<FRF'05>生っ粋のエンターテインナー、カイザー・チーフス

ポスト
ストロークス以降の“ニュー・ロック”の流れをやたらと90年代のブリット・ポップと結びつけたがる連中は、こと日本に実に多い(特にメディア)。僕は決してブリット・ポップ嫌いではない。しかし、過去へのノスタルジーを今のシーンに押し付ける(たとえば○○はストーン・ローゼズみたいだから良いとか、△△はプライマル・スクリームみたいだから良いとか)感覚には正直どうにも馴染めない。大体、今のシーンに対してそれは失礼とさえ思うし。そう考えると、このカイザー・チーフスあたりも「ブラーみたいだから……」という評価を真っ先に与えられても本来不思議ではないし、実際そういう人もいると思う。

しかし、ライヴそのものを見てみれば、この2005年屈指の人気を誇るUKニュー・カマーがブラーもどきではないことは明白だ。たしかに楽曲的にはブリット・ポップ期に顕著だったシャナナナ・ヴォーカルや、やや神経症的なねじれたキッチュなポップ・センスはステージでも目立ちはする。だが、ステージでのタイ&スーツのややヒュー・グラント気取りな立ち姿はむしろ“ポスト・フランツ“と呼んだ方が正しいだろう。

そして、それ以上にこのバンドを特徴づけているのは、彼らの“ライヴ・バンド”っぷり。ブリット・ポップ期のバンドは勢いイメージ先行型のポップ・バンドが多かった感が否めないが、カイザー・チーフスは安定した演奏力を背景に、聴衆とのコール&レスポンスを大事にする“現場勝負”の生っ粋のエンターテインナー。特に、ステージ下まで頻繁に降りて甘いマスクと声で聴衆を魅了するリッキーはスターとしての資質充分。彼らが意外と芸歴が長いという話も、生演奏重視のアメリカ市場でウケたという話もこれで充分納得だ。

そして、この数時間後、コールドプレイがグリーン・ステージで彼らの代表曲「Oh My God」の一節を披露。さぞやカイザーにとっては意義深いフジロックとなったことだろう。

取材・文●沢田太陽
Photo/Barks

カイザー・チーフス
2005/7/29 RED MARQUEE

1. Na Na Na Na Naa
2. Saturday Night
3. Everyday I Love You Less and Less
4. Born to be a dancer
5. I Predict A Riot
6. Caroline, Yes
7. Time Honoured Tradition
8. Modern Way
9. Oh My God
10. Take My Temperature


BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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