稀少な銘器BadCat USAギターアンプを島村楽器が猛烈アピール! ハイエンド・ブティックアンプを聴く

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島村楽器は、ハイエンド・ブティックアンプとして注目を集めるBadCat USAのギターアンプの商品説明会・試奏会を開催した。ギタリストの山口和也による演奏も披露された。

BadCat USAのアンプは、手作業による少量生産と高価なプライスのため、国内での流通量は極めて少なかった。しかし、同社の体制が変わったこと、そして2013年11月末より島村楽器が取り扱いを開始したことで、国内でも安定供給が実現した。そんなタイミングで、よりBadCat USAの認知度を高めるべく行われたのが今回のメディア向けの説明会・試奏会。まずはBadCat USAの紹介からスタートした。


BadCat USAは、ジェームス・ヘイドリックとアンプデザイナーのマーク・サンプソンにより、2000年にLAのコロナで設立された。マーク・サンプソンは、1989年にマッチレスを設立し、ハンドメイドのポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリング、クラスA回路を復活させ、ハイエンド・ブティックアンプというカテゴリを作り出した人物。BadCat設立時から生産されているBLACK CAT、CUB(カブ)といったモデルの基本テイストはマッチレスに非常に近い。たとえば、BLACK CATはMATCHLESS DC30の改良版、CUBはMATCHLESS LIGHTNINGの改良版と言われている。

その後、2002年にマーク・サンプソンが新たにデザインし、現在の同社の代表モデルの1つとなっている世界初のクラスAハイゲインアンプ「HOT CAT」が発売。2004年にUSA GUITAR PLAYER MAGAZINEで歴代ベストコンボアンプの2位に選出されたことで、強い歪みが得意&ロックなサウンドを生み出すというブランドイメージができあがったという(ちなみにその時の1位はFender Twin)。

高い評価を得る一方、納期が1年以上かかる、国内では販売価格が高く試す機会も少ない、という状況が続いたBadCat USA。社長がジョン・トンプソンに交代したことで、音質や品質をさらにブラッシュアップ、生産体制も大幅に改善、納期も短縮されることとなった。

また、生産体制の改善とともに、アンプの仕様も変更され格段に使い勝手が向上した。以前はオプションであったエフェクトループが、現在では全モデルで標準搭載。チャンネル切り換えは外部ABボックスでしか行えなかったのが、アンプ内部ですべて行えるようになっている。


▲左からBlack Cat 30、Hot Cat 30、Cub II、Black Cat 15。一番右のBlack Cat 15の上にあるのはUnleash。

現行ラインナップの商品の特徴としては、以下が挙げられた。
・伝導率の高いテフロン銀メッキケーブルによるポイント・トゥ・ポイント・ワイヤリング
・クラスA回路
・バックライトによる光るロゴパネル(目も光る!)
・大容量のハンドワウンド・トランスフォーマーとキャパシター
・頑丈な13プライのバルティックバーチ材によるキャビネット
・真空管取り付けマウントはショック耐性リングを採用し高い衝撃耐久性を誇る
・最高級Bourns社製カスタムメイドのポッド類を採用
・最高の伝導率と耐久性の実現のため金メッキ・コネクターを採用
・BadCat USAのみに使われるカスタムオーダーのセレッションVintage30スピーカーを使用
・プリチューブ、パワーチューブともにカソードバイアスのため、バイアス調整がいっさい不要(真空管交換の際も調整は不要)

使用アーティストについても紹介。海外では9度のグラミー賞を受賞しているブルースアーティストのボニー・レイット、日本ではBUMP OF CHIKENの藤原基央(Vo、Gt)が、Black Cat 30を使用しているという。

■4機種8モデルのアンプラインナップ

島村楽器が現在取り扱っているBadCat USAのアンプは「Black Cat 30」「Hot Cat 30」「Cub II」「Black Cat 15」の4機種。それぞれにリバーブ搭載の有無で計8モデルを用意する。リバーブ搭載モデル(R型番)はスプリング・リバーブが一番美しく出るよう回路をトータルで設計しており、人気があるのもこちらだとのこと。このほか、リアンプ/アッテネーターの「Unleash」もラインナップする。以下、山口和也による演奏が披露されたモデルについてはコメントとあわせて紹介する。

●Black Cat 30 / Black Cat 30R

BadCat USAの代表モデル。Ch1プリアンプに12X7、Ch2プリアンプにEF86を搭載、EL84パワーアンプ・チューブで動作させる30WデュアルチャンネルのクラスAアンプ。クリーンからクランチ、オーバードライブが得意、ウォームで立体的なクリーンサウンドから激しいプッシュサウンドまで堪能できる。Ch1は甘く複雑なミッドレンジを生み出し、ウォームでパンチのあるクリーンからタイトなクランチまで対応。Ch2はより攻撃的でハイファイなサウンドが特徴だ。Ch2は5段階のロータリー・トーン・コントロールまたはベース/トレブル・コントロールの切り換えが可能。リバーブ付きモデルではデュアル・リバーブが入っており、各チャンネルに合わせた調整が可能となっている。

Ch1を弾いた山口和也は、まず「クリーンがほんとにしっかり出ている」とコメント。「下から上までしっかり出ているので、この時点で安心しちゃったんですけど(笑)」「カッティングしても速い! クラスAっていうのもあると思うんですけど、立ち上がりがすごく速くて、弾いてて気持ちいい」と続ける。Ch2については「単純に歪む、ので幅広く」使えることを実演。ボリュームを絞ったクリーンから、ピックアップをリアのハムに変えての歪みサウンドまで、ギターのコントロールだけで聴かせる。「足元でいろいろ音を作るんだったらCh1にして、アンプ1台でやってみたいなって時はCh2にする」「ブルースによく合う、ピッキングニュアンスに追従してくれるので、僕は2が好き」とした。

●Hot Cat 30 / Hot Cat 30R

多数の受賞歴を持つ世界初のクラスAハイゲインアンプ。サイズはBlack Cat 30とほぼ同じ。プリアンプ・チューブに12AX7、パワーアンプ・チューブにEL34を搭載した、30Wのデュアルチャンネル仕様。最大の特徴はクラスAではかつてないハイゲイン・ディストーションを生み出せること。クリーンチャンネルではクラスAらしい張りのある美しいクリーンサウンドからクランチまで対応できるので、すべてのポイントで妥協なく最高の音質が得られる。

Ch1のクリーンチャンネルは、以前のモデルではボリュームノブのみであったが、現在のモデルでは5ウェイのトーン・セレクターが追加され、シングルコイルからハムバッカーまでマッチング、より細かな音質調整が可能となっている。また、マスターボリュームにはIN/OUTが付いており、通常の1ボリュームとしても使えるほか、2ボリュームのアンプとしても使用可能だ。

「こっちが実は僕のお気に入り」という山口和也は、ちょっと前から本機をテスト中。クリーンからハイゲインまで出るとの紹介に「びっくりしました」と一言。「なんでもいけますよね」とさまざまなジャンルで使えることを示す。Ch1については「さっきのBlack Catより、もっとクリーンが出る」「歪みも少ないですよね」とピックアップを変えながらクリーンサウンドを演奏。5段階のトーンつまみは「1から徐々に低音が増えていくイメージ」と解説しつつ、ギターや音楽に合わせて音質補正ができることを実演。Ch2については「最初からガツンと」激しい歪みで演奏、「ゲインとレベルの関係で歪む感じ。粗い歪み担当がゲインで、きめ細かい歪みがレベル担当みたいな捉え方で僕は思ってるんですけど」と両者を調整しながらさまざまな歪みサウンド繰り出す。さらに「めっちゃ伸びる!」「歪みって、ピッキング直後の最初の出だしはきめ細かで倍音も豊かでいいのに持続させるとそれがなくなっていくアンプがよくあると思うんですけど。これはもうずうっとそれが伸びる」と特徴を語る。また、アンサンブルの中でも「抜ける音」とし、「気持ちいいですね、弾いてても」と締めた。

●Cub II、Cub IIR

「カブ・ツー」と発音。12AX7プリチューブ、EL84パワーチューブで動作する15Wのシングルチャンネル仕様。BadCat創業当時からあるモデルだが、改良を重ねたことでこのクラスでは最も洗練されたアンプとなっている。水晶のようにきらめく高音域と暖かくタイトな低音域が特徴。5段階のロータリー・コントロールまたはベース/トレブル・コントロールを切り換え可能。これにより分厚いパンチのあるミッドレンジを得ることができる。マスターボリュームはINとOUTの切り換えが可能、出力は15Wから7Wに切り換えできるので、小音量でも好みの歪みが作りやすいのもポイント。また、ピッキングニュアンスによる表現力にも優れ、立体的で複雑なトーンも再現。15Wとはいえ、自宅から大きなステージまであらゆる場面で活躍できる多様性も魅力だ。

試奏した山口和也は「ぜんぜん15Wみたいな感じがしませんね」「遜色ない」と物足りなさはない様子。「すごいシンプルなんで、ギターでいろいろ音色を変えるといいかな」と、フロント&シングルでもしっかりとした歪みを、さらにリア&ハムでより迫力ある音を出し「けっこうロックまでガツッといけるかな」と美しいクリーンから激しい歪みまでゲインでコントロールできることを示す。「あとはブースターとか、いろいろつないで遊びたくなる。シンプルなんで愛着がわく」とも。

●Black Cat 15、Black Cat 15R

「Black Cat 30」のボリュームよりコントロールしやすくしたモデル。出力が15Wになった以外は同じ仕様。より小さなボリュームで好みのサウンドが作りやすいので、クラブなどの小さなステージに適している。

●Unleash

「Unleash」はアンプではなく、リアンプ/アッテネーター。どんなアンプでも出力を1~100Wまでアッテネート(減衰)もしくはブースト(増減)させることができ、お気に入りのアンプ1台で、自宅での小音量練習からクラブでの大音量ライブまでカバーできるようにするというもの。2つのフット・スイッチング可能なボリューム・コントロールにより、リズムとリードの切り換えが可能。さらにエフェクト・ループとダイレクトアウトも搭載。機能が少ないアンプを使用する場合でも、現代的な機能を持たせることが可能。たとえば、エフェクト・ループなしの1Wのアンプであっても、本機を接続することで100W&エフェクト・ループ付きのアンプとして使用することが可能になる。

「Black Cat 30」「Hot Cat 30」「Cub II」3モデルの試奏後、ラストは再び「Hot Cat 30」で、バッキングトラックとともに楽曲を演奏。今回はディレイ・ペダルを接続。「センド・リターンが付いてるので、いろいろな使い方ができる。そのへんも気に入ってるポイント」。足元のボリュームで歪みをコントロールしつつ、1曲中で幅広いサウンドを次々と繰り出した。「ずっとFender使ってたんですけども、より輪郭がパキッと出る。今後はこれ1本になりそう」というコメントが印象に残った。

試奏後の質疑応答では、普段使用しているという「Fender Twin」との違いについても語られた。「Twinは100Wぐらいの2chのアンプで、けっこう歪む、タイプ的にはHot Catと似てるんですけども」「(Hot Catは)歪みが好み」「なんかハスキーな感じ。で、伸びるっていう」「ピッキング・ハーモニクスをぐいっとやったような、ああいう音色も出せるので、幅広くイケる」「あとは中域のポイントがちょっと違う。こっちの方が抜けやすい」と改めてその魅力を語った。またライブのセッティングについては「いろいろごちゃごちゃするのももったいない気もするので、割りとシンプルに」「これだけでも十分、カンタンなセッションであれば行けちゃうので」とし、「Hot Cat、ほんとに気に入ってます」と笑顔で答えた。

このほか、BadCat製品の試奏可能な店舗についても紹介。設置店舗は、仙台イービーンズ、新宿、町田、新所沢、静岡パルコ、名古屋パルコ、梅田ロフト、神戸三宮、広島パルコ、福岡イムズ。「Hot Cat」と「Black Cat」はいずれの店舗にも設置、その他のモデルについては店舗によって異なるとのこと。

試奏を熱く披露してくれた山口和也への単独インタビューを敢行。BadCat USAギターアンプについて、これから購入を考えているユーザーへのメッセージも語ってくれた。次ページに続く。

◆Black Cat 30
価格:398,000円
◆Black Cat 30R
価格:418,000円
◆Hot Cat 30
価格:398,000円
◆Hot Cat 30R
価格:418,000円
◆Black Cat 15
価格:348,000円
◆Black Cat 15R
価格:368,000円
◆Cub II
価格:298,000円
◆Cub IIR
価格:318,000円
◆Unleash
価格:69,800円

◆山口和也インタビューへ
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