ガチンコ徹底比較、メキシコ製ROAD WORN vs ジョン・イングリッシュ・レリック

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▲新たに登場したROAD WORNシリーズ。左が'60s Stratocaster、右が'50s StratocasterFender。共に税抜15万円。破格の値段で登場だ。
1月16日、フェンダーから登場したROAD WORNシリーズをニュースで紹介した時点では、平静を装っていたが、その実、内心穏やかではなかった。

そりゃそうだ、ストラトで言えばカスタムショップのレリックは安くても市場価格は30万円台、マスタービルドに至っては鮨屋のようなもので、モノによって値段が違う。数十万円の後半台なんかざらである。要は、レリックのフェンダーなんて、清水から飛び降りて骨折のひとつやふたつを覚悟しないととても入手できる価格の商品ではなかったのだ。

それがなんだ、定価で税抜15万円だぁ? あんだそりゃ。ありえない。

…ということで、いても立ってもいられず、ROAD WORN '60s Stratocasterと'50s Stratocasterを入手、実機を手にし既存のRelicストラトと比較してみた。お相手はマスタービルドのレリック・ストラト。惜しくも2007年にこの世を去ったジョン・イングリッシュ製作の61年モデルだ。レリック処理と言えば、まずは偉大なるパイオニア、ジョン・イングリッシュの作品を雛形にするのが筋というものだろう?

◆ガチンコ徹底比較、メキシコ製ROAD WORN vs ジョン・イングリッシュ・レリック ~写真編~

▲左がROAD WORN '60s Stratocaster、右がFender USA ジョン・イングリッシュ作61ストラト。ざっと左が15万円、右が60万円強。果たして価格に見合う違いはあるのか?
徹底検証と銘打ち、同じ60年代リイシュー2台を比較し始めたものの、次第に私のトーンは落ち、なんだかテンションが上がらなくなった。“最高品質を誇るマスタービルダーのRelicストラトとガチ比較しては、あまりにROAD WORNがかわいそうだよねー”などという、余裕の親心が一瞬で吹き飛んでしまったのだ。

エレキギターには個体差が伴うことを念頭に置きながらも、入手したROAD WORNが2本とも非常に鳴ることに驚きを隠せない。ボディ全体が気持ちよく振動し、左手にもネックからの振動が心地よく伝わってくる。レスポンスも鋭敏で、なでるようなピッキングからガシガシと殴りつけるようなカッティングまで、ストレスなく追従してくる弾き心地のそれは、とても10万円台のストラトとは思えない。

大き目のR指板にジムダンロップの#6105フレットというスペックによる弾きやすさは、むしろROAD WORNのほうが上で、ドライブサウンドを常用するのであれば出力の高いTEX-MEX PUもかえってありがたい。コストパフォーマンスで考えるならばROAD WORNの圧勝、ジョン・イングリッシュのまさかの敗退である。

▲ジョン・イングリッシュ作ストラトのボディ。細かくひび割れのように見えるのが、ラッカーが経年変化によりひび割れてしまった状態を再現したもの。
▲かなりざっくりした剥がれ方。これはアメリカンならぬメキシカンな感覚か?
もちろん、Fender USAのレリックとの違いはいくつかある。まず、ラッカーのクラッキング…いわゆるウェザーチェック処理はなされていない。あのヒビ割れにこそ萌え要素を感じるのだという貴兄にとっては、ROAD WORNは淡白だ。またメイプル指板のWORNフィニッシュは、かなり大味である。もしかしてフレットを打つ前にドバッと剥いじゃいましたか?と思ってしまうほど広域にわたって大胆に塗装が剥がされている。コストに跳ね返らない範囲で、もう少し穏便にお願いしたいところだ。

しかしながら厳しいコメントはこれくらいで、他は本当によく出来ている。ボディのWORNフィニッシュも概ねいい感じであるし、ネック裏の程よい塗装はがれも操作性を向上させてくれている。'50sのVシェイプも'60sのCシェイプも非常にリアルで心地よく、弾き心地はUSフェンダーと比べ全く劣るところが無い。ピックガードの黄ばみも非常にリアルだ。使い込むことによって生まれる使用感は決して均一ではないわけで、ピックガード周辺に寄った黄ばみなどは、通常のレリックでもここまで表現されてはいないもの。ブリッジなどのくすみ具合はサビ一歩手前の塩梅で、絶妙に素晴らしい仕上がりと言える。'60sのポジションマークもクレイドットぽさがステキだ。

メイプル指板の持つサウンドの滑らかさと艶やかさ、ローズ指板の若干暗めのトーンながら音の輪郭のざらつき具合など、指板材によるサウンドの違いはROAD WORNにも見事に現れており、ルックスや弾き心地もさることながら、サウンド特性がきっちり現れている基本性能の高さは見逃さないで欲しいところだ。

余談だが、細かいところは拡大写真を見ていただくとして、手にした2本のROAD WORNは、どう見ても1ピースのボディに見える。
▲上がデカール仕様のUSA。下のROAD WORNはプリントだ。
ヴィンテージリイシューにしても70年代アッシュにしても、見事な貼り合わせを見せる2ピース個体はこれまでもたくさん見てきたが、これはどう見ても1ピースだ。カタログ上は1ピースを保証していないし個体によってまちまちなのかもしれないが、なかなかどうして侮れないところだ。

最後にひとつ、どうでもいいことだが、ROAD WORNのヘッドロゴはプリントである。ご存知のように通常のUSAフェンダーロゴはデカールなので、正面から見て見分けるための唯一の違いがここである。

付属はギグバッグなので、運搬が激しいプレイヤーであればハードケースを別途入手したいところだが、プレイヤーによってもコレクターにとっても、ROAD WORNはフェンダーの歴史に名を残すエポックメイキングなシリーズとして、衝撃のデビューを遂げた。

要するに、迷う必要も何かを勘ぐる必要もない。レリック好きのギター弾きであるならば、ROAD WORNは間違いなく“買い”だ。間違いない。なお、試奏したことで実感できた事象は、まだまだ書ききれぬほどにある。素朴な疑問や質問があればこのページに追記の形でお答えしていきたいとも思う。ROAD WORNの素晴らしさが少しでも伝われば本望だ。ページ最下部「ご意見ボタン」よりお気軽にコンタクトを。

◆フェンダーから廉価版レリック登場、その名もROAD WORN
◆ROAD WORNオフィシャルサイト
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