来日直前のアクアラング、ロンドンから最新ライヴレポが到着!

ツイート
12/17(金)、ロンドンのクイーン・エリザベス・ホールでアクアラングのコンサートが開かれた。テムズ川のほとりサウス・バンクに位置するこの会場は、クラシック・コンサートが多く開かれる場所。当日集まった観客の年齢層も、一般のロック/ポップ・グループとは違い10代から50代までと幅広く、全員着席のシート、グランド・ピアノが中心に設置されたステージ共々、さながらピアノ・リサイタルのような趣きである。

オープニング・アクトがパフォーマンスする前、七三に分けた髪型に眼鏡、ジャケットを着用し“飄々とした優等生”といった風貌のアクアラングがステージに登場。パイプ・オルガンを弾き、あたかも教会の礼拝にいるかのような厳かな雰囲気でショウをスタートさせた。この夜は、元オール・セインツのメラニー・ブラットなど4組のサポート・アクトが出演。アクアラングも時折、彼らのパフォーマンスにキーボードで参加している。

その後、休憩を挟んで行なわれたアクアラングのステージは、夜空を思わせるブルーのライトの中、まるで荒野を吹き荒れるような激しい風の音でスタート。コンサートというより演劇のオープニングのようである。この幻想的な雰囲気はコンサートの最中、一貫してかもし出されていた。ブルーやグリーン、赤のライティングの中で浮かび上がるようなステージを目に彼の美しい歌声を聴いていると、どこか別世界にいるような錯覚を覚える。それは深海や深い森の中といった、ちょっと寂しいような、しかし心落ち着く場所である。「strange and beautiful」「easier to lie」に代表される、美しくもの哀しいアクアラングの世界そのものを実体験できるのだ。

コールドプレイと比較されることの多いアクアラングだが、実際コンサートに足を運んでみると、彼らとは全く異質の音楽であることがわかる。そのパフォーマンスは、アクアラングが最も影響を受けたアーティストとして名を挙げているビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを継承したもの。オルゴールのような音を出すキーボード、チェルスタを使用した「strange and beautiful」、ピアノとウッド・ベースをフィーチャーした「tongue-tied」など、美しい楽曲の数々は観客を最後まで魅了する。彼が鬼才ウィルソンと並び、良質のポップ・ミュージックを聴かせてくれる数少ないアーティストの1人であることは間違いない。

ギター、ベース、ドラムが参加しているものの、あくまでもピアノを基調としたパフォーマンスは、ロック・コンサートで得られる高揚感とは違い、忙しい日々で忘れがちなゆったりとした時間を思い出させてくれる。それは、まるで別世界に住むアクアラングからの贈り物ともいえる美しい時だった。

そんなアクアラングが1/13、渋谷のクアトロでライブを行なう。この機会に是非とも“深海からの贈り物”を受け取って欲しい。

pix by Martin Holtkamp

Ako Suzuki, London
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス