増田勇一の『今月のヘヴィロテ(1月篇)』

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暦のうえでは春でも、寒さはまさに今こそが本番。そんな今日この頃、皆さん風邪などひかず元気でお過ごしでしょうか? 季節のご挨拶はそれくらいにして、さっそく今年最初の「聴きまくり10選」を。今回はすべてこの1月に日本盤としてリリースされたものばかり。実は1月がやって来る以前から輸入盤や試聴音源で聴きまくっていたものもいくつか含まれてはいるのだが。

●ロブ・ゾンビ『ヘルビリー・デラックス2』
●ヴァンパイア・ウィークエンド『コントラ』
●ジェイミー・カラム『パースート』
●ゴシップ『ミュージック・フォー・メン』
●モーション・シティ・サウンドトラック『マイ・ダイナソー・ライフ』
●オーファンド・ランド『ザ・ネヴァー・エンディング・ウェイ・オヴ・オアウォリアー』
●アルバム・リーフ『ア・コーラス・オヴ・ストーリーテラーズ』
●オーケー・ゴー『オブ・ザ・ブルー・カラー・オブ・ザ・スカイ』
●オリアンティ『ビリーヴ』
●ホープ・サンドバル&ジ・ウォーム・インベンションズ『スルー・ザ・デビル・ソフトリー』

例によって脈絡も一貫性もないアルバム群だが、正月ボケにカツを入れてくれたり、締め切り地獄から抜け出せないときに救いの手を差し伸べてくれたりしたのは間違いなくこれらの素晴らしい新作たちだ。念のため最初にお断りしておくが、上記リスト内の作品タイトル及びアーティスト名の表記は、すべて日本での発売元による表記に合わせたもの。“オブ”と“オヴ”が混在していたりするのはそのためだ。こういうの、僕的にはちょっとキモチワルイのだが。

まずロブ・ゾンビは、相変わらずの単調さ(←最上級に近い褒め言葉のつもり)が最高に気持ちいい。この人なりの様式美、という言い方をしてもいいはずだ。まさに<LOUD PARK09>で観たときの“わかりやすい興奮”が蘇ってくるし、ロブを含む現在の4人の、とてもバンド然としたたたずまいにも惹かれるものがある。是非、このラインナップのままふたたび日本上陸を果たして欲しいものだ。

ヴァンパイア・ウィークエンドは、まさか本当に全米チャート首位を獲得することになるとは思ってもみなかったし、最初に聴いたときには「前作のほうが好きかも」と感じていたくらいなのだが、今ではこの第2作にスルメ的魅力を感じさせられている。やはり、おそるべき若者たち。だけどどうしても「この人たちが本当にこれからのシーンを担っていくことになるのか?」的な猜疑心を持ってしまうのは、僕自身が「もっとロック然とした新たなスーパースター」の出現を待ち焦がれているからなのかもしれない。

アルバム・リーフについては正直あまりよく知らないままに聴いたのだけども、聴けば聴くほど深みにはまっていく。この種の音楽やアーティストについてどうカテゴライズするべきかの判断は難しいところだが、僕はそれに相応しい呼称を見つけることよりも、この美しい音楽を何度も繰り返し聴くことにエネルギーを使いたい。職務放棄みたいに聴こえたら申し訳ないのだけども、今は単純に、遅ればせながらこの音楽に出会えたことが素直に嬉しいという状態なのだ。

歌声そのものの圧倒的な魅力で惹きつけられたのは、なんだかようやく日本でも浸透してきたジェイミー・カラムと、掟破りな存在感の女王様、ベス・ディトー率いるゴシップ、そしてホープ・サンドバル。で、そのホープ・サンドバルも参加しているマッシヴ・アタックの新作『ヘリゴランド』は2月に入ってからのリリースだったため今回は選外となっているが、実はここのところ日に一度はかならず聴いているほど。言うまでもなく次回の“へヴィロテ”には当選確実ということになるだろう。

他にも、「いつも“かなりいい”んだけど、なかなかその域を脱さないなあ」と感じていたモーション・シティ・サウンドトラックが今回はちょっと突き抜けた印象だったし、イスラエル産プログレッシヴ・メタル・バンド、オーファンド・ランドの本邦デビュー作は思っていた以上に聴きやすかった。民族音楽的メロディや宗教的世界観に惹かれる人たちにはお薦めしておきたい。オーケー・ゴーは、ひねくれ具合と元気さ、壊れ具合のバランスが僕にはちょうどいい。この作品を引っさげての今月末の来日公演が楽しみなところだ。話題のオリアンティ嬢の作品も、マイケルがらみの話題抜きでもヒットしてしかるべき充実の内容。80年代ロックに思い入れの深い人たち、「女性版ボン・ジョヴィ」といった形容に無条件に反応してしまう人たちには必聴だろう。筆者的には「ギターがものすごく上手いパティ・スマイス」みたいな第一印象だったのだが。

これら以外によく耳にした1月リリースの新譜は、スウィッチシフト、レジーナ・スペクター、ロストプロフェッツ、スキンドレッド、そしてようやく日本盤の出たブレイキング・ベンジャミンなど。新年早々、文字通りの豊作で喜ばしいかぎり。音楽業界の不振はまったく楽観視できる状況にはないが、優良な作品が減少しているわけでは全然ない。そのことをお忘れなく!

増田勇一
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