ミュージシャンのためのDSP搭載オーディオインターフェイス、Universal Audio「Apollo Twin」の魅力を徹底解明

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1月に開催されたNAMM Showで発表され、話題を集めたUniversal Audioの「Apollo Twin」は、DSPシステムを搭載したオーディオインターフェイス。発表と同時に発売が開始され、1日めから多くの購入者がいたほどの注目度で、日本でも発売開始以降高い人気を得ている。

シリーズ初となるミュージシャン、ホームスタジオ向けの製品である「Apollo Twin」、2月に来日したUniversal Audioの永井“ICHI”雄一郎氏にその魅力を聞いた。インタビューはUniversal Audio製品の国内販売を手がけるフックアップのショールームで行われた。

■コンパクトながら充実した入出力

「Apollo Twin」は、コンピューターに負荷をほとんどかけることなくリアルタイムのエフェクト処理が行える同社のUADシステムと、高品位な24ビット/192kHz対応オーディオインターフェイスをコンパクトなデスクトップサイズに凝縮したモデルだ。ラインナップは、「Apollo Twin SOLO」「Apollo Twin DUO」の2モデル。両者の違いは搭載されるDSPチップ(Analog Devices製)の数で、同時に利用できるプラグインの数が変わってくる。コンピューターとの接続はThunderboltで、現在はMacプラットフォームのみ対応だ(詳細は後述)。


▲トップパネルの操作はボタンで機能を切り替え、つまみでパラメーターを設定。メーターは左側がプリアンプ、右側がモニター&ヘッドフォンで、その下のボタンで入力と表示対象を選択。入出力は前面と裏面に配置される。

まずはインターフェイスを見ていこう。入出力はアナログが2イン/6アウト。入力はマイク/ラインのコンビネーションジャック、出力はモニターアウトとラインアウト、そしてフロントパネルのヘッドフォンを用意。ヘッドフォンも独立したDACが用意されているので、メイン出力とは異なるミックスを送ることができるし、DJソフトならキューミックスにも利用できる。また、デジタル入力(オプティカル)も用意。S/P DIFステレオまたはADAT 8チャンネルが拡張できるので、これを合わせれば最大合計10チャンネルの入力が可能になっている。

プリアンプには、Universal Audioの「4-710」プリアンプからの回路を使用。フロントパネルに用意されたギター/ベース用のHi-Z入力は、背面のライン入力1と同じコンバーターチップを使用。Hi-Z入力にシールドケーブルを挿せば自動的に入力が切り替わる。常にこちらが優先される手間いらずの仕様だ。


▲コネクタなどは上位モデルのApolloと同じパーツが使われている。
アルミ製のボディとともに高級感のあるルックスを印象づけているのがつまみの存在。モニターの音量コントロールなどに使われるこの大きくて操作しやすいつまみは、適度な重さがあり質感もなかなか。この価格帯、この形状の製品のほとんどではデジタルで音量が制御するため、音量をしぼるにしたがって24ビット、23ビット、22ビットと音の解像度が下がり、音質は劣化してしまう。それに対して「Apollo Twin」の場合は上位モデルと同じく、デジタルコントロールのアナログのパーツを使っており、音量をしぼっても24ビットの解像度は保たれる。大きな音で聞いても、小さな音で聞いても同じクオリティというわけだ。「こういったところで他の製品と差がつきますね」と永井氏。

つまみ下に配置されたプリアンプ設定用のボタンも操作しやすいもの。アナログライクな操作感を目指し、それぞれのボタンに独立した機能が与えられている。ボタンを押しながら異なるパラメーターを調整するということがないため、使いやすく混乱することもない。また、インプット選択に加え、ハイパス・フィルター、ファンタム電源、パッド、フェーズ、ステレオリンクまで、ハイエンドモデルの「Apollo」と同じ構成になっているのもポイントだ。

さらにレベルなどを示すインジケーターにもこだわりがある。それぞれのLEDの光が漏れることがなく隣の表示に影響を与えることがない。暗いところでも見るとそれがよくわかるという。そして、背面のコネクタをケースに固定しているパーツも他ではあまり見られないもの。これらも「Apollo」ゆずりだ。電源は付属のACアダプターを使用する。

■トップ・クオリティの音質を誇るホームスタジオ向け


▲Apolloファミリーのラインナップ。上からApollo Twin、Apollo、Apollo 16。
もう1つの特徴であるDSPシステムについて紹介する前に、まずは同社ラインナップにおける「Apollo Twin」の位置づけを確認。ビンテージなアウトボードをシミュレートしたエフェクトプラグインを、コンピュータ本体にほとんど負荷を与えずに使用できるソフトウェアとハードウェアからなるDSPシステム「UAD」シリーズは現在、大きく分けてデスクトップパソコンに内蔵するPCIeタイプの「UAD-2」と、Firewire接続の外付けモデルである「UAD-2 SATELLITE」のラインナップがある。それぞれ搭載するDSP数とバンドルプラグインによって複数のパッケージが用意される。

UADシリーズのシステムをオーディオインターフェイスに搭載したのが8IN/8OUTの「Apollo」および16IN/16OUTの「Apollo 16」。いずれも1Uラックマウントのスタジオ向け仕様で、「Apollo」にはDUO/QUADの2モデルが用意される(Apollo 16はDSPを4基搭載)。そして、「Apollo Twin」は、このApolloシリーズの「新メンバー」で、初のホームスタジオ向け、テーブルトップタイプのモデルとなる。

「Apollo」はプロデューサー、エンジニア向けに作られたオールインワン製品。「Apollo 16」はその上位モデルとなるスタジオ向け製品で、アナログ機器やシンセがたくさんあるI/Oがより多く必要な環境向けにリリースされている。対する新登場の「Apollo Twin」は、プロジェクトスタジオ、ホームスタジオユーザー向けの、モデルとなる。これらはすべて「Apolloファミリー」であり、Universal Audioがうたっているメッセージも同じだという。

その1つが「クラス最高のサウンド・クオリティ」。このクラスというのは、「Apollo」であれば19インチのオールインワンタイプ、「Apollo 16」であれば16イン/16アウトのスタジオタイプ、そして「Apollo Twin」はテーブルトップタイプを指し、それぞれすべての製品の中で「Apollo」シリーズがトップ・オーディオ・クオリティである。マイクプリアンプの質、コンバーターの質、Hi-Zの質、モニターコントロールおよびモニターアウトの質において「トップ・オーディオ・クオリティ」を誇るという。

「Universal Audioがほかのメーカーと違うのは、1950年代からアナログの機材とずっと作り続けていること。そして、90年代の終わりころからデジタル製品を手がけているんですが、それもアナログのものをコピーしたデジタルなんです。うちは常にアナログに関心があり、テクノロジーもそこから来る。アナログ回路に対してのノウハウがそれだけあるので、そこがちょっと違うんですね」と永井さん。

「Apollo Twin」はテーブルトップ、ホームスタジオタイプであるが、品質にも妥協はない。これまで同種の製品では、I/Oの数を減らすだけではなく、音の質も減らしているのが当たり前だった。しかし、同社が調査の際にはっきり言われたのは「世界には安い便利なものがいっぱいありすぎる。でも、欲しいのは、小さいんだけど音はプロ仕様、ハイエンドの部品を使ったもの」という言葉だったという。そこで、「Apollo Twin」はまったく妥協がなく、20~30万円の「Apollo/Apollo 16」とコンバーター、マイクプリアンプ、Hi-Zなどをそのまま使用している。よって、サウンドも「Apollo/Apollo 16」のクラスと同じクオリティ。「だから他社の製品と比べたらぜんぜん別物なんですよ」と自信を見せる。

■DSPによるハイパワーをノートでも

さらに同社製品を特別なものにしているのは10年ほど前から始まった「UAD」というシステムの存在だ。

「スタジオにある名機、50年間にわたって残ったもの、今でもスタジオで使われ、eBayに行っても中古屋に行っても売ってるんですよね、高い値段で。なぜかというと音楽作りにほんとに効くんですよ。そういったものをデジタル化し始めたんですよ」とUADの歴史を紹介。「そのエミュレーションがすごく正確で、ヘタしたら下手なアナログ機器を買うよりも音がいいんですよ。そして、再現性もある。メンテしなくてもいい。場所もとらない」と大きな利点を次々と挙げた。

「すごい調子のいいアウトボードが1つあっても、ミックスの時には1つだったらどうしようもない。5台欲しい時だってある。そういう意味でUADのプラグインシステムが世界で、特にプロに多く使われて広がっていったんですね」。そして、そのシステムをインターフェイスに入れることによって、またさらに利点が大きくなったのが、「Apollo」シリーズ。「このエフェクターを楽器やマイクに挿してすぐに、インスタントにハードウェアにつながっているように使える。今までは、ミックスやマスタリングだけで使っていたものが、リアルタイムで使えるようになった。最近ではライブでもお客様が使ってるんですよ」とその使用シーンの広がりを紹介。「たとえば、Apolloを持って行ってLexiconのリバーブをただ単にセンド・リターンでつないで、アナログ機器と同じように使ってるんですよね」と、UADのシステムが入って、かつリアルタイムで使えるハードウェアの優位性を示した。

■歴史を勝ち残った優れたプラグイン

約10年の歴史があるUADシステムには現在、90種のプラグインがラインナップされ、この中から好きなものをチョイスして導入できるという仕組みになっている。ビンテージのテープレコーダーStuder A-800から、Lexiconのリバーブ、Moogのフィルター、Manleyのイコライザー、dbxのコンプレッサーなどありとあらゆるスタジオツールが揃う。しかもいずれも長い歴史を勝ち残ったものばかりだ。「だから、みんなが欲しがるのは当たり前。全部いいものばかりだから。そして、今でも使っているもの」と充実のラインナップを語る。そして、「こういったものが今までミックスで使われていたんだけど、Apolloシリーズによってリアルタイムで使用できるようになった」とも。

買ってすぐリアルタイムな処理を味わえるように「Apollo Twin」では豪華なソフトウェアバンドルが付属する。しかも、シリーズ中最も低価格ながら最も優れた新しいバンドルだという。その名も「リアルタイムアナログクラシック(Realtime Analog Classics)」。ボーカル録りやアンプ録り用のマイクプリアンプ「UA 610-B」、Softtube社のギター/ベースシミュレーター「Amp Room Essentials」、ボーカル録りやギター録り、ミックスに使うコンプレッサー「LA-2A」「1176」、Pultecのイコライザー、リバーブなどがスタンバイ。ボーカル、ギター、ベース録りが買ってすぐ行えるようになっている。

■マイクプリアンプをハード/ソフトで再現する「Unisonテクノロジー」

ありとあらゆるスタジオ機材をモデリングしてきたUniversal Audioが、これまで手がけていなかったのがマイクプリアンプのカテゴリーだ。マイクプリアンプはアナログ機材の中では非常に重要なもの。「マイクの次に重要」としつつも手を出してこなかった理由として、「マイクプリアンプというのは、ほんとにアナログなものなんですよ」と語る。AD変換がアナログとデジタルの壁として存在する。そして、その間に必要となるのがマイクプリアンプ。マイクの小さな信号を持ち上げてコンバーターに送って録音が可能になる。そこに新たに投入されたのが、Universal Audioの新しいテクノロジー「Unison」だ。

「Unison」は「Apollo Twin」で初めて採用された技術(現在は「Apollo/Apollo 16」も対応)で、「アナログとデジタルのユニゾン」であると説明。アナログとデジタルを使ってマイクプリアンプの複雑なシステムをモデリングするという。「Apollo Twin」に内蔵されるアナログパーツをデジタルでコントロールするのがポイント。インピーダンスやゲインの範囲、どうやってゲインが上がってくるかといったアナログの世界をデジタルでコントロール、それによりマイクがだまされるというのだ。ソフトウェアからの命令により内蔵されたアナログパーツの特性が変化。それによりインピーダンスも同じ、ゲインのステージングも同じなのでマイクは「あっ、610につながってるんだ」と正しく反応して信号を送ってくる。その後は、従来どおりの物理モデリング、回路モデリングの技術によりチューブのキャラクター、たとえばディストーションやハーモニクスなどを追加する。こうしてやっとマイクプリアンプのモデリングのシステムが完成したというわけだ。

このUnisonテクノロジーは「Apollo Twin」にバンドルされるUA 610-Bプラグインでデビュー。Apollo用プラグインを開発しているパートナーシップメーカーにはマイクプリアンプを手がけている会社が多く、さまざまなマイクプリアンププラグインが、Unisonテクノロジーの上で開発、リリースされる予定だ。

スタジオの基本となる録音のワークフローで使われる機材、すなわちマイクプリアンプ、コンプレッサー、イコライザー、そしてリバーブ、ディレイといったベーシックなものが、「Apollo Twin」で揃うことになる。豪華なスタジオであればこれらの機材が何セットもあるわけだが、それがDAW上で使用可能になる。「シンガーや演奏者はこれらを使って、録音におけるさまざまなトライをDAW上で行える」「自分に一番合うような音作り、贅沢なワークフローが構築できる」と、そのメリットが力強く語られた。

■遊びながら音楽制作できるワークフロー


▲本体内のミキサーをグラフィカルに表示するConsoleの画面。左はギタアンプシミュレーター、右はプリアンプUA 610-Bプラグイン。
そんなワークフローの実演として示されたのがギターを弾きながらのデモンストレーション。ここで使われたのは「Console」という専用のアプリケーションだ。

入出力の設定や、各バスへのプラグインのインサート、設定が行えるスタンドアローンのプログラムとなっており、DAWを起動することなくいつでも手軽に多彩なエフェクトが使用可能。アンプのプラグインを使用すれば、すぐギターの練習が始められる。

ギターを「Apollo Twin」のフロントパネルのHi-Zに直結、聞こえてきたのは標準プラグインとして用意される610プリアンプ、Marshallギターアンプを通した迫力のギターサウンド。クリーンからクランチ、歪みまで気持ちのいいギターサウンドを聴かせる。しかもレイテンシー(遅延)はまったく感じられない。「普通のインターフェイスはここまでできない。Apollo Twinはインターフェイスを超えて、プリアンプやギターアンプになっている。DSPをおまけに積んでいる製品も出ていますが、ここまでの質、ラインナップを用意するものはないのでは?」と10年の歴史を持つプラットフォームに自信を見せる。

「Universal Audioが大事にしているのは『ワークフロー』という言葉。(音楽制作における)作業の自然な流れです。ミュージシャンやソングライターは、まず、楽器で遊んでるんですね。だからPlayというんですね。Play Music。こうやって遊びながら(といいつつギターをプレイ)、音を作りながら、インスパイヤされて何かを作りたいと思っている」。

それを「Apollo Twin」が実現できている例として挙げられたのが、まず、プラグインを通した音をレイテンシーなくリアルタイムで聴けること。また、ギター録りでは旧来アンプの音をマイクで収録するのが基本だったが、現在ではプラグインによりアンプサウンドでモニタリングしながらクリーンな音で収録、あとでいくらでも好きなサウンドを作ることができる。かけ録りではできないフレキシビリティがあるとした。「このシステムで何ができるかと言うと、グレイトサウンド、すごくリアルなサウンドがあって、さらにフレキシビリティがまだ残っている。デジタルでしかできないフレキシビリティが」と、力を込める。

その発言が証明されたのが続いて実演されたレコーディングの流れ。DAWを起動、ここでの選択肢は今聴いている音をそのまま録るか、クリーンで録っておくか。先ほど「Console」で作ったアンプサウンドをDAWでロードすればまったく同じ音が出る。DAWが変わってもそれは同じ。そのサウンドでモニタリングしながらクリーンで録音、ミックスの段階で再びプラグインのアンプを変更、調整していくらでも音を変えられる。

「Apollo Twinですごいなめらかなワークフローができる。楽器を練習して、アイディアからキャプチャ(録音)からミックスまで……。それがどんどん積み重なっていい曲になる。ここまでできるのは他にないと思います。クオリティとフレキシビリティ。カンタンに言えばそれだけなんですが、今までなかなかできなかったこと」と語り、「Apollo Twin」を指差し、こう続けた。

「スタジオがこの中に入っている感じですよね。こんな小さなものでビンテージギアをいっぱい持ち歩いて、いつでも呼び出せるんです」

続いて見せてくれたのが、「Apollo Twin」のプリアンプを使ってマイク収録されたというCMソングのPro Toolsプロジェクト。その出音は、10万円以下のハードウェアで録ったものとは思えないレベル。使用トラックは30以上ですべてのトラックにフルにエフェクトをかけるとDSPチップ8基搭載の「UAD-2 OCTO」クラスのDSPパワーが必要になるとのことだったが、それでもPro ToolsのCPUメーターはほとんど振れない。つまり、コンピューターの負荷はほぼないということだ。録音の際はレイテンシーのないリアルタイム処理の利点があり、ミックスの際はCPU依存がないというメリットがある。コンピューターに負荷をかけないことで、動作が安定するし、その分サンプルレートを上げたり、バーチャルインストゥルメントをフリーズすることなくより多く使用できるという利点も語られた。

■Thunderbolt 2にも対応、Windows対応も視野に

コンピューターとのインターフェイスがThunderboltのみというのも本機の大きな特徴だ。

ThunderboltはIntelとAppleが開発した高速汎用データ伝送技術で、Universal Audioは、2012年の「Apollo」リリース時にオプションとしてThunderboltカードを用意している。現在、すべてのMacがThunderboltインターフェイスを搭載しており、昨年末発売のMac Proでは6基も搭載するなどMacプラットフォームでは普及が進んでいる。「Apollo Twin」はこのThunderboltに対応したことで、ケーブル1本を接続するだけで、MacBookでも手軽に使えるようになっている。なお、4Kビデオの世界で世界標準となっているThunderbolt 2にもすでに対応済みだという。

FirewireとThunderboltの両方に対応する「Apollo/Apollo 16」に対して、「Apollo Twin」はThunderboltのみ対応。Thunderboltのみなので、逆にドライバーソフトウェアがより優秀になっている点もトピックの1つ。オーディオもUADシステムもPCIeの速度で処理するので、最も広帯域でレイテンシーも低いドライバーができたという(「Apollo/Apollo 16」もアップデートで対応)。また、Mac OS X Mavericks、Pro ToolsのAAX64、Mac ProのThunderbolt 2環境でもすべてテスト済み、最新マシンでも不安はないとのこと。

そこで気になるのが、Windowsへの対応。返ってきたのは「ドライバの問題だけですね」という言葉だった。現在、Windowsプラットフォームでは、Thunderboltの普及が進んでいるとはいえず、標準といえるテスト環境も存在しない状態だが、Windowsサイドのドライバが出ればすぐに対応する予定だという。同社のほかの製品はすべてクロスプラットフォーム対応で、未対応はThunderboltインターフェイスのみの対応の本機だけだ。「Windowsユーザーが多いのはわかっている。可能になったらすぐにやりたい」と頼もしい発言も聞くことができた。


■ターゲットはアマチュアミュージシャン

「Apollo」シリーズ初となるミュージシャン向けの「Apollo Twin」。プロだけでなくアマチュアにこそ使ってほしいという。その理由は音のよさだ。

「プロもアマチュアも変わらないのは、いい音に感動するということ。特にこれまで1台2台とインターフェイスを買ってきた人は、音はいい方がいいと思うはずです。毎日使うものなので。音がいいというのは、ADコンバーターのスペックだけで決まるものではないんですよ。アナログの部品のチューニング、マイクプリアンプ、ヘッドフォンアンプ、モニターコントロールとか、先ほど紹介したものですよね。これがウチが50年の歴史があるので、部品が別レベル。だからほんとに音いいですよ。

プロもアマもアンプとかエフェクターとかを使わないと音を作れないですよね? その音はいい方がいい。このインターフェイスを普通のインターフェイスより高いと感じる人もいると思うんですけど、ここまでやったことだけで、それを199ドルのインターフェイスで再現しようと思ったら、この値段を絶対超えますよ。たとえば、Marshallのアンプをスタックして、マイクをセッティングしたら終わり。環境からみてもバジェットから見ても、同じことを再現しようとしたらこれはとても安い。値段は少し高めだが、できることが全然違う。

Apollo/Apollo 16はエンジニア向け、Twinはミュージシャン向け。エンジニアはだれかが来ないと録らないじゃないですか。対してミュージシャンは自分の遊びが多いじゃないですか。ミュージシャンが一番やることをサポートするギアなんですよ。家に帰ってきて、あっ、ちょっと遊びたいな、といってすぐに弾ける。その気持がビルドして、録音したいとなったらすぐDAWを起動して録音できる。音をいじりたいとなってもOKです」と、いつでもすぐに使えることをアピール。さらにこう続ける。

「使っているツールはグラミー賞をとったエンジニアが使ってるものと同じ。あとは差があるとしたらクリエイティビティと努力だけですよね。Twinを卒業して、上位のApollo/Apollo 16にも移行しやすい。ハードウェアを変えても同じプロジェクトファイルが使える。

Apollo Twinの一番の利点はクリエイティビティをサポートしてくれるインターフェイス。ほんとに他にはないと思います。自信を持って言えます。」

■SOLOとDUO、どっちを選ぶ?

インタビュー終盤、以前から気になっていた「Twin」という名前の由来について聞くと、入力が2チャンネルであるということに加えて、「Apolloと同じ部品を使っている双子である」との回答。また、Apolloはギリシャ神話の芸術の神アポロンに由来し、「後で調べたらアポロンにはアルテミスという双子がいたんですよ。だからTwinではなくアルテミスでもよかったかも」という話も聞くことができた。

「あとはギターアンプのフィーリングでツインってことかな(笑)。Fender Twinっていう、あれも2チャンネルのアンプですからね」という意外な答えが。ギタリストを主要なユーザーと捉えていることがうかがえるエピソードである。


▲トラック数が増えてくるとより多くのDSPパワーが必要。
すでに「Apollo Twin」が気になっているという人は、SOLOとDUO、どちらを選択するか迷っていることだろう。販売数は世界的に見るとDUOだが、国内では同じくらいとのこと。「Apollo TwinはI/Oのクオリティが高いのでそれだけでも魅力的なんですけど、エフェクトは使い始めたらどんどん使いたくなる」とは、同席したフックアップの田中さん。UADを知っている人ほどDSPパワーは多い方がいいという感覚だそうだ。「Apollo Twin」本体にあとでDSPチップを追加することはできないので、あとは2万円というSOLOとDUOの価格をどう考えるかだ。とはいえ、使用しているうちにDSPパワーが足りないと感じてきても、「UAD-2 SATTELITE」などでDSPパワーを増やすことは可能だ。

「レコーディングに使うならSOLOでも十分。DSPパワーが足りなくなるとしたらミックスの時。全トラックにエフェクトを挿したいとなるとやっぱり欲しくなる。入り口と出口はApollo Twinでやって、DSPパワーが欲しくなったら追加すればいい。さらにリアルタイムでいろいろやりたいならApollo/Apollo 16になりますよね」とは永井さん。

ミュージシャンのワークフローを一生懸命勉強して開発されたという「Apollo Twin」は、トラッキングからミキシング、マスタリングまでこなせる魅力的なトータルソリューションだ。ルックスからくる印象と価格からは想像できないクオリティを制作環境にもたらしてくれることは間違いない。SOLOとDUO、どちらを選ぶかは、じっくり悩んでほしい。


<おもな仕様>
入出力:
・MIC/LINE入力×2
・Hi-Z入力×1
・LINE出力×2(独立したL/Rミックスバス)
・LINEモニター出力×2(ステレオペア/独立したL/Rミックスバス)
・ヘッドフォン出力×1(ステレオペア/独立したL/Rミックスバス)
・デジタル入力ポート(TOSLINKオプティカル)×1(ADAT、またはS/PDIFの選択式)
・Thunderboltポート(Thunderbolt 2互換)
対応サンプリングレート:44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、172.4kHz、192kHz
ビットデプス:24ビット、AD変換 2チャンネル、DA変換 6チャンネル
S/PDIFジタル入力:44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz(ステレオL/R)
ADATデジタル入力:
・44.1kHz、48kHz:1-8
・88.2kHz、96kHz:1-4(SMUX)
・172.4kHz、192kHz:1-2(SMUX)
クロック同期ソース:Internal、S/PDIF、ADAT
寸法:150(W)×57(H)×152(D)mm
重量:1,050g
消費電力:12W

<付属プラグイン>
・UA 610-B Tube Preamp
・TELETRONIX LA-2A Legacy
・1176LN/SE Legacy
・Pultec EQP-1A Legacy
・RealVerb-Pro
・CS-1 Channel Strip
・Softube Amp Room Essentials

◆Apollo Twin SOLO
価格:オープン(市場実勢価格 75,000円 税別)
◆Apollo Twin DUO
価格:オープン(市場実勢価格 95,000円 税別)


◆Apollo Twin 詳細ページ
◆Universal Audio 製品ラインナップページ
◆フックアップ
◆BARKS 楽器チャンネル
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