増田勇一の『今月のヘヴィロテ(5月篇)』
今月も、5月に発売された新譜のなかから、四六時中聴きまくっていた作品たちを紹介したい。こうして羅列してみると、かなり充実度の高い月だったことに改めて気付かされる。
●マニック・ストリート・プリーチャーズ『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』
●グリーン・デイ『21世紀のブレイクダウン』
●マリリン・マンソン『ザ・ハイ・エンド・オブ・ロウ』
●ボブ・ディラン『トゥゲザー・スルー・ライフ』
●アモルフィス『スカイフォージャー』
●ブッチ・ウォーカー『シカモア・メドウズ』
●ダヴズ『錆ついた王国』
●ティンテッド・ウィンドウズ『ティンテッド・ウィンドウズ』
●the studs『alansmithee』
●アイアン・メイデン『フライト666 ジ・オリジナル・サウンドトラック』
以前にも紹介したマニックスとブッチ・ウォーカーの作品については、先月アップした双方の原稿をご参照いただきたい。後者については2008年のうちにアメリカでリリースされていた作品なので、もはやあまり“新作”という感じがしないのだが、逆に言えば、すでに愛着のある1枚ということでもある。マニックスについては、この新作リリースを発端に、僕自身のなかで彼らの旧譜に対する再評価熱が高まっていたりもする。『ジェネレーション・テロリスト』とか『ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル』を、2009年にこんな頻度で聴くことになるとは、正直、思ってもみなかった。ちなみに後者については発売当時にライナーノーツを書かせていただいたのだが、今回リリースされた紙ジャケ仕様のものでは解説原稿自体も刷新されていて、残念ながら僕の古い原稿は消えてしまった。正直、ちょっと寂しい気分だったりもするのだが、この紙ジャケ・シリーズは本当に充実しているので、すでに過去の作品群が手元に揃っている人たちも、是非、この機会にチェックしてみて欲しい。
自分的には珍しいくらい気に入ってしまったのが、グリーン・デイとマリリン・マンソン、そしてボブ・ディラン。この3アーティストについて僕のなかで共通しているのは「一度も嫌いだったことはないが、すごく大好きだったこともない」ということ。グリーン・デイについては、もはや安直にポップ・パンク云々という形容はしたくないし、この新作は本当に“歴史に残る”べきものではないかと思う。トゥイギー・ラミレズとの“復縁”が話題のマンソンの作品も、今ひとつパンチに欠けていたここ数作の存在を良い意味で忘れさせてくれるし、基本的にダーク一辺倒ではあるけども、印象的な楽曲が随所に散りばめられている。
ディランについては、どうしてもあの声と歌い方が少年期には好きになれなかったのだが、年齢を重ねれば重ねるほどに惹かれていく感じ。正直、この人物について熱く語るほどの思い入れは僕にはないが、何年か後にそんな日が来ないともかぎらない。若い音楽ファンには、過去の名盤ではなく、是非この最新作を入口としながらディランに触れてみて欲しい。もちろんそれはグリーン・デイやマンソンについても同じ。変な話、歴史を踏まえながらとらえられた現在というのは、どこか不思議に歪んでいることがある。逆に、過去を知らないからこそ見えるもの、というのもあるはずなのだ。若い音楽ファンにはいつも、過剰な予備知識に邪魔されずに最新作と向き合えるという特権が備わっている。それに、「××歳のときに、誰々の当時の作品をリアル・タイムで聴いた」といった記憶というのは、案外長いこと残るものだし、その人の“その後の価値観”を左右することもある。僕のようなおっさんには、それが羨ましくもあるのだが。
バニー・カルロスとジェイムズ・イハが同じ写真に収まっているだけで惹かれてしまうティンテッド・ウィンドウズの作品では、あのハンソン3兄弟のテイラー・ハンソンの成熟ぶりに驚かされた。パワー・ポップを愛する人たちには必聴の1枚だ。アモルフィスは、すべての特徴的な要素が深化を遂げたという印象で、もはや“格”が違うという感じ。前々作、前作もよく聴いたが、それどころではない頻度でこれからも聴くことになるだろう。
ダヴズについては正直あまり期待していなかったのだけども、マニックスのオフィシャル・サイトを覗いてみたときに、彼らの“最近のお気に入り”としてこの作品が挙げられていて、それを切っ掛けに聴いてみた次第。こうしてフェイヴァリット・バンドがフェイヴァリット・バンドを増やしてくれるというのは、まさにファン冥利に尽きるところ。逆に残念だったのは、まさに本領発揮というか自我確立を果たしたというべきthe studsが、この夏のライヴをもって活動休止することを宣言した事実。彼らの新作、『alansmithee』は、このバンドを特定のジャンルのなかでのみ捉えていた人、ある種の色眼鏡で見ていた人たちにこそ触れてみて欲しい力作だ。実際に耳にすれば、多くの人が「このバンドを甘く見ていた」と感じることになるんじゃないだろうか。
そして今月、自分でも意外なくらいよく聴いたのがアイアン・メイデン。これは同時発売された同名のDVDのサウンドトラックという成り立ちをしている作品で、まずは何よりもそのDVD自体が必見なのだが、一度その映像を観てしまうと、この2枚組CDは単なるライヴ・アルバム以上の興奮をもたらしてくれるようになる。音を聴いているだけで、世界各国のオーディエンスの熱狂するさま(特に南米は強烈!)が頭のなかに浮かんでくるのだ。正直なところ、いくつかの特例を除いては“何度も繰り返し聴くほど好きなライヴ・アルバム”というのは僕にはあまりないのだが、この調子だとこの作品は、そうした数少ない存在のひとつになりそうだ。
ところで僕はこの原稿を、6月5日の早朝、軽い時差ボケを味わいながらドイツのニュールンベルクで書いている。改めて説明するまでもないはずだが、今日、この都市で開催される『ROCK IM PARK』への出演を皮切りに、DIR EN GREYの欧州ツアーが幕を開けることになる。こちらの経過についても、環境と状況が許すかぎり、あれこれご報告していくつもりなのでお楽しみに。
増田勇一
●マニック・ストリート・プリーチャーズ『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』
●グリーン・デイ『21世紀のブレイクダウン』
●マリリン・マンソン『ザ・ハイ・エンド・オブ・ロウ』
●ボブ・ディラン『トゥゲザー・スルー・ライフ』
●アモルフィス『スカイフォージャー』
●ブッチ・ウォーカー『シカモア・メドウズ』
●ダヴズ『錆ついた王国』
●ティンテッド・ウィンドウズ『ティンテッド・ウィンドウズ』
●the studs『alansmithee』
●アイアン・メイデン『フライト666 ジ・オリジナル・サウンドトラック』
以前にも紹介したマニックスとブッチ・ウォーカーの作品については、先月アップした双方の原稿をご参照いただきたい。後者については2008年のうちにアメリカでリリースされていた作品なので、もはやあまり“新作”という感じがしないのだが、逆に言えば、すでに愛着のある1枚ということでもある。マニックスについては、この新作リリースを発端に、僕自身のなかで彼らの旧譜に対する再評価熱が高まっていたりもする。『ジェネレーション・テロリスト』とか『ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル』を、2009年にこんな頻度で聴くことになるとは、正直、思ってもみなかった。ちなみに後者については発売当時にライナーノーツを書かせていただいたのだが、今回リリースされた紙ジャケ仕様のものでは解説原稿自体も刷新されていて、残念ながら僕の古い原稿は消えてしまった。正直、ちょっと寂しい気分だったりもするのだが、この紙ジャケ・シリーズは本当に充実しているので、すでに過去の作品群が手元に揃っている人たちも、是非、この機会にチェックしてみて欲しい。
自分的には珍しいくらい気に入ってしまったのが、グリーン・デイとマリリン・マンソン、そしてボブ・ディラン。この3アーティストについて僕のなかで共通しているのは「一度も嫌いだったことはないが、すごく大好きだったこともない」ということ。グリーン・デイについては、もはや安直にポップ・パンク云々という形容はしたくないし、この新作は本当に“歴史に残る”べきものではないかと思う。トゥイギー・ラミレズとの“復縁”が話題のマンソンの作品も、今ひとつパンチに欠けていたここ数作の存在を良い意味で忘れさせてくれるし、基本的にダーク一辺倒ではあるけども、印象的な楽曲が随所に散りばめられている。
ディランについては、どうしてもあの声と歌い方が少年期には好きになれなかったのだが、年齢を重ねれば重ねるほどに惹かれていく感じ。正直、この人物について熱く語るほどの思い入れは僕にはないが、何年か後にそんな日が来ないともかぎらない。若い音楽ファンには、過去の名盤ではなく、是非この最新作を入口としながらディランに触れてみて欲しい。もちろんそれはグリーン・デイやマンソンについても同じ。変な話、歴史を踏まえながらとらえられた現在というのは、どこか不思議に歪んでいることがある。逆に、過去を知らないからこそ見えるもの、というのもあるはずなのだ。若い音楽ファンにはいつも、過剰な予備知識に邪魔されずに最新作と向き合えるという特権が備わっている。それに、「××歳のときに、誰々の当時の作品をリアル・タイムで聴いた」といった記憶というのは、案外長いこと残るものだし、その人の“その後の価値観”を左右することもある。僕のようなおっさんには、それが羨ましくもあるのだが。
バニー・カルロスとジェイムズ・イハが同じ写真に収まっているだけで惹かれてしまうティンテッド・ウィンドウズの作品では、あのハンソン3兄弟のテイラー・ハンソンの成熟ぶりに驚かされた。パワー・ポップを愛する人たちには必聴の1枚だ。アモルフィスは、すべての特徴的な要素が深化を遂げたという印象で、もはや“格”が違うという感じ。前々作、前作もよく聴いたが、それどころではない頻度でこれからも聴くことになるだろう。
ダヴズについては正直あまり期待していなかったのだけども、マニックスのオフィシャル・サイトを覗いてみたときに、彼らの“最近のお気に入り”としてこの作品が挙げられていて、それを切っ掛けに聴いてみた次第。こうしてフェイヴァリット・バンドがフェイヴァリット・バンドを増やしてくれるというのは、まさにファン冥利に尽きるところ。逆に残念だったのは、まさに本領発揮というか自我確立を果たしたというべきthe studsが、この夏のライヴをもって活動休止することを宣言した事実。彼らの新作、『alansmithee』は、このバンドを特定のジャンルのなかでのみ捉えていた人、ある種の色眼鏡で見ていた人たちにこそ触れてみて欲しい力作だ。実際に耳にすれば、多くの人が「このバンドを甘く見ていた」と感じることになるんじゃないだろうか。
そして今月、自分でも意外なくらいよく聴いたのがアイアン・メイデン。これは同時発売された同名のDVDのサウンドトラックという成り立ちをしている作品で、まずは何よりもそのDVD自体が必見なのだが、一度その映像を観てしまうと、この2枚組CDは単なるライヴ・アルバム以上の興奮をもたらしてくれるようになる。音を聴いているだけで、世界各国のオーディエンスの熱狂するさま(特に南米は強烈!)が頭のなかに浮かんでくるのだ。正直なところ、いくつかの特例を除いては“何度も繰り返し聴くほど好きなライヴ・アルバム”というのは僕にはあまりないのだが、この調子だとこの作品は、そうした数少ない存在のひとつになりそうだ。
ところで僕はこの原稿を、6月5日の早朝、軽い時差ボケを味わいながらドイツのニュールンベルクで書いている。改めて説明するまでもないはずだが、今日、この都市で開催される『ROCK IM PARK』への出演を皮切りに、DIR EN GREYの欧州ツアーが幕を開けることになる。こちらの経過についても、環境と状況が許すかぎり、あれこれご報告していくつもりなのでお楽しみに。
増田勇一
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増田勇一
Manic Street Preachers
GREEN DAY
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Bob Dylan
Amorphis
Butch Walker
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