【Hotwire Music Business Column】英国著作権の保護期間、95年間への延長はなし

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英ファイナンシャル・タイムス誌の元編集長アンドリュー・ガワーズ氏は、英音楽業界から顔面パンチをくらうかもしれない。

ガワーズ氏は、レコーディング作品の著作権において、現行50年間の著作権保護期間を米国同様に延長するかどうかの必要性の有無を英国政府に提言する立場にあった。しかし、電機メーカーやデジタル・ビジネス企業側からの圧力と政治に屈したガワーズ氏は、保護期間を延長しないことを政府に薦めた。この法律が及ぼす影響は計り知れない。

1955年あたりを始まりとするロックンロール時代の音楽の権利が、公共の共有物になり、ビートルズの楽曲もその対象となる(1962年から50年間経過した2012年で期限切れ)。ビートルズやクリフ・リチャーズがこれ以上儲ける必要はないと感じる人たちも少なくないだろうが、過去のレコーディング作品の著作権から得る収入でリタイア生活を送るマイナーなアーティストたちにとっては死活問題で、近い将来に自分たちの作品で商売をしている企業から一銭ももらえない状況を横目に生きていくことになりかねない。

現在、好調な売り上げのあるEMI社は、ビートルズやその他のメジャー・アーティストの権利を失うことで収益が激減する。腑に落ちないのは、作詞・作曲の著作権は作者の死後70年間保護されており、演奏者よりも作詞家や作曲家らの著作権の方が遥かに優遇されている現状だ。

またアメリカの法律では著作権の保護期間が95年間のため、2013年になってもビートルズのレコーディング作品の権利はアメリカでは保護されているが、音楽を輸出し続けてきた歴史ある彼等の祖国イギリスでは保護されていないのだ。

イギリスの音楽業界協会と熟年ポップスターたちは著作権の保護期間を95年間へ延長することを訴えてきた。日本には独自の法律があるが、どちらかと言えばイギリスのケースに近い。

各国で法律が異なるため、今後も著作権については議論が続くだろう。インターネットの急速な進化に伴いグローバルな市場へのアクセスが可能になった今日。名前を挙げたらきりがないほど多くの企業が、アーティストに著作権料を支払わず、エンターテイメントを利用したビジネスができる法律にほくそ笑むだろう。


キース・カフーン(Hotwire
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