無期限活動休止を発表したCHAGE and ASKA。今後はお互いソロ活動を活発化させていくふたりだが、早速、ASKAが活動休止後初となるシングル「あなたが泣くことはない」をリリースした。

このシングル、彼自身ソロ活動初の書き下ろしによる日本映画主題歌と、さらに今回の無期限活動休止に関するメッセージを盛り込んだ楽曲が収録されている注目の1枚だ。ここではタイトル曲「あなたが泣くことはない」について取り上げよう。

◆「あなたが泣くことはない」のCD情報

静かなピアノの和音から始まる「あなたが泣くことはない」は、木村祐一長編初監督作品『ニセ札』の主題歌。木村監督とASKAが話し合い、ASKAなりの解釈で物語を歌の世界に落とし込んだ作品だ。曲は、珍しくASKAのヴォーカルに強めの加工(初期反射音を強めにかけたショートディレイ)がされている一方で、ワンコーラス目のサビからは、ASKAらしいコードの使い方やメロディー進行、歌いまわし、ブレイクの入れ方が盛り込まれたロック調のミディアムバラードとなっている。

ASKAの楽曲でいうと、「SAILOR MAN」(CHAGE and ASKA 1987年のシングル)のような、ASKAが好みそうな複雑な構成となっているこの楽曲をアレンジしたのは、マネージャーからディレクター、そしてCHAGE and ASKA2007年リリースのアルバム『DOUBLE』ではアレンジャーとしてもクレジットされた村田努と、レコーディングやライヴでマニュピレーターとしてサポートしてきた小笠原学のふたり。ASKAの楽曲制作、ライヴパフォーマンスを最も間近で見てきたふたりだからこそ、ASKAの音の世界を的確にアレンジできたといっても過言ではないだろう。

ところで、「あなたが泣くことはない」の歌詞については、今回、あえて分析を見合わせる。別れの歌のようにも受け取れるこの曲。もちろん恋人同士の別れだったり、親子、仲間、もしくは生活していた場所や思い出との別れだったりと、何との別れなのかについてはASKAらしく “のりしろ” がかなり広めに設けられており、リスナーによってどのようにも受け取れるようになっている。さらに、既述のとおり、この楽曲は戦後最大のニセ札事件をモチーフにして作られた映画『ニセ札』の主題歌。ゆえに、歌詞と映像がリンクするところが多分にあると思われる。映像とともに聴いて、初めて気づかされる部分も出てくるはずだ。

ただ、ひとつ。<信じるものがあれば 痛みは耐えられる>というフレーズには、この曲を聴いた誰もが同じ感覚で受け取れる(そしてそれはASKAもまた同じ気持ちで綴ったであろう)想いが込められている点は特筆しておきたい。

今年アーティスト活動30周年を迎えるASKA。「あなたが泣くことはない」の詞、曲は、彼だからこそ成し得ることのできる複雑さを持ち合わせつつ、それを見事に壮大な1つの作品として組み上げている。

いわば、“30年目の複雑”。そんな表現がハマりそうな1曲だ。

◆iTunes Store ASKA(※iTunesが開きます)
◆CHAGE and ASKA オフィシャルサイト