LEAR、イヤホンの不自然な音場/定位を払拭する画期的技術を提案

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香港が誇るカスタムIEMブランドのLEARが、クラウドファンディングを立ち上げ、世界中の音楽ファンとイヤホンマニアからサポートを募っている。彼らが立ち上げているのは、NSS(Natural Stereo Sound)という名のテクノロジーを搭載したユニバーサルイヤホンの開発だ。一口160ドルのサポートで、NSS搭載イヤホンを早期入手することができる。

◆LEAR NSSプロジェクト映像

NSSとはステレオサウンドシミュレーション技術で、イヤホンでありながらスピーカーで聞いている状況と同じ音場を再現し、イヤホン特有の脳内定位をはじめとする不自然な定位や閉塞感を解消する世界初のテクノロジーだ。

本来音楽は、ライブであろうとスピーカーのからの音楽再生であろうと、前方にある音源から我々の耳に飛び込んでくる。当然のように我々の耳には「左側の音源は左から聞こえ、右側にある楽器の音は右から聞こえる」わけだけど、実は裏では脳が多くの処理を行った上でそのように認識しているのであって、物理上はそれほど単純な話ではない。

実際右のスピーカーから出ている音は、左耳にも届いており、その逆もしかり。LRから再生される音楽信号はスピーカーで鳴らされるまでは厳密にセパレートされているけれど、音楽として空気に放出された時点でLの音もRの音も自由に空気を伝い、完全に交じり合いながら我々の両耳に届くことになる。右耳と左耳の距離にして20センチにも満たない位置のズレだけで、両耳の音の微細な違いを脳が検知し、そこから音源の距離感や方向を分析/判断することで音像を認知していることになる。左右の目で立体視するのと同じことを、耳でも行っているわけだ。

一方でイヤホンの場合、LRのスピーカーを空気中に放出するのではなく、完全にセパレートさせたまま各耳にLRそれぞれ100%ずつぶち込むような構造となる。左の音が右耳に流れこむことはないし、右の音も左耳には届かない。これが左右の不自然な分離を生み出す元凶であり、奇妙で不自然な音場を生み出してしまう要因だ。定位を左にパンさせると、音像が左に移動するのではなく、イヤホンでは左耳の真横に音が定位するのもこれが原因で、まるでLRのスピーカーの間に入って音楽を聞いているような状況になっていることがよく分かる。センターの音が脳内、あるいは頭の天辺に定位してしまうのも、当然のことだ。


音楽にかぎらず、全ての生活音は右耳にも左耳にも到達している。両耳に入ってくる音の位相のズレ情報を元に距離感や方向などを感知していると言われているが、イヤホンにおいても空間を伝わって到達するようなオーガニックな空気振動を左右で聞くことができれば、ごく自然に左右の耳の連携を促し、音の位置や距離を判断する手助けができることになる。NSSは、まさしくそういった三次元サウンドを再現させるテクノロジーだ。

なお、彼らは70000ドル(50万香港ドル)の資金調達を目標としている。NSSイヤホンの早期割引価格は160ドルなので生産実現に必要な500サポートを希望しているが、現時点で300近くのサポートを獲得している。500サポートでNSSイヤホンプロジェクトは実現するが、サポーターが1000人に達すれば、更に発展させた音楽プロジェクトを開始することが可能だという。完全な三次元音場を生み出すにはレコーディング側もそのテクノロジーを使用する必要があり、彼らは全てのミュージシャンにバイノーラル録音技術を伝え、音楽制作者とそのノウハウを共有していきたいという。


本当の三次元録音を行うためには、空間全体のサウンドを録音する必要がある。1000人のサポートが集まると、部屋のアンビエンスをも再現するLEARのバイノーラル録音デバイスの開発が可能となる。いよいよ三次元レコーディングの時代がやってくるというわけだ。


LEARは、NSS搭載イヤホンを製造するのみならず、最新のオーディオ体験を提供したいと考えている。公開されたYouTube映像は是非イヤホンをつなげてみて欲しい。日本語テロップも入っているので、その意味もよく分かるはずだ。

クラウドファンディングの期間はあとおよそ3週間、これはチェックしておきたいプロジェクトだ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也


◆LEAR NSSサイト
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