NYブルックリンのオルタナティヴ・ロック・シーン“ooklyn”

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最近、世界中の注目を集めている音楽的な場所のひとつに、一部の人々の間では“ooklyn”と呼ばれているブルックリンのオルタナティヴ・ロック・シーンがある。

このシーンの大まかな特徴は、アーティスト達が実験的なアプローチで様々なタイプの音楽の要素を再結合させて、新しい試みの音楽を作るところにある。それを支えているのは彼らのDIY精神、女性・男性の混合グループや異人種メンバーといった多様性、そして主にネットで提供しているバンド情報だ。

まだ情報が細かく分散しているにも関わらず、この“ooklyn”シーン、早くも日本でも話題となっている。以下にブルックリンのバンドによるおススメの10曲を紹介する。

(1)Vampire Weekendの「White Sky」。セカンド・アルバム『Contra』に収録されているこの曲は、ビルボード・チャートで初登場1位を記録。ブルックリン出身のバンドとして最も成功を収めている彼らは、先月フジロックのグリーン・ステージに出演を果たしたばかりだ。アフリカン・ミュージックから大きな影響を受けているサウンドは、1986年に発表されグラミー賞を獲得したPaul Simonの7thアルバム『Graceland』に通じるものがある。

(2)Dirty Projectorsの 「Stillness Is the Move」。2009年に発表された5thアルバム『Bitte Orca』収録曲。男3女3の6人組の彼らとチャリティでコラボしレコーディングしたTalking HeadsのDavid Byrneも大ファンだとか。2010年のフジロックにも出演したばかり。

(3)Here We Go Magicの「Fangela」。2009年にリリースしたデビュー・アルバム『Here We Go Magic』の収録曲。ソロとしても活動するシンガー・ソングライターのLuke Templeを中心に結成されたこの5人組バンドは、“サイケデリック・エレクトロ・フォーク”と評されるサウンドを展開。セカンド・アルバム『Pigeons』を7月にリリースしたばかりだ。

(4)Yeasayerの「Ambling Alp」。2010年のフジロックRed Marqueeでのパフォーマンスが評判を呼んだ彼ら。自らMySpaceで“Enyaの飛び跳ねバージョン”、もしくはスペーシーでファンキーなヴォーカルを中心としたサウンドと自分達のサウンドを形容されている。

(5)Chairliftの「Bruises」。AppleのテレビCMに起用され話題になった曲。メンバー構成は男2女1で、女性メンバーのCarline Polachekは少女時代を東京で過ごしたことがある。

(6)Battlesが2007年に発表したファーストアルバム『Mirrored』に収録の「Atlas」。プログ・ロックを前面に出したサウンドを展開する絶ポスト・ハードコア・グループは、そうそうたるメンバーも話題に。メンバーで最も有名なのは、パンク・メタルバンドHelmetのドラマーJohn Stamierと、ニュー・ジャズの巨匠Anthony Braxtonの息子Tyrondia Braxtonだろう。イギリスの名門レーベルWarp と契約しているバンドは特に日本で人気が高く、まだ無名だった彼らをいち早く日本に紹介したDotlinecircleのKatoman氏に捧げる楽曲をレコーディングしている。

(7)School of Seven Bellsのデビューアルバム『Alpinisms』収録曲の「Half Asleep」。元Secret MachinesのBenjamin Curtisと元On! Air! Library!の双子姉妹、Alejandia &Claudia Dehezaから成るグループ。美しいヴォーカルに彩られた軽快で魅惑的なサウンドが特徴。

(8)!!!の「The Most Certain」。6月に発表したばかりの最新4thアルバム『Strange Weather, Isn’t It?』に収録。カリフォルニア出身のメンバーを含めたエネルギッシュな6人組によるファンク・マシーン、!!!。前回のフジロックでのパフォーマンスも大評判、今年はベストアクトの1つとも言われている。10月には再来日し、東京と大阪での単独公演ツアーが決定している。

(9)Matt & Kimの「Daylight」。5月に発売された2ndアルバム『Grand』収録のシングル曲。2010年ブレイク必至のこの男女デュオ、アメリカではBacardi社のCMや人気テレビドラマ『Entourage(邦題:アントラージュ★オレたちのハリウッド)』に起用され話題になった。シンセとドラムのみというシンプルな編成から繰り出される、ポップで、ダンサブルで、パンキッシュで、そして手づくり感満点のサウンドのローファイ・ダンス・パンクは非常にパワフルだ。このパンク精神とインディー感覚と圧倒的なメロディーセンスで北米では既に絶大的な人気を得ている。

(10)Gang Gang Danceの「House Jam」。2008年に発表の4thアルバム『Saint Dymphna』収録曲。トライバルなリズムのアプローチで、催眠状態に誘うようなサウンドを展開する。「House Jam」の魅惑的なグルーヴはイギリスのFlorence & the Machineから借用しており、きちんとクレジット表記されている。ライヴ・バンドとしても定評のある彼らは、すでにBoredomsとのツアーや来日公演の経験があり、9月26日に東京・お台場で開催される都市型オルタナ野外フェスティバル<neutralnation 2010>に出演する。

この他にもAnimal Collective、Antibalas、Au Revoir Simone、Black Dice、Drums、Grizzly Bear、MGMT、the National、2010年のサマソニでのパフォーマンスが評判のDarwin Deezなどなど、ブルックリンから人気のバンドが続々と登場している。今後も'ooklynシーンの音楽からは目が離せない。

キース・カフーン(Hotwire)
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