Dir en grey、Zepp Tokyo&大阪アムホール レポート!

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去る12月19日、Zepp Fukuokaでの公演をもって全国9都市、計16本に及ぶ『TOUR06 INWARD SCREAM』をひとまず終了させたDir en greyが、同26日、Zepp Tokyoにて同ツアーの追加公演を行なった。

開催発表から日数もなく、さらに当日の東京地方は記録的な大雨に見舞われていたにもかかわらず、場内は当然のごとく超満員。この追加公演実現によってようやく彼らの“今”と対峙する機会を得ることになった観客も何割かはいたはずだし、同時に、何公演にもわたって現在のこのバンドならではのスリリングさを味わってきたファンも少なからずいたはずだが、どちらにせよ確実なのは、Dir en greyが、今、本当の意味で“目を離すことのできない存在”だということだろう。

午後7時8分、BGMをオープニングSEに切り替えることもなく、5人は暗転すらしていないステージにさりげなく登場。熱狂を促すまでもなく場内の熱気は一気に高まりをみせる。最初に披露されたのは「THE FINAL」。それからアンコール最後の「CLEVER SLEAZOID」に至るまで、彼らは約100分間にわたり計21曲を演奏した。

前回、STUDIO COAST公演に関する原稿のなかでも触れたことだが、とにかく現在の彼らは過去最強の状態にある。バンド・サウンドの響き方がこれまでとは違う。単にヘヴィなのではなく、本当に内臓に響いてくるような強力さを持ち合わせている。しかも同時に、ただ整合感が増しているだけではない。いわば構築と破壊が時を同じくして行なわれているのだ。

そうした奇跡的ともいえるバランスで成立したライヴ・パフォーマンスだからこそ、説得力とスリルとを同時に味わい尽くすことができるのだろう。途中、ステージ先端に設置されたお立ち台を自らの手で破壊してしまった京についてもそれは同じ。充実したヴォーカル・パフォーマンスの裏付けがあるからこそ、尋常ではないテンションのシャウトが光ることになるのである。

2月7日に発売の決まったニュー・アルバム、『THE MARROW OF A BONE』に収録される「THE FATAL BELIEVER」、「THE DEEPER VILENESS」、「DISABLED COMPLEXES」といった楽曲たちを随所に織り交ぜながら展開されたこの夜のライヴは、5人のテンションといい、観衆の一体感といい、まさに2006年を締めくくるに相応しいものとなった。

が、彼らの1年はこのまま終わったわけではない。なんと12月28日には名古屋・ボトムライン、30日には大阪・アムホールという、現在の彼らには通常あり得ない小規模会場でのライヴが緊急敢行され、さらに大晦日には大阪・なんばハッチでの年越しライヴが行なわれている。

参考までに、彼らがDir en greyとしてアムホールのステージに立ったのは今回が初。しかし10年前、前身バンドでのラスト・ライヴが行なわれたのがこの会場だという逸話もある。また、12月31日のライヴは、まさに日付が新年へと変わる5分前に開演となり、終演後には鳴り止まない声援と拍手のなか、予定外の再アンコールが実現した。その“アンコール!”の声が鳴り響くなか、実は初公開の最新音源が場内に流されていた事実も付け加えておきたい。

そして同じ頃、アメリカで行なわれていたのがMTV音楽大賞の結果発表。彼らの「朔-saku-」のビデオ・クリップが、MTV2で放映されている人気番組『ヘッドバンガーズ・ボール』のなかで“2006年度ベスト・メタル・ビデオ”のトップ15作品に選ばれていたことをご存知の読者も少なくないはずだが、視聴者投票によって大賞が決まるこの賞において、彼らは堂々グランプリを獲得した。これはもちろん、日本のアーティストとしては史上初となる快挙。ちなみに米国では去る12月26日、彼らがこの夏に参加した『THE FAMILY VALUES TOUR 2006』の模様を収録したライヴ・アルバムとDVDが発売されたばかり(日本盤は3月と4月にそれぞれ東芝EMIより発売)。

そんな状況下での受賞でもあっただけに、同国でのDir en greyに対する認識がより確かなものになったことは想像に難くない。日本とほぼ同時に発売されることになるニュー・アルバムが、そして2月1日に幕を開ける全米ヘッドライナー・ツアーがどんな反応を集めることになるのかが、今から楽しみなところだ。

もちろん何よりも楽しみなのは『THE MARROW OF A BONE』の全貌だが、それについてはごく近い将来、この場でメンバーたち自身の口からたっぷりと語ってもらう予定である。とにかく今、本当にDir en greyからは目を離せない。もはや改めて言うまでもないはずではあるが。

文●増田勇一

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