2006年は音楽業界にとってインターネットの年だった。ダウンロードによる売上はまだ全体の10%にも満たないが、その割合は増えており、インターネットが音楽プロモーションとディストリビューションに与えている影響は非常に大きい。その中でも最も多大な影響力を持つ2つのサイトは、You TubeとMy Spaceだ。You Tubeは、ミュージック・ビデオ、映画クリップ、スポーツシーンの再生、悪ふざけの映像、政治家やセレブの素顔映像をはじめとする膨大な量の映像へのユーザーのアクセスを可能にした。

バンドの中には自分たちのビデオが他のメディアに先駆けてYou Tubeで流れたことで確実なファン層を獲得した者もおり、その最もいい例がオーケー・ゴーとマイ・ケミカル・ロマンスだろう。My Spaceは世界一人気のあるソーシャル・ネットワーキング・サイトに成長。現時点で登録している1億人以上の登録ユーザーのうち200万人以上がバンドやミュージシャンである。

同サイトでは各自のページで音楽とビデオのストリーミングが可能だ。著作権法違反という紛れもない事実はさておき、バンドやミュージシャンではない多くのユーザーも自分のお気に入りの曲やビデオを各自のページにアップしている。同様にYou Tubeでも、ミュージック・ビデオ、テレビや映画の映像の投稿を自由に行なうことができる。これも著作権違反なのは明らかで、日本のRIAJ(日本レコード協会)からは3万件の日本版のビデオ削除を要求されるなど、すでに法的な警告や訴訟が相次いでいる。

You TubeとMy Spaceの両サイトは現在では巨大な視聴者数と広告収入を得ており、著作権の持ち主と収入を分け合うことで法律に従順な市民になるべく努力をしている。今回のケースは、過去にNapsterを巡って起きた騒動と類似している。P2Pによるファイル交換の先駆け的存在だったNapsterは、絶大な人気を集めるサイトに成長した後にビジネス形態を合法化、あらゆる音楽コンテンツを提供するプロバイダーに転身した。

これは“許可を求めるより謝るが易し”流のビジネススタイルだと業界では指摘されている。その他にネットで勢力を持つミュージック・ブログは、1970年代、80年代の同人誌だったものの現代版で、音楽への情熱を持つ者同士が自分にとってエキサイティングな音楽について商業的な配慮一切抜きで語り合える場所となっている。

あくまでも理想論としてだが。PitchforkやMusic For Robotsなど知名度の高い音楽サイトは、現在では大量の広告とレーベル主体のコンテンツとタイアップを提供している。メジャー・レーベルも、売り上げを伸ばすためにウェブサイトで自社のアーティストを絶賛した社員に報酬を与えていることで知られており、プロモーションのためのブログは“フログ”と呼ばれている。その見た目ほど実際には純粋な動機で書かれたものでないにせよ、ブログが情熱的な音楽ファンにとって大切な情報源であることに変わりはなく、広告主に縛られているのが一目瞭然である雑誌の売り上げが落ち込むのに相反してブログの読者が増えているのが現実だ。

ネット社会での露出によって最も特筆すべき恩恵を受けたのは、アークティック・モンキーズ、アーケード・ファイア、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー、コールド・ウォー・キッズ、CSS、ディセンバーリスツ、デストロイヤー、ナールズ・バークレイ、グリズリー・ベアー、ザ・ホールド・ステディー、ホット・チップ、リリー・アレン、スフィヤン・スティーブンズ、テープス・エン・テープス、TV・オン・ザ・レディオだろう。

ここまで述べたサイトはビジネス界でも話題になっている。当時まだ利益が出ていなかったにも関わらず、2006年の10月にYou Tubeは16億5000万ドルでGoogleに、My Spaceは2005年の7月に5億8000万ドルでニュース・コープに買収されている。驚くべきことに、My Spaceの元役員はサイトの売買は適切なものではなく、正当な価格は200億ドルであるべきだったと訴えている。日本のMy Spaceはサイトを少しずつ日本語バージョンに更新しているが、財政的に順調で日本では地位を確立しているmixiと勝負していくことになる。マイクロソフト、アップル、アマゾン、MTV、ウォルマートやその他の有力企業もオンライン・ビジネスの拡大と携帯電話ビジネスに参入する機会をうかがっている。


キース・カフーン(Hotwire