ・データをパソコンに持っていって、さらなるブラッシュアップを施してみよう。

FAシリーズには、「Logic Pro」、「SONAR」、「Cubase」といったDAWソフトウェアのコントロール・マップが搭載されており、むずかしい設定をすることなく、DAW上のさまざまなパラメーターがコントロール可能。エディットやトラックの追加といった編集が効率的にこなせるようになっている。


▲一番左下が「DAW CONTROL」ボタン。
その際、本体に搭載される「DAW CONTROL」ボタンがDAWとの連携時に思いのほか便利。たとえば、パソコンと接続して、このボタンを押すだけでFA本体の音が消え、パソコンのソフトウェア音源だけが鳴る。従来のシンセなら本体とソフトウェア音源両方の音が同時に鳴ってしまうところ。これを解消するにはメニューの深い階層にある設定をしなければならないが、こうした面倒な操作なし、ワンタッチで望む状態になるのだ。

また、本体のアルペジエーターのテンポをDAWのテンポに合わせることも可能。ソフトウェア音源をFAシリーズのアルペジエーターで演奏するなんてことも難なく行える。これにより新たなインスピレーションが沸くことも。ハードウェア+ソフトウェアのハイブリッドな環境ならではの体験ができるのだ。

さらにFAシリーズは、Windows、Mac環境でオーディオ・インターフェースとして利用することもできるのだ。接続はUSBケーブル1本。これでDAWの音もFA本体から出力することができる。

また外部入力端子の装備により、FAシリーズ経由でギター/マイクをDAWソフトに直接録音できるので、別途オーディオ・インターフェースを用意する必要もないし、ケーブル接続の手間も最小限。本体の「INTEGRA-7」直系の高品質音源で作ったバッキングトラックに、ギタリストの演奏、ボーカリストの声をカンタンに加えていける環境が揃う。まさに現代の音楽制作環境にマッチした仕様だ。

■サンプラー機能&パッドでオーディオ・データを自由自在に操る


▲サンプラーは拡大表示や不要部分のカットなどの編集が可能。
オーディオ・ループの活用も現代の音楽制作を語る上で欠かせない要素の1つ。FAシリーズにはループ主体のサンプラー機能が、サンプル・パッドとともに備わっている。

素材となるオーディオ・データはパソコンからSDカード経由でインポートできるほか、先に触れた外部入力から直接サンプリングすることも可能。ギターやベース、ボーカルも素材として、即座に楽曲制作やライブ・パフォーマンスに生かせる。また、録音素材はSDカードへ直接書き込み/直接読み込みに対応するので、ロードなどの待ち時間はゼロ、1曲まるごと素材として利用することもOK。リミックスにも威力を発揮する。アイディア次第でいろいろと活用できそうだ。


▲パッドは16個×4バンクのサンプラー。
オーディオ・データの再生をトリガーするサンプル・パッドは16個×4バンク。自由にオーディオ・データをアサインできるのはもちろん、サンプルの並び替えをスムーズに行えるクリップ・ボード機能も搭載。ライブ直前のサンプルの入れ替えや、パッドを使ったパフォーマンスの再構築の際にもとても便利だ。また、オーディオ・ファイルの再生だけでなく、さまざまな機能を切り換え可能。楽曲制作時には各パートの選択やミュートに割り当てたり、テンキーライクな数値入力装置としても利用できるのも見逃せない。

■フラッグシップ・シンセ「INTEGRA-7」直系の音源を搭載、拡張性も


▲SuperNATURALシンセ・トーンのエディット画面。フィルターやADSRなどアナログ・シンセでおなじみのパラメーターが並ぶ。
ここまで音楽制作のワークフローを中心に紹介してきたが、シンセサイザーとしても即戦力の実力を備えている。搭載される音源は、プロ・ミュージシャンから絶大な支持を受けるローランドのフラッグシップシンセサイザー「INTEGRA-7」直系。最新の音源技術を用いたSuperNATURALサウンド、PCM音色は定番の「XV-5080」全音色に加え、ドラム音色を強化。さらに音色拡張としてEXPシリーズが新たに加えられている。


▲音色の選択が実に簡単にできる。
SuperNATURALサウンドは大きく2つに分類される。SuperNATURALアコースティック・トーンは、使用頻度の高いアコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、オルガン、ギター、ベース、ストリングス、ドラムを中心に搭載。音質だけでなくそれぞれの楽器ならでは奏法がカンタンに再現できるのもポイントで、たとえば、アコースティックギターならコードを押さえるだけでジャラ~ンと弦ごとのタイミングがばらけたストローク演奏が実現できるし、ドラム音源ならモジュレーションレバーを倒すとスネアロールやシンバルロールが鳴るといった具合。

もう1つのSuperNATURALシンセ・トーンは、フラッグシップ・モデルの「JUPITER-80」「JUPITER-50」「INTEGRA-7」に搭載されたアナログ・シンセ特有の振る舞いを表現するエンベロープやヴィンテージ・シンセサイザーをイメージしたロー・パス・フィルターを装備。分厚く個性的なシンセ・サウンドが得られる。

これらSuperNATURALシンセ・トーンは「INTEGRA-7」と完全互換。ローランドの音色ダウンロード・サイトAxialに公開される「INTEGRA-7」用サウンド・ライブラリを読み込むことも可能だ。

PCMサウンドは、数々の名曲で使われてきた定番の「XV-5080」のトーンにプラスしてドラム音色を強化。さらに音色拡張として、新たにEXPシリーズも供給する((ローランドサイト「Axial」からダウンロードで供給、10タイトルを予定)。これは音色データだけでなく、その元素材となるPCM波形自体を追加するもの。本体には2つの空きスロット(書き換え可能な本体波形メモリー)を用意、USBメモリー経由で本体メモリーに書き込む仕組みだ。波形自体の追加がダウンロードで行えるのはハードウェアシンセとしては画期的なことだ。なお、本体に内蔵された波形とインポートしたEXP波形を組み合わせた音づくりも可能。サウンド・メイクの可能性を大いに広げてくれる。

この膨大な音色ライブラリから目当ての音色を探すのは一苦労と思いきやさにあらず。本体のディスプレイの下にあるダイレクト・ボタンにより直感的にすばやく探し出せるようになっている。また、ダウンロードにより追加したEXPシリーズの音色の場合、ピアノ音色であれば、本体がもともと持っているピアノのカテゴリーに入るのも使いやすいところだ。

また、音を複数重ねるデュアル、鍵盤を特定の音域で分割して複数の音色を弾き分けるスプリットもワンタッチで設定OK。ライブでも迷うことなく使えるユーザーインターフェースとなっている。

■強力なMFXは全パートで使用可、DJライクなエフェクトも用意


▲エフェクト・ルーティング(左)やTFX(右)の設定もグラフィカルな画面でエディット可能。

サウンド・メイクに欠かせないMFX(マルチエフェクト)も「INTEGRA-7」直系の強力なものが多彩に揃う。たとえばアンプ・シミュレーターはギターの他、エレクトリック・ピアノやコンボ・オルガンなど、それぞれの楽器に最適なタイプを用意。最新のエレクトロニック・サウンドに使えるスライサーやビット・クラッシュもうれしいところ。しかもMFXは16パートすべてで使用が可能。このクラスのワークステーションではかなり豪華な仕様といえる。

また、音声出力段の直前には飛び道具として実践的に使えるエフェクトをTFX(トータル・エフェクト)として用意。トリッキーなループ・サウンドを生み出すDJ FX LOOPER、特定の音域を操作して効果を得るISOLATORなど、DJプレイでおなじみのエフェクトによるパフォーマンスが行える。これらはローランドのハードウェア・サンプラー/エフェクター「SP-404SX」譲りのエフェクトだ。ロードしたサンプルをパッドで鳴らしながら、エフェクトをいじるだけでもけっこう長い間遊べてしまうはず。

   ◆   ◆   ◆   ◆

ハイクオリティな「INTEGRA-7」直系のサウンド・エンジン搭載で波形レベルでの音色追加も可能、サンプラーもシーケンサーも装備というスペックから、かなりヘヴィなシンセサイザーという想像をしていたのだが、実際に触ってみると、思いのほかカジュアルに使えるという印象を持った。それは、大きく見やすい5インチ液晶ディスプレイやわかりやすく配置されたボタン、パッド、カンタンにサウンドを変化させられるつまみなどのコントローラー(D-BEAMも健在!)によるユーザーインターフェース、そして、パソコンとの連携を見据えたワークフローをシンプルに作り上げたことからくるものだろう。また、「FA-06」の5.7kgという軽量さにも驚かされた(「FA-08」は鍵盤の違いから16.5kgになるが、それでも軽いほうだ)。

単体でもOK、パソコンとの併用ならさらに充実。どんなスタイルでも、スムーズに音楽制作が進められる、従来のシンセサイザーにはなかった進化が魅力のFAシリーズ。楽器店でぜひ実感してもらいたい。


▲背面にはUSB、MIDI、ヘッドフォン出力、メイン出力(L/MONO、R、TRS標準タイプ)、サブ出力(ステレオ標準タイプ)、オーディオ入力(ステレオミニ、GUITAR/MIC:標準タイプ)、フットペダルなどを備える。

<おもな仕様>

鍵盤:FA-08=88鍵(アイボリー・フィールG鍵盤、エスケープメント付き)、FA-06=61鍵(ベロシティー対応)
最大同時発音数:128音(音源負荷に依存して変化)
パート数:16パート

トーン:SuperNATURALアコースティック、SuperNATURALシンセ、SuperNATURALドラム・キット、PCMシンセ、PCMドラム・キット ※GM2音色を含む

ウェーブ・エクスパンション・スロット:スロット数=2 ※ウェーブ・エクスパンション・スロットは書換え可能な本体波形メモリー。音色ライブラリー・サイトAxialからデータをダウンロードして、USBメモリーで本体ウェーブ・メモリー(スロット)に書き込み可能。

エフェクト:マルチエフェクト=16系統、68種類(Vocoderはパート1のみで使用可能)、パートEQ=16系統、ドラム・パート用COMP+EQ=6系統、コーラス=3種類、リバーブ=6種類、マスター・コンプレッサー(インサート・エフェクト(78種類)に変更可能)、マスターEQ、トータル・エフェクト(TFX)=29種類、マイク・インプット・リバーブ=8種類

シーケンサー:MIDIトラック数=16、保存形式=オリジナル、SMFエクスポート/インポート対応、WAVエクスポート対応 ※サンプラーのトリガー情報を録音可能

サンプラー:フォーマット=16ビット・リニア、44.1kHz、WAV/AIFF/MP3インポート対応、同時発音数=8音、サンプル数=16パッド×4バンク(ソング毎) ※サンプルを音源のWaveとして使用することはできない。

その他機能:フェイバリット、リズム・パターン、アルペジオ、コード・メモリー

コントローラー:D-BEAMコントローラー、ピッチ・ベンド/モジュレーション・レバー、S1/S2ボタン、サウンド・モディファイつまみ×6、サンプル・パッド、テンポつまみ

ディスプレイ:5インチ・グラフィック・カラーLCD
外部メモリー:SDカード(SDHC対応)

接続端子:PHONES端子(ステレオ標準タイプ)、MAIN OUTPUT端子(L/MONO、R)(TRS標準タイプ)、SUB OUTPUT端子(ステレオ標準タイプ)、AUDIO INPUT端子、LINE:ステレオ・ミニ・タイプ、GUITAR/MIC:標準タイプ、FOOT PEDAL端子(CTRL 1、CTRL 2、HOLD)、MIDI端子(IN、OUT)、USB FOR UPDATE端子、USB COMPUTER端子(USB Hi-Speed AUDIO/MIDI対応)、DC IN端子

電源:ACアダプター
消費電流:1,300mA

付属品:クイック・スタート、『安全上のご注意』チラシ、SDカード(出荷時に本体装着済み)、SDカード・プロテクター(出荷時に本体装着済み)、ACアダプター、電源コード、保証書、ローランド ユーザー登録カード

別売品:キーボード・スタンドKS-G8、KS-G8B、KS-18Z、KS-12、KS-J8、ペダル・スイッチ:DPシリーズ、エクスプレッション・ペダル:EV-5、USBメモリー、ワイヤレスUSBアダプター(WNA1100-RL)

外形寸法 / 質量:
 FA-08:(W)1,415×(D)340×(H)142 mm / 16.5 kg
 FA-06:(W)1,008×(D)300× (H)101 mm / 5.7 kg

◆FA-06
価格:オープン(市場予想価格 110,000円前後)
◆FA-08
価格:オープン(市場予想価格 160,000円前後)
発売予定日:2014年2月15日


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