ジャンルを越えて日本のアーティストが集結したイベント<SATURN>レポート

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長い時間、道なき道を試行錯誤しながら
ここまできたアーティスト達が集結!


日本人オンリー、そしてジャンルも問わないアーティストが、大阪に集結したイベント<SATURN>!
“こんなラインナップが、一晩に集結するなんて~”
ありそうでなかったこのイベント・チケットは、もちろんソールド・アウト!
夏フェス・シーズンを目の前に、スイッチが入ってしまったこの注目イベントのレポートをお届けします!

▲Boom Boom Satellites
2004年5月15日土曜日。大阪で国内アーティストによるすっごいラインナップのオールナイト・イベントが行なわれた。会場は大阪ドームのスカイホール、球場をグルッと一周取り囲むこの場所は、土星の輪のよう形を想像していただければいいだろうか。よってイベント・タイトルは<SATURN(=土星)>。プロレスの興業なども行なわれる相当大きいこの会場でのこのイベントは、チケット・ソールドアウト! それにしてもフェスを抜きにすれば、これだけの日本人アーティスト・オンリー、しかもジャンルを問わないラインナップはいつ以来だろう。今年上半期、いや今年一年を通しても屈指の好企画に早くも興奮してくる。

▲こだま和文
開場は19時、ここから次の日の朝6時までイベントはノンストップ。"ライヴ・ステージ"と"DJステージ"の2つが真逆のポジションにセットされ、その両サイドの間にはチル・スペース、物販、そして飲食のテントなどが賑やかに営業している。

まずDJステージに行ってみると、2面の巨大スクリーン(映像は宇川直宏)を背にクラナカがDJイング。同じ頃、ライヴ・ステージではBoom Boom Satellitesが始めようとしていた。彼らが一音鳴らした瞬間に、観衆の期待感が爆発し、その後は怒濤の展開。まだ21時だというのにTシャツ汗ダク者もチラホラと。ライヴはブンブンからこだま和文へと流れ、場内は"動"から"静"へ。スチール写真のようなこだま和文の佇まいと、存在感の塊であるトランペットの音色によって、強く引き込まれる独特の空気にフロアは包まれた。こだま和文のトランペットから出てくる音は、お客さんと問答するかのようにコミュニケートし、辺りを満たしてしまったのだ。ここでも一音で、一気に。

▲DJ KENTARO
DJステージでは、'90年代の全てに最前線で走り続けたDJ KRUSHのプレイが終わり、続いてDJ KENTAROがステージへと上がってくる。そこで、2人が固く握手を交わす。年齢はひとまわり以上離れているだろう2人だが、アーティストとしての結びつきが強く感じられる姿だった。

さて、新世紀のニューヒーローであKENTAROは、"音楽に壁はない"をテーマにしているが、この日のプレイを聴けばそれがどういうことなのかがすぐに分かっただろう。そしてKENTAROがさらに上手くなっていることに一同仰天した。‥‥もう、ため息も出ません。

▲石野卓球
続いて、ドドドド怒濤!のプレイでベルトの穴2つ違うドデカさと、エクストリームなプレイで失神しそうになったのが石野卓球。もう圧巻っていうか、信じられないくらいパワフル。こんなに圧倒的なプレイをする人って、世界広しと言えども知らないんだな、と大将も卒倒するにちがいない。ハードなんだけど痛くなくて、こんもりと太くて、激踊れるサウンドだ。

▲ボアダムス
そして同じ時間のライヴが、こちらも完全にエクストリームな領域にいってしまっているボアダムス。EYEが発振器を振り回し、雄叫びをあげながら始まったそのライヴを観て、なんか泣けてきた。すごい光景(映像は大阪のVJデュオ、ベータランドが担当)で、すごいパフォーマンスに、うまくあてはまる言葉が、数日経った今でも見当たらないのだが、音とは、音楽とは、ライヴとは何なんだろう? そして僕達はそれらになぜ惹かれ続けるのだろう? という疑問に真摯に向かい合った結果、それが独自の姿で提示されていたという事実。そこに感動したのだと思う。3人のドラマーが円形にスタンバイし、テレパシーを聴覚化したような、想像力の中枢(コア)をすごく自然に提示されたような、エクスペリメンタルだけどド真ん中なミュージック、そんなすごいライヴだった。

▲田中フミヤ
この後もライヴ、DJが堰を切ったように目白押し。石野卓球の後、場内の熱狂や絶叫の空気を一瞬断ち切るかのように自分の音世界へと誘った田中フミヤ。この熱すぎず、クールすぎずな世界観と、その完成度は一度知ってしまうと他では満足できなくなる。本人はまったく誇示しないが圧倒的な本物ぶりだ。そしてこの会場でもこの人ならではのプレイでスタートしたMOODMAN。背伸びしてないのになぜか目立ってしまう、そんな才人のプレイもよく聴いてみれば新たな展開も感じさせてくれた。そしてDJステージ最後は、再びクラナカ。

一方、ライヴはメンバー全員が揃いの黒の上下に身を包んだBUFFALO DAUGHTERが登場。抜群の安定感と、それでいて振り幅のある曲展開、絶妙の音数で聴きどころに溢れたサウンドは、もはや完成形なのではないか…。THA BLUE HERBは、危うさと貫禄とが綱渡りするスリリングなステージングを見せ、最後はアラヤヴィジャナのライヴでフィニッシュ。

▲BUFFALO DAUGHTER
それにしても、この面白さはなんだったんだろう。MOODMANは「日本ってホント面白いよね」と言い、THA BLUE HERBのボス・ザ・MCは「フミヤさんも、クラッシュさんも、ブンブンもヨーロッパですごい戦いをしてきた人達だから」と言った。そう、この晩集まったアーティストは、道なき道を試行錯誤しながら、長い時間かけてここまできた人達のみだ。

この一晩で、フェスティバル・シーズンを前に、僕の心のスイッチは完全に押されてしまった。

取材・文●羽切 学

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