<SUMMER SONIC 2005>エコー&ザ・バニーメン、楽曲が持つ魔力に対する確信

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この日、デパーチャーとインターポール。いわゆるニュー・ウェイヴのリバイバル・ブームを担う若いバンド2組のライヴを見たけれど、やはり本家エコー&ザ・バニーメンには、まだまだ敵わないと痛感させられた。

もちろん、断続的にとは言え、25年のキャリアを誇るベテランと新人の彼らを比べることいそれほど意味があるとは思えない。しかし、それでも同じような世界観を持っているデパーチャーとインターポールのライヴに感じていた、ある種の物足りなさが、エコバニのライヴを見たとたん、吹き飛んでしまったことも事実だ。

それはエコバニをリアルタイムで聴いていた人間の思い入れだろうと言われれば、確かにそうかもしれない。しかし、彼ら──イアン・マカロック(Vo)とウィル・サージェント(G)の2人にリズム隊と2ndギタリスト──が楽曲が持つ魔力に対する確信とともに演奏した「レスキュー」「バック・オブ・ラヴ」「キリング・ムーン」「ザ・カッター」といった往年の名曲の魅力は、たとえ以前の彼らを知らなくても確実に伝わったはず。

いやぁ、イアンが「キリ~ング・ム~ン」と歌い、ウィルがそれに応えるようにジャカジャーンとギターをかき鳴らす「キリング・ムーン」のサビや、「バック・オブ・ラヴ」のイントロで聞かせるギターのカッティング、そして荘厳なストリングスの音色を思わせる「ザ・カッター」のイントロを聴いたときは、マジでシビれたね。4年ぶりの新作『サイベリア』がすこぶるいい出来だったので、彼らのライヴがいいだろうということは、なんとなく予想していたけれど、まさかここまでよかったとは!

肉づきがよくなったイアン・マカロックにはもはや、かつての妖しい美青年の面影はないけれど、その代わりに不良中年とでも言いたいふてぶてしさが加わった。サングラスを掛け、タバコ片手にドアーズのジム・モリソンを思わせる深い暗さを湛えた歌声を披露する姿は、それはそれでいい歳のとりかたをしているのでは。

後半は、自分達の楽曲に、そのドアーズの「ロードハウス・ブルース」やルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」といった曲のフレーズを織りこんで、自分達のルーツを示しつつ、それに対する敬意も表現する心憎い演出も披露。それはベテランならではの遊び心と言うよりは、自分達がやっている音楽に決して揺らがない自信があるからこそだろう。

その意味では、そんな自信をベースに新しいことには見向きもせず、ただひたすら自分達らしさだけを表現することに務めることで、新境地にたどりついた『サイベリア』の曲をもっと聴きたかった。ひょっとしたら、往年の名曲はサービス程度に押さえた新曲中心のラインナップでも、現在の彼らなら、今回と同じぐらい素晴らしいライヴになったんじゃないだろうか?

取材・文●山口智男
Photo●SUMMER SONIC / SUMIE

ECHO AND THE BUNNYMEN
2005/8/13 MOUNTAIN STAGE

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
SUMMER SONIC 2005特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010617
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