東京事変、<SOCIETY OF THE CITIZENS vol.2>2日目レポート

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2006年に日比谷野外音楽堂で開催された東京事変主催のイベントが、2年ぶりに復活した。第2回目となる今回は規模も拡大し、2日間(8/23、24)に分け、2組ずつのゲストを迎えるという構成。まずは、グラストンベリーフェスティバルなど、海外のフェスでも熱狂的に受け入れられた“世界の” SOIL&“PIMP”SESSIONSが、アグレッシヴでワイルドなパフォーマンスを展開した。

テーマ→ソロまわし→テーマというジャズのオーソドックスなマナーを踏襲しつつも、6人の意欲的なミュージシャンが生み出す音色はパンキッシュで、ずしりとした重みがあり、荒々しく挑発的で、ミステリアスな色気があった。「カリソメ乙女」では、椎名林檎がSOILのTシャツ姿で登場し、配信シングルで共演した「DEATH JAZZ Ver.」を披露。マッシヴで破壊的なソロ回しも刺激に満ちあふれていて、最後の一音まで気が抜けないほどスリリングだった。

■写真で見る<SOCIETY OF THE CITIZENS vol.2>

そして、ステージの転換中に現れたのは、椎名林檎、前日に登場したSCOOBIE DOのヴォーカル・コヤマ、ライヴを終えたばかりのSOILからキーボードの丈青といった面々。3人でエレファントカシマシの「悲しみの果て」を演奏したが、椎名が「俺」という人称で歌うのが新鮮だった。

続く、ZAZEN BOYSは熱気でむんむんになった夜の空気を鋭いナイフで切り裂くようなパフォーマンスをみせた。言葉で表すと、鋭利なギターリフと、予測不能の動きをみせるベース、ストロングなマッスルビートを叩きだすドラムに、シンセを導入したエレクトリックファンク(四つ打ちもあります)……ということになるのだが、そこには、息をつかせぬギリギリの攻防と、常にはじまりと終わりを感じさせる、言葉にはできない美しくて激しいトーンがあった。動いていないのに汗がしたたり落ちてくるような、あの独特の緊張感をなんと言えばいいのだろう。抜き差しならない人間的な感情が湧き出てきた瞬間に、すぐさまクールなハンマーで叩きつける。それでいて、自己矛盾や混乱が再び生まれ出るのを待っているような音の集合。時には、チャルメラのフレーズが飛び出す茶目っ気もあり、演奏は熱くエモーショナルで、身を削るような痛さや混沌もある、とても音楽的な密度の高いステージだった。

エレキとシンセの2本弾きで幕を閉じたZAZENに続き、再びSCOOBIE DOがアコースティックセットで登場。前日も歌った「Privete Lover」と、向井秀徳とMASTURI STUDIOで作ったという80Sビートのダンスチューン「ROPPONGI」を披露した。各ミュージシャンのつながりを感じさせるサブコーナーを楽しみにしている人も多いはず。

最後に、イベントの主催者である東京事変のステージ。2日目のラインナップは前回と同様だったが、そもそも、このイベントのコンセプトは「ロックフェスに行っても、遠かったり、ステージがたくさんあって、見れないバンドがいるじゃないですか。だから、私のわがままで、ひとつのステージで好きなバンドを見たかったんです」(椎名林檎)というのが目的である。そういう意味では、彼女が同じステージに立ちたいと思うバンドとして、真っ先に思い浮かぶのが、今も昔も変わらずに、SOIL&“ PIMP”SESSIONSとZAZEN BOYSの2組なのだろう。

また、事変のセットリストは前日と同じだったが、彼らとしても、前回はドラムの刄田綴色が骨折のために欠席していたことに加え、楽曲の構成もソロ楽曲の「茎」や、ともさかりえに提供した「少女ロボット」を演奏していただけに、改めて、5人の音だけで作り上げた3rdアルバム『娯楽(バラエティ)』を経て完成した、東京事変にしか鳴らせないバンドサウンドを聴かせたいという気持ちがあったのかもしれない。この日の演奏は、リラックスしながらも一音一音に集中している様が伝わってきて、文句なしに素晴らしい演奏だった。

1曲目の「某都民」から観客は右に左に手を振り、合いの手や合唱で積極的に参加。通常のツアーよりもステージが近いこともあって、「ミラーボール」で満面の笑顔を見せた椎名も積極的に観客との距離を縮め、「OSCA」「キラーチューン」では会場全体が弾み、「閃光少女」では、自分がもう1回17歳に戻ってしまったかのような音楽への激しい希求と喜びを感じさせてくれた。ソロ時代からアンコールで歌うことが多かった「丸の内サディスティック」を歌ったのは、集まってくれたお客さんへのサービスだろう。

最後に、椎名が「できるかぎりやり続けたいと思います!」と宣言していたが、そのステージングや構成からもこのイベントに参加するミュージシャンとお客さん、その両方が楽しめるものにしようという意気込みが伝わってきただけに、今という瞬間を楽しく煌めかせてくれるイベントをできるだけ長く続けてもらいたいと思う。

取材・文●永堀アツオ
Photo by 三吉ツカサ(Tsukasa Miyoshi)

●東京事変、<SOCIETY OF THE CITIZENS vol.2>1日目レポート
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