「百鬼夜行奇譚」第三夜:【回顧】~Awilda~[弐]

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Kaya 短編小説連載「百鬼夜行奇譚」
第三夜:【回顧】~Awilda~
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・[弐]

   ◆   ◆   ◆

「今日はフランツと会う日かい?」
「えぇ、そうよ」
と言いながらアヴィルダは微笑んだ。

幼なじみでもあり、また子供の頃からのフィアンセであるフランツ。生まれる前からあらかじめ決められていた運命を、彼女は嫌がることも無く、受け入れていた。

「やっと船旅から帰って来るんですもの、早く会いたいわ。お父様は?」
「今日は会議だよ」

父は海軍の軍人であった。そして、海賊対策を一手にまかされていた。海賊と海軍の戦いは今に始まったことではなく、バルト海を舞台に長きに渡り続いていた。中でも、薔薇と髑髏を掲げ、縦横無尽に海を荒らす海賊団【薔薇の悪夢】に頭を抱えていた。港町の人間の間でも【薔薇の悪夢】の噂で持ち切りであった。

「あと少し、あと少しなんだが…みていろ、必ず一網打尽にしてやる!」
「お父様ったら怖い顔。少しは海賊の事を忘れたら?体を壊してしまうわ」
「あぁ…ごめんよ、ありがとう。アヴィルダは優しいね…」
「お茶のおかわりは如何?」
「いただこう」

お茶を注いでいると、ふと、部屋が暗くなった。高い窓を見上げると、先程までの青空に雲がたちこめ、陽光を遮っている。

「嫌だわ、雨になるのかしら…」

ざわりと、胸元に何かが走った。嫌な予感がする。突然の悪い予感に首を振りながら、新しい茶をアルフレッドにくれてやる。

そこに、アンナが駆け込んできた。

「大変です! フランツ様が…フランツ様が、【薔薇の悪夢】に襲われて……!!」

   ◆   ◆   ◆

文:Kaya / イラスト:中野ヤマト

次回:【回顧】~Awilda~[参] 7月12日公開予定

   ◆   ◆   ◆

KayaNew Single
「Awilda」
2010年7月28日発売
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1. Awilda
2. Sink
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◆Kaya オフィシャル・サイト「薔薇中毒」
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