ザ・ローリング・ストーンズ『シャイン・ア・ライト』を語る

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映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』が12月5日より全国ロードショーとなる。18台ものカメラを使って、ストーンズのメンバーに肉迫したライヴ・エンターテイメントが間もなく我々の目の前に登場するわけだが、ここでは、BARKSに届いた、映画『シャイン・ア・ライト』インタヴュー映像と合わせて、その内容をまとめたインタヴューをお届けしよう。

各メンバーとマーティン・スコセッシ監督、それぞれに向けられた質問が同じでも、それぞれに視点の違う回答が興味深い。ロックの歴史を凝縮させたかのような、ロック・パフォーマンスの真髄がここにある。

◆映画『シャイン・ア・ライト』インタヴュー映像
◆映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』予告編
◆ザ・ローリング・ストーンズ『シャイン・ア・ライト』を語る ~写真編~

<ミック・ジャガー・インタヴュー>

──なぜマーティン・スコセッシが映画を撮ることになったのでしょうか。

ミック・ジャガー:彼はこの映画でオーディエンスとバンドの親密な関係を描き出したかったんだ。バンドがステージに立つとき、どのような相互作用があり、どのような関係を築いているのかを。

──この映画が普通の映画と違うのは、どういう点だと思いますか?

ミック:この映画には、他の映画にはないものがたくさんある。そこには人と人との関わり合いがあるんだ。マーティンは人と人との親密な関係性を形成している、細かい要素を上手く捉えていると思う。

──ストーンズとスコセッシの相性についてはどう思いますか?

ミック:マーティン・スコセッシといったら、おそらくアメリカで最も才能のある名映画監督だ。それが、昔ながらのやり方を続けている、いいロックバンドと組み合わさったら、なかなか面白い2時間(映画)になるはずだろう。

──映画製作とアルバム制作に似ている点はありますか?

ミック:映画作りのプロセスは面白い。曲を書いたり、アルバムを作ったりすることとよく似ている。映画製作も、複数の人たちが力を合わせるチームワークだ。だから、マーティンと今回一緒に仕事をしてそのプロセスを見ているのは参考になったよ。彼はとてもチームを率いるのが上手い監督だからね。

──マーティン・スコセッシと仕事をしてみていかがでしたか?

ミック:彼に一度訊かれたんだ。「2曲目のときは、どの辺にいるんだい? ライティングやカメラを準備しておくから、ステージのどこに立つか教えてくれ」ってね。だから、「マーティン、そういうものじゃないんだよ」と説明した。「どこかに立って欲しいなら、そう指示してくれ。俺からは指示できない。俺には一曲ずつ振り付けがあるわけじゃない。俺は、ステージのライン3だとか、ここの四角の中だとかって立ち位置が決められているわけじゃない。バレエじゃないんだからさ」ってね。でも彼は、「僕には分からないな。それで、どの辺にいるんだい? 教えてくれ」としつこいんだ。「俺は分からないから教えてくれ」って言ったよ。結局、やっと彼も最後に僕自身がステージのどこにいるかは分からなくて、かなりの部分が即興なんだということを理解してくれたんだ。

──選曲での苦労したことなどを教えてください。

ミック:どの曲をやるか選ぶのはすごく難しかったよ。有名な曲ばかりやったって言われるかもしれないけど…、確かに有名な曲は一通りやった。だけど、そこまで知られていない曲も少し入れた。僕はそういう曲が入れたかったし、マーティンも意見をくれた。

──スコセッシの選曲について。

ミック:マーティンはすごく協力的だった。僕らが一度もやったことのない曲を提案してきたよ。

──「She Was Hot」という曲について教えてください。

ミック:「She Was Hot」は、僕らがほとんどやったことのない曲だった。一度もないかもしれない。だけど、僕らはそのままツアーでこれを演奏し続けた。リハーサルをしてみたら、みんな気に入ってね。何度もやった。ニューヨークのお客さんの前で(初めて)やったときは緊張したよ。

──デュエットをするということについてはいかがでしたか?

ミック:僕にとっては、あのデュエットはハイライトだった。なぜなら、僕にとっても新しい体験で、どうなるのか分からなかったから。実際にやってみてからのお楽しみだった。だから僕もすごく楽しみにしていたんだ。あれは大きなハイライトだったね。

──バディ・ガイについてはいかがでしたか?

ミック:僕らは、ゲスト・アーティストを招くことによって自分たちの基礎の部分を見せたかった。だから、ブルース・シンガーに参加してもらいたかったんだ。バディ・ガイとは以前にも一緒にやったことがある。だから、僕らのゲストとして参加してもらって、ショーのオープニングを飾ってもらった。バディ・ガイとはもう何年来の知り合いなのか…分からないほど、古い付き合いなんだ。だから、彼にブルースを披露してもらいたかった。僕らのルーツはブルースだからね。

──ジャック・ホワイトについてはいかがでしたか?

ミック:そして、ジャック・ホワイトもちょうどいいと思ったんだ。彼もブルースをルーツにしたロックバンドをやっているし、以前一緒にショーをやったこともあるから、みんな馴染みがあった。でも、彼とどの曲をやったらいいか決めるのには苦労したね。彼にはショーに出演してもらったことはあるけど、デュエットは初めてだったからさ。結局僕が直感的に選んだのがこの曲で、あまり激しいロックものではなくて、あえてカントリーをやることにした。以前、彼がカントリーのような音楽も結構好きだと言っていたのでね。

──クリスティーナ・アギレラについてはいかがでしたか?

ミック:クリスティーナを選んだのは、彼女が素晴らしい声の持ち主で、本当にロックできるからだ。彼女の声は美しいね。それに、彼女はとても優れたパフォーマーでもあると思う。

──映画に挿入されている過去の映像についてはどのように感じていますか?

ミック:過去の映像っていうのは、は楽しいね。特に古いやつが気に入っている。僕にしてみれば、ほとんどの映像は見たことがあるわけだが、編集の仕方によって見え方が変わる。昔の自分、それこそ40年前とかそれ以上前の自分が、自分のやりたいことや、将来のことについて、恥ずかしくも的を射た発言をしていたりするんだ。そこが、マーティンの強調したかったところだと思う。過去のインタビュー映像を見るといろんなことを言っているんだよね。“こんなことは、もうすぐやめるよ”とかね。ひとつの映像では、“俺たちはあと2年だけやると思う”と言ってて、もう一つでは“「サティスファクション」なんて30になったら歌えなくなる”なんて言ってるんだ。

──ライブ演奏についてはどのように考えていますか?

ミック:パフォーマンスをしたいという気持ちは、生まれ持っているものなんだ。だから、最も優れたパフォーマンスとは、自然なパフォーマンスだ。僕は生まれつきそれがあったから、エネルギーがどこから来るのかは分からない。ただ勝手に出て来るんだ(笑)。

<キース・リチャーズ・インタヴュー>

──マーティンのカメラワークについて。

キース:カメラにはほとんど気づかなかったね。俺にとっては、マーティンが撮りやすいようにと気を使わないようにすることが重要だった。逆にマーティンに合わせてしまったら、それは作り物の映画になる。マーティンが望んでいたのは、ショーをそのままのかたちで捉えることだった。だから、極力俺たちが映画を作っていることを意識しないようにすることが大事だった。マーティンはそれがとても上手いよ(笑)。

──ビーコン・シアターでの演奏についてはいかがでしたか?

キース:ビーコンは、最近の大型クラブよりも大きさは小さい。小さいスペースだが、れっきとした「劇場」だ。あのバルコニーや、音響には、何か特別なものがある。それが何なのかははっきりと言えないが、ちゃんと考慮された造りになっている。ビーコン・シアターや他の古い劇場のような場所のステージに立っていると、自分が今やっていることのために作られた場所であることが実感できる。当然、古い建物だから、エレクトリック・ギターが演奏されることは想定していなかったが、建物の構造自体が、何か温かくて居心地の良さを感じさせるんだ。

──映画として別の視点から見ることについてはどう考えていますか?

キース:実際にステージで演奏しているときには気づかないようなことも、また違った視点で見られることはとても不思議な感覚だ。そのときとは違った見え方、違った角度から見られる。(ステージでは)外側の方を見ていて、逆にみんなの視線は内側を向いている。すごく俺にとっては新鮮だったね。マーティンはいい瞬間を捉えていたよ。俺が走り回ってこっそりギターを弾いているところを映していたし、それを見てチャーリーが目配せするところも映っていた。実際にステージに立っているときは気づかないことばかりだ。細かいことまで考えている時間がないからさ。頷いたり、アイコンタクトで合図する程度だ。「最高のソロだな」とか、「ひでぇな」とか(笑)。そんな些細な動きまで撮られているとは思わなかったけど、マーティはそれをちゃんと撮っていたから、すごいと思ったよ!

──バディ・ガイについて教えてください。

キース:バディと演奏した経験は何度もあるから、そういう意味ではよく知っている。だけど、あの夜の彼は特に素晴らしかったね。本当にステージの主役になっていた。だから彼に俺のギターを渡したんだ。「これはあなたに渡しますよ。俺よりもあなたの方が使いこなせるから」って。パワーがとにかく…みなぎっていたね。

──ジャック・ホワイトについてはいかがでしたか?

キース:ジャックは最高だよ。いきなり人のステージに上がって行って、一曲だけ演奏するのは簡単なことじゃない。でも彼はそれが上手くできている。本当にあの曲が好きだってことが分かる。俺が作曲した曲だから、それは素直に嬉しいよ

──クリスティーナ・アギレラについてはいかがでしたか?

キース:スイートでシャイで生意気なレディだ(笑)。最高だよ。彼女はミックとデュエットをやった。想像してみろよ、いきなり、「カモン・ベイビー!」なんて呼ばれて一曲だけミック・ジャガーの隣で歌うなんてさ。

──マーティン・スコセッシ監督との仕事はいかがでしたか?

キース:楽しかったよ。何度も一緒に笑い合った。マーティはとても仕事のしやすい人だったし、彼はこの映画全体を、本当に好きだからこそ手がけてくれた。彼の編集能力はすごい。見事だよ。全てを捉えている。2回のショーを撮影するのも大変だが、それを後で編集する作業はさらに大変だ。でも、本当にマーティの魔法のような能力が発揮されるのは、そのときだと思う。

<ロニー・ウッド・インタヴュー>

──マーティン・スコセッシ監督の編集の仕方についてはどう思いますか?

ロニー:僕はとにかくマーティンの編集の仕方がすごく良かったと思う。過去の映像も少し織り交ぜながら、ユーモアもあって、陽気で、とてもプロフェッショナルだ。優れた撮影監督たちを集めてね。きっとこれまでの映画を通して見つけた人たちなんだろう。その人たちが各カメラを担当していた。

──選曲とセットリストについてはいかがでしたか?

ロニー:やはり最大の魅力は音楽にあると思う。そしてサプライズのあるセットリストだった。僕たち全員にとってもかなりの冒険だった。誰もどうなるか分からなかった上に、チャンス(撮影)は二度しかなかったからね。

──ビーコン・シアターについてはどう思いましたか?

ロニー:会場が小さければ小さいほど、バンドにとってはやりやすいものだと思う。実際のビーコン・シアターの雰囲気は、バンドに不思議な…何とも口では説明しにくい一体感をもたらしてくれるんだ。映画全体にも、とても親密なフィーリングが収められていると思う。

──バディ・ガイについてはいかがでしたか?

ロニー:彼の内に秘めた若さは、いつも僕を驚かせてくれる。マディ・ウォーターズの前では、彼はいつも「若造」だったし、いつも若手扱いされていた。だけど、彼はいつだって自分の表現を持っていたし、強い存在感を持っていた。ギターのプレイの仕方にしても、彼の歌声にしてもね。そこが、いつまでたっても変わらない。

──ジャック・ホワイトについてはいかがでしたか?

ロニー:とても才能のある青年だと思うね。もっと彼と一緒に何かやってみたい。実際にそういう話はしているし、コラボレーションする機会があるかもしれない。いずれにせよ、彼があの場に出演してくれて嬉しかったし、僕らはみんな彼をリスペクトしている。彼の方も。お互いにね。

──クリスティーナ・アギレラについてはいかがでしたか?

ロニー:ステージに美人を招くことはいつだって大歓迎だ(笑)。彼女はとても素敵だった。ステージ映えするし、歌声もいいね。

──マーティン・スコセッシ監督との仕事についてはいかがでしたか?

ロニー:学校の売店に入った小学生みたいだったよ。「よし!やってやるぞ」という感じで、彼自身がとても楽しみにしていたのが分かった。『ディパーテッド』は、ストーンズ映画を作ることを念頭に作ったんじゃないかな(?)。

──この映画の感想を教えてください。

ロニー:かけがえのない体験だったよ。これが実現できて本当に良かったし、マーティンと一緒に仕事が出来たことはとても光栄だ。

<チャーリー・ワッツ・インタヴュー>

──ローリング・ストーンズの活動期間についてどう思いますか?

チャーリー:私はいつも、ローリング・ストーンズは続いても1年か2年だと思っていた。それまで私がいたバンドは、だいたいそれくらいしか保たなかったからだ。18歳や19歳の頃の2年間と言ったら、かなり長い時間だからね。

──バディ・ガイについてはいかがでしたか?

チャーリー:私たちは何度かバディと共演したことがあるけれど、あの夜のバディは特に素晴らしかった。驚いたよ。髪の毛が逆立つほどの迫力だった。それが映画でも伝わっているんじゃないかな。少なくとも私が見たときはそう思った。バディはこの映画のスターの一人だ。彼とクリスティーナもね。彼女も素晴らしかったと思う。

──ローリング・ストーンズについては?

チャーリー:私たちみんなが集まると、何かが起こるんだ。それが何なのかは私にも分からない。そういう、何か不思議な現象の一つだね。

──この映画の感想を教えてください?

チャーリー:私にとってはとても面白かった。最初は、自分の映像を見たり、演奏を聴いたりするなんて耐えられないから2曲分だけ見たら帰ろうと思っていたのに、最後まで見てしまった。普通は、すぐに逃げてしまうんだ。でも、映画としての質の高さに、嬉しい驚きを感じた。当然質は高いだろうから驚くことではなかったのかもしれないが、これまでの経験からいうと、さんざん準備していろいろやったわりには、出来上がってみたものはつまらなくて見るに耐えなかったミック、キース、ミック、キース、と順番に見せて行くだけでね。でも、この映画はとても興味深い構成になっていた。
──「She Was Hot」という曲については?

チャーリー:ミックは「She Was Hot」を歌うところでバーナードとリサのところに行くんだが、そこで彼が踊り出すのをリサが見つめるシーンが、すごくいい。

──最高の瞬間とは?

チャーリー:ほんの一瞬の出来事だからね、それを捉えないと、もう二度と捉えられない。

<マーティン・スコセッシ監督インタヴュー>

──1969年にローリング・ストーンズを見たことについて教えてください。

スコセッシ:彼らを初めて生で見たのはマジソン・スクエア・ガーデンだったと思う。とは言っても、彼らのシルエットが小さく遠くに見えただけだ。すごく上の方の離れた席だったんでね。1969年の11月だったと思う。

──ストーンズの曲があなたの映画に与えた影響について教えてください。

スコセッシ:ストーンズは、私が作品のフィーリングや印象をイメージするときに、多いに参考にさせてもらった。実際に数々の作品に反映されている。『ミーン・ストリート』では「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」がテーマ曲としてとても重要だった。

──この映画を作った理由は?

スコセッシ:彼らのパフォーマンスについての映画を作りたかった。ローリング・ストーンズの歴史を語る映画ではなくてね。それを作ろうとしたら4~5時間、いや6時間かそれ以上の長さになるだろう。製作にも4~5年はかかるだろうね(笑)。それに、ロックンロール史上、最もドキュメント(記録)されているバンドでもある。だから、製作が始まってからは、この映画を製作することの大変さをその中に入れることにした。上手くいかなかったことを、全てメイキングとして映画に入れたんだ。

──映画を作る前に彼らのライブを見たことについて。

スコセッシ:彼らのツアーは何度か見ている。たまたま見られるタイミングがあったときは、ショーに出かける。そして、彼らを見るたびに…それがすごく後ろの方の席でも、前の方の席に呼んでもらったときでも、とにかくこれをフィルムに収めたいという想いに駆られていたんだ。

──音楽とパフォーマンスの関係について。

スコセッシ:音楽と、そのパフォーマンスが最も重要だ。映画のユーモアの部分は…… どの部分かは具体的に言わないけれど、映画を見た人には分かるようになっているはずだ…… 僕らはなるべく全て準備万端で臨みたいのに、準備しておけない部分も多かったので、実際はどうなるのか正直分からなかったというところだ(笑)。

──映画を見た人たちの反応はいかがでしたか?

スコセッシ:私が聞いたのは、「彼らと一緒にステージにいるみたいだった」という感想だ。なぜなら、彼らのパフォーマンスが一番良く見えるポジションから見ているから。そして、ジャガーが、キース・リチャーズが、ロニーが、チャーリーが、オーディエンスを手玉に取って、そして別の場所に連れて行く様が見えるからだ。

──この映画の製作について。

スコセッシ:最も面白かったのは、当事者たちでさえもが、どうなるか分からないまま、極限まで努力したこと。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が一曲目だと分かったのは、実際にやる1時間とか1時間半前だったが、それでもそのための準備ができていた。曲のタイトルを言われれば、すぐにポジションが分かるほどだったんだ。

──挿入されている過去の映像とのバランスについて教えてください。

スコセッシ:決め手は、ちょうどいいバランスで見せること。過去の映像と、現在の映像を音楽を中心にね。もっと過去の映像を入れるべきだったという意見もあるが、それでは彼らの(歴史の)ドキュメンタリーになってしまって、曲やパフォーマンスの魅力がどこかへ行ってしまう。

──この映画の続編の可能性についてはいかがでしょうか。

スコセッシ:シリーズ40まで作れるよ(笑)。なぜなら毎回違うからだ。パフォーマンスはその都度違う。カメラのポジションもそのときによって違うだろうし、ミックがどんな動きをするか、キースがどんな登場の仕方をするかなんて誰も分からない。ステージを走って横切るかもしれないし、ロンが前に飛び出して来るかもしれない。チャーリーのドラムも。毎回彼らは違うことをやると思うからね。私たちは、そのほんの一回分を記録したに過ぎないんだ。
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