名取香り、「シャワーを浴びる前に」インタビュー

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──まず、笑顔全開のビジュアルにびっくりです。これまでは、眼光の鋭いクールなイメージだったので……。

名取香り(以下名取):(笑)。今まで“笑わないでください”みたいなクールなイメージをスタッフが持っていたみたいで、そういうビジュアルになっていたんです。でも、今回のシングルを機にスタッフが代わり、“これからどういうイメージを打ち出すか?”って考えたんですよね。それで“もっと素顔を出していこう!”ということになったんですよ。

──素顔を出すっていってもねぇ。

名取:最初それを言われた時は“以前から素顔は出してますよ”と思った。でも、“いや、自分のダメなところ。人に見せたくない部分を出していこうじゃないか”と言われまして。最初は正直、戸惑いましたよ。何で出したくない部分まで公開しなくちゃならないんだって(笑)。

──ダメな部分を出してもいいと思えたきっかけは?

名取:スタッフに“恥ずかしい部分を出したら、もっとラクになれるよ”と言われたことが、ジワジワ効いてきたんですよね(笑)。今まで私って無意識のなかで“こういう女性であるべき”という理想像を描いて、“強くありたい。自分を信じ続けたい”と肩肘はっていたところがあったなって。

──カッコつけてたのかもね。

名取:私はいま25歳なんですけど。この年齢だからこそ表現できる思いや音楽ってあると思うんですよ。それを伝えていきたい。すると、よりリスナーと身近な関係を結べるんじゃないのかなって。

──つまり、今回の「シャワーを浴びる前に」は、25歳の飾りっけのない、リアルな名取さんを閉じ込めた曲なんですね。

名取:はい。でも改めて歌詞を見ると、私って何て残念なオンナなんだろうって、つくづく思いますね(笑)。ダメな部分がいっぱい。でも、これはまぎれもない私。どのフレーズにも私が存在しているなと思いました。

──ヴォーカルに関してのこだわりは?

名取:アレンジが、ドラムンベースを軸にストリングスやドラムといった楽器が乗る生命感のあるものなんで、そこに乗せる歌声は、まっさらな自分をぶつけるしかないと思ったんです。何かフィルターをかけて歌ったら、この曲がウソっぽく聴こえてしまいそうな気がしたので。

──一番大切に歌ったフレーズはありますか?

名取:最初は“キミに愛してほしい”と伝えるんですけど、どんどんダメな自分をさらけ出していくうちに“キミだけに愛されたい”と気持ちが変化していくんですよ。その最後の部分は、自分の本当の裸の気持ちを表現できているのかなって思います。

──この最後の「キミ」のフレーズは、曲を聴いているリスナーに向けて語りかけているような気がしました。

名取:それはうれしいですね。実はデビュー当時から、常に不特定多数の人に伝える音楽ではなく、一人一人に語りかけるような音楽を作りたいと思っていたんです。この曲では、その思いがうまく表現できたんでしょうか。

──また、メロディがキャッチーだし、カラオケで歌うとスッキリしそうですよね。

名取:普段、男勝りな女性に歌ってほしいですね。女性の持つかわいらしさを、表現できていると思うので。恥ずかしがらずに挑戦してみてください!きっと、これまで閉じ込めていた感情が解放されると思いますよ。

──名取さん自身、この曲と出会って変化した部分は?

名取:そうですね。今まではがむしゃらに楽しまなくては! と思っていたけど、この曲に出会ったことで気持ちに余裕ができた気がします。

──音楽的な変化は?

名取:いろいろあると思います。でも、まずこの曲のリスナーの反応を感じて、次のステップに進みたいかな。今はじっくりこの曲に向き合っていたいんです。

──ビデオクリップに関しても教えてください。こちらも、これまでにない映像世界ですね。

名取:撮影時には、照明がないわ、モニターもないわで戸惑いましたね。私は幼い頃からバレエをやっているから、人前に出るときは照明が必要!と思ってきたタイプだったので。でも、監督さんがこの曲をしっかり聴き込んで、そう判断してくださったことがわかったので、お任せしました。

──撮影の苦労話はありますか?

名取:朝9時に、新宿のオフィス街で、ウサギの耳を付けて立たされたことですかね。まわりにスタッフがいなくて、歩く人にすごく冷たい視線を投げつけられました(笑)。でも、その視線が次第に心地よくなってきたんですけど……。

──(笑)。カップリングの「ワガママ奴隷」は、そんな名取さんのMな感じがあらわれているのかなって。

名取:(笑)。まさかこのタイトルになるとは! 衝撃でしたね。でも私の友人には、納得されました。最初は、奴隷みたいに従順なんだけど、次第にワガママになっていくあたりが、と……。

──(笑)これはダブをベースにした、すごく妖艶なサウンドですね。歌声も、ルパン三世の登場人物、峰不二子みたいなセクシーさを放っています。

名取:実は、以前から峰不二子をイメージして歌っていたところはあるんです。この曲では、それが実現できているのかなぁ。

取材・文●松永尚久

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