夢を追うこと。あきらめないこと。信じること。そして育まれる友情。真実のストーリーだからこそ、人間ドラマがキラキラと輝く、映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』。

これまでもその映画の魅力は逐一お伝えしてきたが、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』スペシャルイベント付試写会への20組40名様ご招待(http://www.barks.jp/present/)とともに、ガバシ監督とアンヴィルによる、貴重なインタヴューを紹介しよう。

サーシャ・ガバシ監督(以下ガバシ監督):僕の頭のヒューズは、かなりぶっ飛んでいる。映画、すごい反響があるんだ。

スティーヴ“リップス”クドロー(以下リップス):どんな反響なんだい?

ガバシ監督:とにかく、みんな映画をすごく気にいってくれているんだよ。リップス、ロブと一緒にファック!と指を立てているダスティン・ホフマンの写真があるんだけど、びっくりしたね。あの名画『卒業』のスターが、サタンのように頭を激しく振っていた。

──ダスティン・ホフマンは隠れヘヴィメタファンだったの?

ガバシ監督:全然! 映画を見てから彼は僕のところへやってきて、「私は今晩この映画を見るまでヘヴィメタが大嫌いだったんだけど、今まで見た映画のなかで、最も精神に刺激を受けた、感動的で美しい映画だ」って涙を流しながら言ってくれたんだ。

ロブ・ライナー(以下ロブ):映画を見た後に「今までは全然ヘヴィメタ好きじゃなかったけど、今は好きだよ」って言ってきてくれた人がたくさんいたよ。

ガバシ監督:そうなんだ!ジョン・メイヤーとか、グッド・シャーロットとか、ザ・キラーズたちもそうだったよ。すごく変だ。僕らは「オジーがこの映画を気に入るといいけど」とぐらいにしか思わなかったんだけど。

──(笑)、でも本当に心の琴線に触れる作品だよ。

ガバシ監督:僕にとって最も嬉しいのは、映画を見た人が、「ふたりを大好きになってしまった」というコメント。そして彼らが本当に驚嘆に値する素晴らしいバンドだってわかってくれたら、もう最高に嬉しい。

──そう。これはいわゆる“カム・バック映画”じゃあないよね。むしろ“いい加減にオレたちのこと認めろよ”映画だ。あなたがたは常に“アンヴィル”であり続けてきた。そして、突然ガバシ監督から連絡が来たのはいつ?

リップス:2005年の6月のことだった。

ロブ:20年以上音沙汰がなかった。でもずっと、サーシャのことを思って「ティー・バッグ(注:少年時代のサーシャにアンヴィルがつけた愛称)は何処にいるんだろう? 何をやっているんだろう?」って思っていたんだ。そしたら戻ってきた!

──しかもスピルバーグの脚本家になっていた!(笑)

ロブ:サーシャがハリウッドで活躍しているなんて本当に夢にも思っていなかった。でも、サーシャは戻ってきたのは、昔の友人がどうなったのか知りたかったからなんだ。映画のアイディアは、その後に生まれた。それで僕らはお互いの近況を報告しあおうって落ち合うことになった。

リップス:僕はサーシャの家にいって、サーシャがまだ聴いていないアルバムをあげた。すると彼は「ワォ~!」と喜んで、アルバムのタイトルを読み始めた。「Five Knuckle Shuffle? なんだ、こりゃ!」って(笑)。

ガバシ監督:そう。「Show Me Your Tits」とか「Hair Pie」といったタイトル名を見て、「おお、アンヴィルは少しも変わっていなかった!」って思ったね(笑)。アンヴィルを続けているってことを知って、衝撃を受けた。昔にタイムスリップし、青春をもう一度体験しているような感じで、どれだけアンヴィルが好きだったかということを思い出させてくれた。僕らの間にはすごくポジティブなエネルギーがあって、映画のアイディアは、バンドと僕が子供のころに彼らの音楽が僕に与えてくれたものからやってきたんだ。僕らが出会ってから四半世紀が経ったけど、あの時の情熱は、今では鬼火のような存在となって輝き燃えている。だって、あのアンヴィルが『ニューズウィーク』に載るなんて、考えられなかったもの。

──ファッキンな世の中になったんだ(笑)。

ガバシ監督:出会って数ヵ月も経たないうちに僕たちは撮影を開始した。リップスとロブは、すでにティッチアナ(・アリゴーニ)に会って、ヨーロッパ・ツアーを組んでいたところで、皆で集まって会議して…というような時間はなかった。今撮らなければ二度とそのチャンスは巡ってこないと思った。唯一の手段は、僕が自分で費用を立て替えることだった。僕は、今が撮るべき機会だってわかっていた。それで、「とにかく、出発しよう!」と、言葉の勢いに身をまかせた。だいたい一年ぐらい撮ればいいかなと思っていたけど、結局は長期の冒険波乱旅行になっちゃったね。人生のある時期には、思い切って何かに立ち向かうことが必要だ。「これを僕は信じる。何があってもやりぬく」と。僕にとっては、アンヴィルがそれだったってわけなんだ。

──それに、ふたりの友人を信じたということも素晴らしい。君は、人がカメラに映されたくないと思うようなシーンを撮ることができた。リップスとロブは「その糞カメラを消せよ!」って思った瞬間だってあったでしょ?

ロブ:全然なかったよ。

ガバシ監督:撮影の最初に僕はこう言ったんだ。「あなたがたふたりは、底抜けに陽気だ。それに、あなたの名前は、ロブ・ライナー(注:映画『スパイナル・タップ』の映画監督はロブ・ライナー)だし。何があっても、僕らは『スパイナル・タップ』と肩を並べるようなものを作るしかない。だから、すべてを受け入れてほしい。映画では、あらゆるぶざまな、みっともない姿もすべてを見せなければならない。それが、あなたがたに対する世間の紋切り型な見方を破っていくことになる。まずは、「ハッハハ。ヘヴィメタ?」なんて思っている観客たちの不意をつくところからはじめよう。そして、その人たちを誘い込もう。観客が、あなたがたヘヴィメタさんも、普通の人たちと変わらないと、家族を持ち、夢を持っている人だって分かったら、最初の数分間は笑っていた人たちだって、映画の終盤にはガッツポーズをとって、あなたがたを応援してくれるはず」。僕の言葉に、彼らはこう言ったよ。「かまわねえ。ティーバック。君を信じよう。全うしてやる」。

ロブ:僕はサーシャを信用していたから。友人だからね。彼の目の中を見て、魂がみえる。愛と善意に溢れていたよ。彼のやりたかったことは、彼ができる最良の方法で、最も正直なアンヴィルの物語を描くことだった。そして、彼は計画通りにそれをやり遂げた。

──ケンカのシーンは、親友じゃないとできないケンカだったよね。みんな一度はこうした経験がある。この映画、二回見たけど、二回とも目がうるうるして、唇をプルプルさせてしまった…。

ガバシ監督:感動的なのは、真実だからだ。ふたりは、見ている人に救いの手を差し伸べているんだ。「僕らは35年間も同じことを馬鹿みたいにやり続けていて、もう少しで大当たりしそうになっても、まだ、認められるまで夢を捨てていないんだぜ。でも、明日は局面を切り開けるかも」という彼らのメッセージが観客の心に届いているところがすごいんだ。そういうメールを沢山もらった。例えばある女性は、「自分の商売をあきらめようかと思っていたけど、あなたの映画を見て、あきらめてはならないと決心した」と書いてきた。僕らはあくまで自分たちや友人が気に入る映画を作ろうとしていたんだけど、結果的にこの映画は、観客を引き込む力を持っている。それは自分のやっていることを信じて疑わなかったからだ。2人はバンドの可能性を信じてやまなかったし、映画も僕も皆その可能性を信じていた。ここがポイントなんだ。だから話題になったんだと思う。

ロブ:補足しておくけど、過去、僕らは5回ぐらいしかケンカしたことがないんだ。そのうちの一回をサーシャが運よく捕らえた。

ガバシ監督:それに僕らは、絶えず冗談ばっかり言い合っていた。ダスティン・ホフマンがやってきたときですら、「ダスティン・ホフマン、こんなところでなにやってんだ?」って感じで。

──今思い出したけど、ダスティン・ホフマンが言っていたことの意味がわかったよ。彼は未だにジャズ・ピアニストになる夢を捨ててはいなんだって。彼が映画を気に入ったのも当然だね。

ガバシ監督:すごく奇妙な話があるんだ。1979年にダスティン・ホフマンがロンドンで映画を作っていたときのこと、彼はホテルに宿泊していた。僕の母はピアニストなんだけど、父と別れ、偶然そのホテルのロビーでピアノ演奏の仕事をしていた。そして、ホフマンと友人になったんだ。ある日、僕はホフマンとお茶をして仲良くなった。ちょうどその時は学年末で、僕には宿題のレポートがあった。ホフマンは、僕のためにとっても素晴らしいレポートを書いてくれたんだ。その14歳のときのレポートのことを、この間会ったときに話したら、彼は泣き出した。人生は、廻る輪のようだ。

──素晴らしい環だね。この映画は、神のご加護がついているんだよ。僕が幸運を祈る必要すらない。幸運をもって産み出された映画なんだから。

『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』
監督:サーシャ・ガバシ
出演:スティーヴ“リップス”クドロー(ANVIL)、ロブ・ライナー(ANVIL)、ラーズ・ウルリッヒ(Metallica)、レミー(Motorhead)、スコット・イアン(Anthrax)、スラッシュ(Guns N' Roses/Velvet Revolver)、トム・アラヤ(Slayer)
2009/アメリカ/81分/1:1.85/ドルビーデジタル
10月24日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開
◆『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』オフィシャルサイト
(C)Ross Halfin /ANVIL! THE STORY OF ANVIL