いきものがかり、4作目だからできたハジマリの決意表明。『ハジマリノウタ』特集

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いきものがかり メンバー曰く“重心の低い”アルバム『ハジマリノウタ』堂々完成!

4作目だからできた、ハジマリの決意表明

INTERVIEW-1
「全体を通して一気に聴いたとき、素直に満足感をおぼえて。すごく重心の低いアルバムにもなってる」(水野)

──まずは4thアルバム、『ハジマリノウタ』完成の手応えから聞かせてください。

水野良樹(G): 今まで、満足感という言葉を使うのが怖かったんですね。それを口にしてしまうと、もうそこから先がないというか、そこで何かが終わってしまうような気がしてしまって。だからできるだけその言葉自体を使わないようにしてきたんですけど……なんか今回は本当に満足してますね(笑)。マスタリングで全体を通して一気に聴いたとき、素直に満足感をおぼえて。ある意味、すごく重心の低いアルバムにもなってると思うし、今までと違った面も出せてるんじゃないかな、と。

吉岡聖恵(Vo): マスタリングのとき、正直、2~3回ウルッときちゃいました。

山下穂尊(G): あ、それは気付かなかった。

吉岡: 気付かれないようにしてたから(笑)。もちろん基本的には3人でやってることではあるんだけど、たとえば「YELL」だったら松任谷(正隆/編曲を担当)さんと初めてご一緒させていただいたり、今回もいろんな方々の力をお借りしながらできた1枚なんだなって実感させられて。実際、自分たちの作品なのに、1曲1曲のイントロが始まるたびに「こんな曲も入ってるの?」みたいな驚きがあるんですよ。しかもどの曲も、もう“飛び立っていく気、満々”みたいな(笑)。だから早く届いて欲しいな、と思います。

山下: 濃いアルバムになったな、と思います。今回はいわゆる“女の子ソング”みたいなのがほぼ皆無なんですね。バランス的に見ると、むしろバラードが多い。だけどどっちも意識的なことじゃなくて、単純にこれまで以上に自由に、曲同士の相性とかだけで選曲できたところがあって。それは実際、4枚目のアルバムだからこそできたことなのかな、とも思う。1枚目とか2枚目だったら、こんなふうにはできなくて当然というか。

──初めての料理に挑戦しようとするとき、調味料の分量とかはテキスト通り正確に測りながら“正しい味”にしようとするじゃないですか。だけど同じものを何度か作っていくうちに、すべて目分量でできるようになって、そのさじ加減が“自分の味”になる。

山下: ああ、そういうのと似てるかもしれない。なにしろ実は10年も一緒にやってきてるわけで(笑)。今回は高校生のときに作った曲まで入ってるし、いろんな過去がこのなかに詰まってるんです。そういう曲を今になって自分たちが選びたいと思えたこと自体が、なんか嬉しかったというか。

──「ふたり」以前のいきものがかりは、若干、実年齢よりも若めの音楽をやっていた。以前、そんな発言をしていましたよね?

水野: そうですね。でもああいった曲を経てきたことによって、自分たち自身がより自由になってきたところがあって。あくまで個人的な感情だとか、普段の生活だとか、そういうところに曲が近付いてきてると思うんです。「なくもんか」はシングルにもなりましたけど、実は僕の個人的感情がすごく反映されてる曲で。それ以外にも、僕ら自身のごく近いところにある曲が多いと思う。何かを狙って書くんじゃなく、自然に取り組めたからこそ、こんなふうになり得たのかなと思う。

山下: 書いた時期が高校生であれ、20歳の頃であれ、たとえば女の子の視点に立ったものを作ろうとすれば、それを意識しないと無理じゃないですか。もちろんそれが良くないとかじゃなくて、曲を書こうとする動機というか原風景みたいなものが、今回はそれとは違うところにあったんだと思う。そっち側に重心が寄ったアルバムというか。

──実際に曲を歌いながら、吉岡さんもそういった変化を実感しています?

吉岡: とにかく曲の選び方が自由になったというのが大きいと思うんです。高校生の頃の曲もあれば、リーダーが普段考えてるようなことが書かれてるものもある、というのが。どんどんそういうところでの境い目がなくなってきてるのかな、と思う。前々からこの3人には、そういう線を引きたくないという気持ちがあったんですけど、それが今になってリアルなものとして作品に出てくるようになったのかな、と。昔から、作り手の2人は「コダワリがないのがコダワリです」って言ってたんですね。なんかそれが、本当に実現されてきた気がする。

──つまりこれまでは言葉だけで実践できていなかった、と(笑)。

水野: はははは! でも確かに、「そうなりたいな」という気持ちだったと思うんですよね。ちょっと背伸びをした発言ではあったんだと思う。実際、1枚目とか2枚目のアルバムとかだと、きちんと自己紹介をしなきゃいけない部分もあるし、そういう意味では制限も出てくる。同時に、「女性ヴォーカルだから、女性の視点に立った作品のほうが伝わりやすい」というのも間違いなくあったし。だけどこうして4作目になって、むしろインディーズ時代みたいな「こんな曲、作りたいな」とか「こんな考え方を反映させたいな」といった無邪気な発想に戻ることができたというか。いろんな経験をしながら、ひと回りしてそこに戻って来ることができた。そんな気がすごくします。

吉岡: うん。だからすべてが、すごく無理のない感じ。

山下: そういられるのは幸せなことだと思うんです。こうして改めてこのアルバムを見てみると、今まで経てきたことすべてに意味があったなと思えるし。

──ちなみに、高校生時代に作ったというのはどの曲ですか?

水野: 「てのひらの音」ですね。山下が高校3年のときに作ったのかな。

山下: うん。まだ曲を作るようになって1~2年目ぐらいのとき。書いたときのこともしっかり憶えてますよ。深夜に自分の部屋で、「締切りはあさってか」とか思いながら。

──高校時代なのに、曲作りの締切りが?

山下: 文化祭のテーマソングみたいなのを校内で募集するという企画があったんですよ。で、深夜に3時間くらいかけて書いたのかな。全部で3曲作ったんです、締切り直前の1~2日の間に。聖恵は隣の高校だったからそこにはいなくて、良樹と、同級生の女の子2人と一緒にやったんですけどね。その子たちが「歌いたいから作って」みたいなことを言ってきたんで。

水野: 要は校内オーディションみたいな感じだったんですよ。それが1日か2日後に迫ってた頃に、突然、同じクラスの女の子たちにそう言われて。当然、「そんなに急には作れないよ!」とか言ってたんですね。そしたら山下がいきなり3曲も作ってきて、しかもそれがどれも結構いい曲だったんで、「これはヤバいな」と思いました。「このままだと俺は負ける!」と(笑)。

──ソングライターとしての、2人のライバル意識の根源がそこにある(笑)。

山下: ははは! でも結果、そのときは3位に終わったんです。ヒップホップのやつらに負けてしまって。

吉岡: 私、歌いたかったな(笑)。今、またここで挑戦したいくらい(笑)。私自身は違う高校だったんだけど、うちのお兄ちゃんが2人の同級生だったんですね。だから兄のジャージを借りてそっちの高校にもぐりこんで(笑)、そこで練習してたんです。そんなとき、その文化祭用の練習風景も実際に隣の机から見てたし。

山下: うちの学校で練習して、そのまま路上ライヴに行く。それが当時の“流れ”だったんで。

吉岡: だからこの曲のことはちゃんと記憶にあるというか……当時だって歌えたんですけどね。やっと自分で歌える、みたいな(笑)。

⇒INTERVIEW page-2

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