安藤裕子、危機的な音楽業界に心境綴る<私はあんたに牙を剥く。>

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安藤裕子がオフィシャルサイト内にあるブログ「my room」で、今の音楽業界の危機、音楽や映像の在り方について心境を綴っている。7月17日のエントリー「牙の行方」がそれだ。

まずはその全文を紹介する。

◆   ◆   ◆

「牙の行方」

昨晩仕事も終わり、スタッフみんなとご飯を食べていた。

我々は今の音楽業界の滅びゆく様を、どう変えてゆけるかを話し合っていたの。

一部のミュージシャンは勇気を出して

「CD買ってくれよ」

と声を大きく唱えているという。

当たり前だよね。
今世紀の音楽家達はパトロンなんかにゃ雇われてなくて、
レコードやCDというフォーマットの商品を
心の通じる相手に売り渡して生きてきたんだ。

この業界に携わる人間も、その音楽という畑を耕し、
出荷、販売を手伝うことを生業に生きてきたんだ。

今は私たちが野菜を販売する店先で、野菜を配ってる奴がいる。
そりゃお金払って野菜買う人間もいないだろ。

ユーザーを責められないよ。

野菜を買え!CDを買え!とも言えないよ。

私だって野菜大好きだもん。
目の前で美味しそうな野菜配られたら嬉しくて持って帰るもん。

ただ問題なのは、
今、道で配られてる野菜が我々の畑から搾取され、
しかも培養されて増えたものに過ぎないと言うことだ。

大本の音楽が消えれば世界から音楽は消える。

そりゃ音楽だもの、ミュージシャンが消えたって、業界が消えたって、
草木が芽生えるみたいに暮らしの中に再び誕生するだろう。

音楽は人間の生活の営みだ。文化だ。

でも今世紀の音楽は瀕死だ。

そこにはあるんだよ。
死ぬほど生まれてるんだ。美しいものは沢山あるんだ。

でも金の匂いに、一部の人間が我々の村に押し入って

「我々が新しい流通制度をご紹介しましょう。」

なんてうまいこと言って収入の全てを奪っていった。

今変えなきゃいけないのは法整備だろう。

CDというフォーマットがユーザーに必要とされなくなったという事は
もはや仕方の無いことだ。

電気メーカーのハード作りの歴史の中で、
徐々に音楽制作者への著作権を軽視する動きがあった事が全ての悪なのかい?
いや、もっと根本的な要因が沢山あったかもしれないよ。

ねえ、誰かが村人の仮面を被ってこの世界から搾取を始めたんだ。

もうすぐ私たちの畑は与える水もなくなって死に途絶えるだろう。

音楽を愛してくれた人々にサヨウナラを告げる前に。

私はあんたに牙を剥く。
さあ、あんたは誰なんだ?

◆  ◆  ◆

スタッフとご飯を食べていた時の話から始まるこのエントリーでは、音楽を野菜にたとえ、<今は私たちが野菜を販売する店先で、野菜を配ってる奴がいる。そりゃお金払って野菜買う人間もいないだろ。><CDというフォーマットがユーザーに必要とされなくなったという事はもはや仕方の無いことだ。>と、CDが売れなくなった現状について語っている。また、<金の匂いに、一部の人間が我々の村に押し入って「我々が新しい流通制度をご紹介しましょう。」なんてうまいこと言って収入の全てを奪っていった。>としながらも、ただそれが<電気メーカーのハード作りの歴史の中で、徐々に音楽制作者への著作権を軽視する動きがあった事が全ての悪>というわけではなく、もっと根本的な問題として<誰かが村人の仮面を被ってこの世界から搾取を始めたんだ。>と表現。<もうすぐ私たちの畑は与える水もなくなって死に途絶えるだろう。>と、危機的な状況を前にして、<私はあんたに牙を剥く。さあ、あんたは誰なんだ?>と結んでいる。

現在の音楽業界については多種多様な意見が存在する。立場が違えば見方も変わる。ただ、その中であまり表に出ることのないアーティストからの赤裸々な意見として、このエントリーは大変興味深い。安藤裕子がこのエントリーを公開したのち、ファンを中心に大きな反響があり、オフィシャルサイトには、多くの感想が寄せられているとのこと。また安藤裕子も最新のエントリーで、<もっと話が聞きたいな。色んな言葉を聞きたいの。><17日の日記。読む機会があったら何か言葉をくれないか?>と綴っている。

さて、あなたは何を考え、感じ、そしてどう思っただろうか。その声は、ぜひ安藤裕子本人に届けていただきたい。

◆++ Andrew page ++(安藤裕子オフィシャルサイト)
◆iTunes Store 安藤裕子(※iTunesが開きます)
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