陰陽座、妖怪最強の“九尾の狐”をモチーフにした最硬・最重の最新アルバム『金剛九尾』リリース大特集

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陰陽座 最新アルバム『金剛九尾』リリース大特集

金剛石=ダイヤモンドより硬度を増した
陰陽座の魂のチカラが作り上げた
最新・最硬・最重の最新アルバム

バンド結成10周年を迎えて
充実の一途を辿る音楽的展開
妖怪最強の「九尾の狐」をモチーフに
叙事詩的へヴィ・メタルが魂を撃つ

陰陽座の通算第9作、『金剛九尾』が素晴らしい。まさに鋼鉄もしくは金剛石のごとき頑固一徹さと、意外なほどの多面性とをあわせ持ったこのバンドの魅力が存分に発揮された1枚だ。文字通りの過去最高傑作と断言していいだろう。しかも今作は、バンド結成10周年を飾るものでもあるのだが、メンバーたちはそこで妙な“記念モード”に浮かれていたりするわけでもない。地に足のついた妖怪たちの“今”の言葉をたっぷりとご堪能いただくとしよう。

こういう作品とパフォーマンスで提供しているバンドとしては、間違いなく独自性が高いはずだと自分たちでは思っている(瞬火)

愚問を承知で訊きます。ヘヴィ・メタルに飽きるとか着物に飽きるとか、そういうことって過去に一度もなかったんでしょうか?

黒猫:ないですね、一度も(笑)。

瞬火:着物はその都度、柄も色も素材も変わりますし。「今回のは風通しがいいな」とか(笑)。「着物を着てステージに上がるのが陰陽座」という意識があるんで、飽きるも何もないというか。着物姿で激しいアクションをしながら演奏するという点においては、世界でも屈指のスキルを持っていると自負していますので(笑)。

招鬼:ま、狭い世界ですけど(笑)。

瞬火:あと、ヘヴィ・メタルに飽きることはないのかという部分については……「ない」という答えがおわかりのうえで訊かれているのを承知のうえで言えば、その質問自体の意味がわからない!(一同爆笑)

黒猫:一人のヴォーカリストとして考えても、もうホントにさまざまな歌唱とか表現を使い分けながら歌うということをさせてもらっていますし、私はヴォーカリストとして、陰陽座の歌を歌うことに命を懸けているつもりなんです。個人的に好きなジャンルがあるからそれをステージで歌いたいとか、そういったことは一切考えたことがないんですね。ヴォーカリストとしてやりたいことは、すべて陰陽座のなかにあって、それをやるのが黒猫だと自覚しているので。こんな幸せなことはないし、だからこそ自分の持っているすべてを陰陽座に注ぎ込みたい。その探求というのは全然終わらないし、瞬火の作ってくる曲というのも、常に新たなことを求めてくるというか、どんどん自分をステップ・アップさせてくれるものばかりなので、気持ちが揺らいだり、飽きたりするなんてことはまったくないですね。

瞬火:世間一般では狭い音楽だと解釈されているところもあるでしょうし、僕自身も各メンバーも多岐にわたっていろいろな音楽を聴いていますけど、ヘヴィ・メタルは最強の音楽のひとつだと本気で確信してるんです。どうしてヘヴィ・メタルを基調としたスタイルでやろうとしたかといえば、他のどんな音楽の要素を呑み込んでもビクともしない、すべてを消化して昇華できる懐の深い音楽だと思うからなんです。ブルーズもジャズもクラシックも呑み込めてしまうし、ポップス的なキャッチーな歌があってもいい。へヴィ・メタルが呑み込めない音楽はないんです。もはやラップですらそうですし。ま、うちはやってませんけど(笑)。

もしかして次の課題はラップへの挑戦とか?

瞬火:いや、それだけは(笑)。でも、とにかくそういう意味で最強だと思うわけですよ。誤解のないように言っておきますけど、ヘヴィ・メタルだけが素晴らしいと言っているのではありません。音楽はすべて素晴らしいです。ただ、実際ヘヴィ・メタルしか聴かないわけではなく様々な音楽を聴く僕たちが、自分の中にある色んな要素を作品としてまとめるうえで、ヘヴィ・メタルほど統率力のある音楽はないと思うからそれをやっているということです。やりたいと思ったことが「ヘヴィ・メタルに合わない」「陰陽座に合わない」という理由でお蔵入りということは、ただの一つもありませんからね。だから飽きるはずもない。陰陽座においてヘヴィ・メタルに飽きるということは、音楽そのものに飽きるということと同義でもあるというか。

メタルを狭い音楽と見ている人たちの目には、おそらく陰陽座のようにコンセプトの明確なバンドは、よりいっそう狭い世界にいるかのように映ってしまう。でも実際には、全然そうじゃないんですよね。

瞬火:ええ。同時に「メタルはちょっと苦手」というような人でも楽しめるようなものを、自分たちのスタイルのなかで実践できていると思うんです。だから本当に、すべてやりたいことはこのバンドのなかでできているというか。

黒猫:そう、誰も無理していないんです。

「九尾の狐」を9枚目のアルバムでやるんだと決めたのは、実は結成当時のこと(瞬火)

そして今回の『金剛九尾』。例によってこのタイトルは、前々から瞬火さんの頭のなかにあったわけですよね?

瞬火:そうですね。まず、「九尾の狐」という有名な妖怪がいるんですけど、それを今回はモチーフの一つにしています。「九尾の狐」を9枚目のアルバムでやるんだと決めたのは、実は結成当時のことなんです。「九尾の狐」というのは、妖怪好きでそれをテーマにしようとする人間なら、まず真っ先に飛びつきたいくらいの存在なんですね。伝承の数とか面白さという点でも。で、僕としては、そういう大好きなものをすぐ食べてしまうんじゃなく、9枚目までとっておきたかったんです。9枚もアルバムを作るなんて、なかなか実現できることじゃないですよね。でも、それをやり遂げたときにご褒美として実践しようじゃないか、と。で、実際に9枚目を作る段階が近付いてきたとき、より具体的にタイトルとして考えたとき、「九尾の狐」は本来「金毛」であるところを、敢えて「金剛」としてみたんです。金剛石、つまりダイアモンドなんですけど。「九尾の狐」に匹敵するかのような妖力というか魅力、魔力をも持った作品でありつつ、なおかつ金剛石のごとき固い信念が貫かれているという意味合いを込めました。

敢えて言うなら“記念”めいた要素は、そこにあったわけですね。つまり、思い入れ深いタイトルを掲げるに相応しい時機を、それに似つかわしい状態で迎えられたことに。

瞬火:まさに。9枚目で『金剛九尾』。しかもそれを出せる10周年の年というのがたまたま2009年で、発売日が9月9日。実はこれも偶然なので。

逆算して狙ったのではなく?

瞬火:そういうわけではないです。狙ってみたいと思っても、2009年の9月9日がキングレコードのCDの発売日として設定できる日かどうかは、僕たちに決められることではないですからね。

黒猫:「9枚目で九尾の狐」とは聞いていましたけど、実際のタイトルやコンセプトは当時から聞かされていたわけではなく、制作が近付いてくると、彼のほうからいつも企画書というのがメンバーに提示されるんですね(笑)。そこでこと細かく説明してくれるわけなんです。そのときにタイトルに込められた意味も説明されて、みんなも「おお!」と感激して。

企画書に誰かひとりでも捺印しないと、それは却下されることになるんですか?

瞬火:ま、ハンコまで押すわけじゃないんですけど(笑)。企画書といっても、べつに形式めいたものではなくて、しかも「どうかな?」みたいな不確かさのあるものではなくて。ま、だから通達書ですね。いや、通達書だとちょっと怖いか(笑)。

招鬼:ま、“お知らせのプリント”が配布されるわけです(笑)。

さて、1曲1曲の収録曲については、読者にも先入観なく楽しんで欲しいところなので敢えて詳しくは訊かずにおきますが、僕はまず、1曲目の「獏」から次の「蒼き独眼」への“繋ぎ”でヤラレました。相変わらず曲順が絶妙ですね!

瞬火:ありがとうございます。僕は本当に曲間フェチなんですよね(笑)。マスタリング・エンジニアにも呆れられています(笑)。コンマ何秒単位で音像の重なり方とか、次の曲との“間”とかに、どうしてもこだわってしまう。普通の音量で聴いたときとヘッドフォンで聴いたときでは音の残り方が違うので、どちらでもOKなところを探し当てる作業とかにも時間をかけて。

黒猫:マスタリングの現場には全員が立ち会うんですけど、曲間はもう、任せるしかないというか。任せておけば絶対に間違いがないんで。

瞬火:とにかく大好物ですから(笑)。任せてもらえなくても絶対に自分でやります、それだけは(笑)。アルバム制作における最終的な出口ですからね。そこはこだわり抜きたいところで。

組曲は、マーケティングとかそういった意味での作戦ではなく、良き作品として成立させるための作戦(瞬火)

アルバムの終盤には組曲的なものが3曲連続で収録されています。これは作戦ですか?

瞬火:クライマックス的なところに来るのが打順として正当だろう、と。……打順? ということは作戦というべきなのかもしれませんね(笑)。でも実際、打順は大事じゃないですか。一番バッターには一番バッターの仕事がある。二番にも二番の役割がある。最強のチームというのは、実は六番からが怖かったりもする。アルバムの曲順というのにも、そういうところがあると思うんです。マーケティングとかそういった意味での作戦ではなく、良き作品として成立させるための作戦というか。

すごく納得できます。しかもその組曲たちも、けして敷居の高いものではない。

瞬火:そうですね。本来はクラシック音楽の形式でしょうし、ロックだとプログレなどで多く用いられる手法ですが、2009年のロック・バンドが組曲と銘打って掲げてしまうと、不慣れなユーザーの方だと、物怖じしてしまうところはあるかもしれない。「途中で止めちゃ駄目なのかな?」とか(笑)。ただ、要はひとつのテーマに基づいて、いくつかの楽曲に連続性を持たせて物語を織り成しているだけのことなので。仮に三部構成の曲があったとき、一部だけを聴いても訳がわからないとか、二部だけ聴くと楽曲の体を成していないとか、そんなことが絶対にないように作っているので。「この組曲の三部だけが好きだから、それだけ聴く」という人がいてもいいんです。ただし、それらを並べて聴いたときには、そこでひとつの物語が構成されているという。だから敷居の高さを感じる必要はまったくないですね。しかも組曲が続いたあとには「喰らいあう」で楽しく終われますし。

オーディエンスと魂を喰らいあう日々も、もうすぐ到来します。

瞬火:間違いなく、このアルバムの粋を味わっていただけるツアーになると思います。というか、必ずそうなります(笑)。ぜひお見逃しなく、というところですね。

取材・文●増田勇一

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