ボブ・ディラン、3月21日東京公演初日の目撃レポ

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3月21日東京公演初日、日曜日の公演ということで開場16時、開演17時。かなり早い時間からグッズ・コーナーへ並ぶ人々の列。Tシャツ、パンフ、そして話題のディランのチロルチョコは飛ぶように売れている。開場時間後ZEPPの中に入ると、もうギュウギュウでぎっしり。いまや遅しと伝説が始まるのを待つファンの熱気と、何かが起こりそうなときの異常な雰囲気というか、不安と期待感が交じったドキドキ感で会場中が包まれている。

17時8分。会場が暗転となり、会場内の興奮は頂点に。メンバーのシルエットが見えると更に会場中のテンションは最高潮。リングアナのようなディランを紹介する場内アナウンスとともに、暗転から一転ステージ上が照らしだされ、一曲目がスタート。大阪の3月11日、15日に続いて、オープニング曲として3度目の登場となる「Watching The River Flow/河の流れを見つめて」(1971年『グレイテスト・ヒッツ第2集』収録)である。ディランはステージ右端でキーボードを弾いている。キーボードは観客席を向いておらず、ディランはステージの左端を見て…要するに観客に対して横向きで演奏。中央にはギターのチャーリー・セクストンがいる。これまた変な感じではあるが、これが近年のディラン流。ファッションも素晴らしい。黒地に白の水玉(!)模様のシャツを着て、上下黒の衣装、パンツのサイドにゴールドのストライプ。そして頭に白のスペイン帽子。バックを固めるバンドメンバーも黒い衣装を身にまとっている。

2曲目でディランはギターを持ってステージ中央へ。オーディエンスのほとんどがすぐにイントロで「Don't Think Twice, It's All Right/くよくよするなよ」(1963年『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』収録)とわかり、なじみの曲に会場は“ウォー”と大歓声。12日の大阪に続いて2度目の登場。ディランはサンバーストのストラトキャスターで味のあるギターソロを弾き、チャーリーがそれに応えてシビれるフレーズを絡める。チャーリーは時折なぜか中腰というか座って弾くポーズ。最後のほうでディランの合図でミッドテンポのブルーズへ変化。

3曲目は大阪の13日、15日に続いて3度目の登場となる1967年『ジョン・ウェズリー・ハーディング』からの「I'll Be Your Baby Tonight/アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト」。ディランは引き続きステージ中央でギター。ステージ中央に出てきてギター弾く時、ちょっと左足下げてリズムを取っている。

ディランはキーボードに戻り、4曲目は19日の名古屋に続いて2度目の登場となる「Sugar Baby/シュガー・ベイビー」。5曲目「Tweedle Dee & Tweedle Dum/トゥイードル・ディー&トゥイードル・ダム」とともに2曲連続で2001年『ラヴ・アンド・セフト』からの曲を演奏。

そして、6曲目は1975年の名盤『血の轍』からの名曲「Shelter From The Storm/嵐からの隠れ場所」。13日大阪、18日名古屋に続いて3度目の登場。これはかなりアレンジを変えて歌っていて最初は全くわからなかった。2010年版の新アレンジの模様。ディランはキーボード弾きながら、時折両腕を伸ばし「ヤ~」って感じのポーズをとったのには驚いた。

7曲目の「Summer Days/サマー・デイズ」も2001年『ラヴ・アンド・セフト』より。原曲はロカビリーっぽい雰囲気だが、ここでは全く異なるアレンジになっている。16日大阪に続いて、2度目の登場。8曲目は「Tryin' To Get To Heaven/トライン・トゥ・ゲット・トゥ・ヘヴン」(1997年『タイム・アウト・オブ・マインド』)、15日大阪に続いて2度目の登場。

個人的にこの日の最高のパフォーマンスと思ったのは次の9曲目「Cold Irons Bound/コールド・アイアンズ・バウンド」。前曲に続いてグラミーのALBUM OF THE YEAR受賞アルバム1997年『タイム・アウト・オブ・マインド』からのナンバーであるが、これが相当カッコよかった。ディランはギターも持たず、ハーモニカだけを右手に持ってステージ中央へ。ヴォーカリストとしてのディランということなんだろうが、不思議な感じを受けるとともに、これがまた新鮮。時折意味不明なちょっとしたしぐさやポーズをつけるのだが、その一つ一つがまたカッコイイ。最後はブルース・ハープのソロも披露。変化した曲のアレンジも最高、演奏もディランとバンドのパフォーマンスも最高だ。

続いて本日のハイライト、10曲目は今回の日本ツアーで初登場…それも1965年『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』収録、バーズのカヴァーでも有名な、誰もが知ってるこの名曲「Mr. Tambourine Man/ミスター・タンブリン・マン」が登場。東京のファンのための最初のサプライズ・プレゼントとして贈られた。場内も割れんばかりの大拍手とともに迎えられ、続けざまに「Highway 61 Revisited/追憶のハイウェイ61」(1965年『追憶のハイウェイ61』)になだれ込むと最高潮に。12曲目は『タイム・アウト・オブ・マインド』からこの日3曲目となる「Not Dark Yet/ノット・ダーク・イェット」。13日の大阪に続いて2度目の登場。

次の13曲目からアンコールの最後までの5曲はこれまでのセットリストからみてもしばらく固定される模様。11日大阪初日から東京初日の今夜まで、不動の5曲が演奏される。まずは13曲目「Thunder On The Mountain/サンダー・オン・ザ・マウンテン」(2005年『モダン・タイムズ』)ではチャーリーのギター・ソロからディランのキーボード・ソロへ、とソロの掛け合いもびっくりなら、ディランはキーボードを押すような(あるいは腰をひくような)しぐさを何度も行ない、完全にノッてる感がビンビン伝わってくる。

本編セットの最後を飾るのは1965年『追憶のハイウェイ61』収録「Ballad Of A Thin Man/やせっぽちのバラッド」。ディランはステージ中央でハンドマイク&ハーモニカ。

メインセットが終わり、アンコールを求める拍手の嵐。ステージのバックに大きなアイロゴの幕が飾られると場内が再び盛り上がる。ちなみにこのロゴはTシャツなど一部にしか使用されていない貴重なもの。話題のチロルチョコの箱の裏面にも使用されている。

アンコール一曲目は米ローリング・ストーン誌でロック史上最高のシングルと位置づけられた、言わずもがなの名曲中の名曲「Like A Rolling Stone/ライク・ア・ローリング・ストーン」(1965年『追憶のハイウェイ61』)。しかし、この名曲中の名曲をディランは原曲をとどめない凄いアレンジで聞かせてくれた。特に後半途中からスタッカートのように区切って歌うというか、とにかくメロディ、歌い方、完全に変えてしまって、完全に別の曲に生まれ変わってしまった感じ(途中からなにかPOPさを感じるほど)。あれだけの誰もが知ってる名曲をあそこまで変えてしまう勇気はちょっとディラン以外あり得ないかもしれない。曲はそのつど進化していくということなんでしょう。会場に来てるファンもあそこできっと歌いたいだろうに、さすがにあれでは歌えない(笑)。コーラス部分で、客席にスポットライトが当てられるので、おそらくその思いは大合唱の場面なんだろうが、果たして歌わせたいのか?歌わせたくないのか??

続いてようやくこの日初めて最新オリジナルアルバムである、2009年『トゥゲザー・スルー・ライフ』からのナンバーを演奏。結局新作からはこの「Jolene/ジョリーン」一曲だけだった。60年代のヒット曲の合間に2009年リリースされたこの歌が挟まってるわけだが、流れ的にまったく違和感はない。そしてこの曲終わるとバンドメンバー紹介。この夜、歌以外でボブが声を発したのは、このときだけとなった。

オーラスを飾るのは「All Along The Watchtower/見張塔からずっと」(1967年『ジョン・ウェズリー・ハーディング』)。ディランはキーボード。ディランの弾くキーボードが音を探るように流れ、オリジナルの原形は留めていないが、これぞロック。40年以上前に書かれた曲だが、全く「今」の曲に進化している。名曲は時を超えて名曲ということである。

最後ディランはメンバーをステージ中央に集め観客を見つめる。お辞儀をするわけでもなく…。それがまた大歓声を誘う。しばらくの間見つめ続けたあと、さっとステージをあとにした。ん~これもカッコイイ(たまにお辞儀をすることもあるそうだ。名古屋ではお辞儀したとか?)。約2時間の伝説のライヴは終了し、終演後はグッズ売り場にまた長蛇の列ができていた。

今夜、ツアー初登場曲は1曲だったが、これでトータル52曲の異なった曲を日本公演で演奏したことになる。東京公演はあと6回、はたしてこのあとどんな歌が初登場するのだろうか?期待は高まるばかりである。

<3月21日 BOB DYLAN ZEPP TOKYO SETLIST>
1. Watching The River Flow/河の流れを見つめて(1971『グレイテスト・ヒッツ第2集』)
2. Don't Think Twice, It's All Right/くよくよするなよ(1963『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』)
3. I'll Be Your Baby Tonight/アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト(1967『ジョン・ウェズリー・ハーディング』)
4. Sugar Baby/シュガー・ベイビー(2001『ラヴ・アンド・セフト』)
5. Tweedle Dee & Tweedle Dum/トゥイードル・ディー&トゥイードル・ダム(2001『ラヴ・アンド・セフト』)
6. Shelter From The Storm/嵐からの隠れ場所(1975『血の轍』)
7. Summer Days/サマー・デイズ(2001『ラヴ・アンド・セフト』)
8. Tryin' To Get To Heaven/トライン・トゥ・ゲット・トゥ・ヘヴン(1997『タイム・アウト・オブ・マインド』)
9. Cold Irons Bound/コールド・アイアンズ・バウンド(1997『タイム・アウト・オブ・マインド』)
10. Mr. Tambourine Man/ミスター・タンブリン・マン(1965『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』
11. Highway 61 Revisited/追憶のハイウェイ61(1965『追憶のハイウェイ61』)
12. Not Dark Yet ノット・ダーク・イェット(1997『タイム・アウト・オブ・マインド』)
13. Thunder On The Mountain/サンダー・オン・ザ・マウンテン (2005『モダン・タイムズ』)
14. Ballad Of A Thin Man/やせっぽちのバラッド(1965『追憶のハイウェイ61』)
15. Like A Rolling Stone/ライク・ア・ローリング・ストーン(1965『追憶のハイウェイ61』)
16. Jolene/ジョリーン (2009『トゥゲザー・スルー・ライフ』)
17. All Along The Watchtower/見張塔からずっと(1967『ジョン・ウェズリー・ハーディング』)

大阪:ZEPP OSAKA
3月11日(木)・12(金)・13(土)・15(月)・16(火)
名古屋:ZEPP NAGOYA
3月18(木)・19(金)
東京:ZEPP TOKYO
3月21(日)・23(火)・24(水)・25(木)・26(金)・28(日)・29(月)
◆ボブ・ディラン公演詳細
◆ボブ・ディラン来日記念スペシャル・サイト
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