ブラーも使ったバンクシーのグラフィティ、市役所が間違いで消される

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ブラーの2003年のシングル「Crazy Beat」のカヴァー・アートで使われたグラフィティ・アーティスト、バンクシーの作品の一部が、市役所の過失により黒く塗りつぶされてしまった。ロイヤル・ファミリーを茶化したこのグラフィティは、イースト・ロンドン、ストークニューイントンにあるビルの側面に描かれた。ブラーのシングル・カヴァーはこの改定版を使用。以来、観光客の人気を集め、地元の名物になっていた。

グラフィティを8年に渡り残してきた建物のオーナーは、突然、市役所の作業員がグラフィティを黒く塗りつぶし始めているのに気づき、涙ながらに止めるよう訴えたという。しかし、作業員はそれをしばらく無視し塗装を続けたため、作品の一部が損なわれしまった。

バンクシーのグラフィティをアートとみなし消去しない役所もあるが、この一帯を管轄するハックニーは、それが話題になったものでも街の外観を損なうとして容赦なく消去することがある。建物は個人の所有物であるため、壁の“落書き”を消すにはオーナーの承諾が必要だが、ハックニー市役所はオーナーが25年も前に住んでいた住所へ「消すか包み隠すよう」要請する手紙を送り続けていたため、彼女には知らせが届いていなかったという。市役所は返事がないことで、作業の施行を決定したらしい。

ビルのオーナーは、BBCにこう話している。「(作業員を止められなくて)涙が出てしまいました。でも、人が集まり始め、すべてを消される前に止めることができました」「わたしにはアートだとか政策だろうが、どうでもいいんです。ただ単に、あれを見ることで明るい気分になるという事実が気に入ってたんです」と話している。

バンクシーの作品は高値がつくため、売買や保存目的のためパースペクス(風防ガラス)などでカヴァーされる場合もあるが、このオーナーはそれをしていなかった。彼女は「売るか、カヴァーするよう言われていましたが、みんなが楽しめるように、そのままにしておきたかったんです。厚いプラスティックのスクリーンがついたら、写真が撮れませんから。これでお金儲けなんかしたくなかったんです。でも、わたしたちの生活の一部でした。それが無くなってしまった」「ハックニー(その一帯)はよく悪く言われたりしますが、これは自慢できるものでした」

ハックニー市役所の市議会員は「市議会は、グラフィティがアートかどうか判断する立場にない」コメントしている。オーナーの承諾なしに作業を施行したことは「現在、彼女と問題解決に向け話し合っている」という。

一方、謎のアーティスト、バンクシーの出身地だとみられているブリストルは、昔はともかく現在はバンクシーのグラフィティを残すことに積極的だ。バンクシーのグラフィティの上に落書きがされたときは、それを消去しオリジナルの状態に戻そうとまでしている。ブリストル市議会は、バンクシーの作品を市内の壁から消し去ったら暴動が起きるだろうと『Bristol Evening Post』紙に話したという。最近、同市の美術館で開かれたバンクシー展覧会には30万人が訪れ、地元の経済にも大きな影響を与えた。

Ako Suzuki, London
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