ピロカルピン、2作の100円CDにかけた想い
2009年7月、タワーレコードとHMV2社から別々のシングルを同時に発売し瞬く間に完売となったピロカルピン。ともに紙ジャケ仕様で100円という捨て身の価格でリリースされ、2枚並べると1枚の絵になるその企画性も話題となったものだ。
◆ピロカルピン「虹の彼方」「飛行少女」PV映像
そんな彼らの2本の最新PVが公開された。タイプの異なる対照的な曲に、それぞれに1人の少年と1人の少女を起用したテイストのまったく異なる内容が繰り広げられるPVだ。少年を起用した「虹の彼方」は、監視カメラ越しの薄暗い地下室から始まる謎に満ちたストーリーで、あっと驚く衝撃的な結末が待っている。少女を起用した「飛行少女」は、ただ淡々と歩く少女がどこに向かうのか、ラストシーンまで目が離せないもの。音楽だけでなく、シンプルながら子役の演技も光っている。
「虹の彼方」は前回と同企画で2010年3月にリリースされた作品だ。タワーレコードで「虹の彼方」、HMVで「若気の光」が同時発売されるや、今回も大きな宣伝をしていないにも関わらず売り切れ店舗が続出、現在では店頭からほぼ姿を消している。特に前者はタワーレコードオンライン(3/24付)で一時、チャットモンチーや東方神起をしのぎ1位を取得、オリコン週間インディーチャートで3位となった。
早耳な人しか知らないようなインディーズのアーティストがノンタイアップでここまで伸びるのは異例だが、2枚で1枚の絵となるジャケットの妙と100円という価格の魅力を武器に、彼らのサウンドの魅力が口コミで広がった結果がこれだ。キャッチーだが非常に緻密に作り込まれた彼らの作品は、ジャケットのアートワークと同様、CDというパッケージの所有感をも刺激してくれる。ちなみに思わず手に取りたくなる不思議な質感のジャケットアートは、イラストレーター吉田利一氏の作品。気の遠くなるような作業の積み重ねによって緻密に描かれた点描画によるものだ。
「虹の彼方」と「若気の光」も収録した彼らの最新アルバム『幻聴と幻想の現象』は、5月12日にリリースとなった。100円ではなく1800円だが、店頭での売れ行きも好調だ。アルバム全体を貫くアーティストや制作スタッフの職人気質を感じることのできる完成度の高い作品と高評価だ。
2作のシングルはたった100円であり、売れば売るほど実は赤字となる作品だが、だからこそそこには、妥協無き作りこみとこだわり、作り手の熱意や情熱が注ぎ込まれている。そこからオーディエンスに伝わっていくアーティストの精神性こそが、リスナーとの信頼関係を作り上げる礎となるものだ。今、失われつつあるのは、時流やランキングなどに左右されない、作る側と受け取る側との信頼関係だ。100円CDが伝えるのは、作品そのもののみならず、アーティストとオーディエンスを結ぶ絆の創造の重要性なのだ。そしてそれこそが、きっと音楽業界に与える光なのではないか。
◆ピロカルピン・オフィシャルサイト
◆ピロカルピン「虹の彼方」「飛行少女」PV映像
そんな彼らの2本の最新PVが公開された。タイプの異なる対照的な曲に、それぞれに1人の少年と1人の少女を起用したテイストのまったく異なる内容が繰り広げられるPVだ。少年を起用した「虹の彼方」は、監視カメラ越しの薄暗い地下室から始まる謎に満ちたストーリーで、あっと驚く衝撃的な結末が待っている。少女を起用した「飛行少女」は、ただ淡々と歩く少女がどこに向かうのか、ラストシーンまで目が離せないもの。音楽だけでなく、シンプルながら子役の演技も光っている。
「虹の彼方」は前回と同企画で2010年3月にリリースされた作品だ。タワーレコードで「虹の彼方」、HMVで「若気の光」が同時発売されるや、今回も大きな宣伝をしていないにも関わらず売り切れ店舗が続出、現在では店頭からほぼ姿を消している。特に前者はタワーレコードオンライン(3/24付)で一時、チャットモンチーや東方神起をしのぎ1位を取得、オリコン週間インディーチャートで3位となった。
早耳な人しか知らないようなインディーズのアーティストがノンタイアップでここまで伸びるのは異例だが、2枚で1枚の絵となるジャケットの妙と100円という価格の魅力を武器に、彼らのサウンドの魅力が口コミで広がった結果がこれだ。キャッチーだが非常に緻密に作り込まれた彼らの作品は、ジャケットのアートワークと同様、CDというパッケージの所有感をも刺激してくれる。ちなみに思わず手に取りたくなる不思議な質感のジャケットアートは、イラストレーター吉田利一氏の作品。気の遠くなるような作業の積み重ねによって緻密に描かれた点描画によるものだ。
「虹の彼方」と「若気の光」も収録した彼らの最新アルバム『幻聴と幻想の現象』は、5月12日にリリースとなった。100円ではなく1800円だが、店頭での売れ行きも好調だ。アルバム全体を貫くアーティストや制作スタッフの職人気質を感じることのできる完成度の高い作品と高評価だ。
2作のシングルはたった100円であり、売れば売るほど実は赤字となる作品だが、だからこそそこには、妥協無き作りこみとこだわり、作り手の熱意や情熱が注ぎ込まれている。そこからオーディエンスに伝わっていくアーティストの精神性こそが、リスナーとの信頼関係を作り上げる礎となるものだ。今、失われつつあるのは、時流やランキングなどに左右されない、作る側と受け取る側との信頼関係だ。100円CDが伝えるのは、作品そのもののみならず、アーティストとオーディエンスを結ぶ絆の創造の重要性なのだ。そしてそれこそが、きっと音楽業界に与える光なのではないか。
◆ピロカルピン・オフィシャルサイト
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