<FRF'05>コールドプレイ、圧倒的な完成度の高さ

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もし“2005年のフジロックにおいて最大の注目株は?”と質問されたならば、それは文句なくコールドプレイだろう。最新アルバム『X&Y』が全英&全米チャート共に初登場から一ヶ月近く首位を独走し、全世界31ヶ国でNo.1を獲得。だが、これだけの快挙を成し遂げるほどのバンドでありながら、これまで日本ではコールドプレイへの評価が不当に低かった。それは彼らがデビューから5年間、いまだに単独ツアーを行なっていないことなど理由は様々。だが今回のフジロックは、そんなコールドプレイを日本ではじめて真正面から評価される絶好の機会となった。

さすがにここ日本でも『X&Y』の評判が良かっただけに、ライヴ前からグリーン・ステージはすし詰め状態。そんな中、コールドプレイの4人は颯爽とステージに登場。「Square 1」でスタートすると会場のヴォルテージはいきなり高まった。聴衆の視線の先はやはり今やロック界随一のセレブ、クリス・マーティン。とにかく彼のエンターテインナーとしての話術が光る。彼らの後に登場する、仲のいいフー・ファイターズのことを「Best OfYou」の歌真似で茶化したり、「Politiks」で“ザ・ミュージック、カイザー・チーフス、フー・ファイターズに捧げる”と即興でフジ初日の出演者の名を歌詞に盛り込み場を盛り上げたり。そして、本来“コンニチワ”と言うところを“サヨナラ”と言ってしまったことを終始しきりに詫びたり。このライヴMCとしての饒舌さも、特に海外ではウケる要因なのだろう。

だが、やはり特筆すべきは、ライヴ・パフォーマンスの自体の圧倒的な完成度の高さ。これに尽きる。「Speed Of Sound」などエレクトロニクスを使った浮遊感溢れるナンバーは、実験的で神々しくありながらも広大なスケールで観客を包み込み、「Yellow」などのじんわりとしたナンバーでは大合唱の嵐が起き、「White Shadows」のようなエッジの立ったギター・ナンバーもこなせ、さらには「Til Kingdom Come」のようなアコースティック・ナンバーではカントリー・フレイヴァーも表現可能。これだけの多彩さを最上質の楽曲水準と共に聴かされたら、さすがに納得しないわけにはいかないだろう。

感傷的なバラードをただ甘口に歌っただけの“叙情派“なるものと彼らが根本的に異なることは日本でもこれでようやく理解されたようだ。そして、これだけの音楽的資質がありながらも、求道的かつ実験的になり過ぎず、ステージ狭しと駆け回るクリスのエンターティナー性と共にリスナーを選ぶことなく説得力を持って聴かせられる。これも大きな強み。レディオヘッドやビヨークではなく、コールドプレイが文科系的なロックの世界の頂点に立っている理由はここにあるのだろう。そして「Clocks」「In My Place」と代表曲での大合唱の後はしっとりと「Fix You」で幕。

ちゃっかりと“今度は間違えないよ”と言って“サヨナラ”で締めくくるあたりにまたもやクリスの芸達者ぶりが。そして、ショウが終わってもアンコールの拍手は止まなかった。

取材・文●沢田太陽
Photo/Barks

Coldplay
2005/7/29 GREEN STAGE

SQUARE ONE
POLITIK
YELLOW
GOD PUT A SMILE
SPEED OF SOUND
WHITE SHADOWS
THE SCIENTIST
TILL KINGDOM COME
DON’T PANIC
CLOCKS
TALK
IN MY PLACE
FIX YOU

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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