サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ、来日インタビュー<後編>

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<サマーソニック2010>に出演のため来日を果たし、短い日本滞在を満喫したサーティー・セカンズ・トゥ・マーズ。「東京で暮らすことになったとしても、何ひとつ困ることはないはずだ」とまで語るメンバーたちの会話が「うどん」や「原宿のクレヨンハウス」にまで及んだ《前編》に続き、今回の《後編》では、まさに現代のマスターピースと呼ぶに相応しい最新アルバム『ディス・イズ・ウォー』と、彼らならではのライヴ・パフォーマンスについて語ってもらった。もちろんそうしたシリアスな話題でも、笑い声が絶えないのがこのバンド。それにつられてこちらが笑っているうちに、真顔で核心発言をしてしまうのがジャレッド・レトという人物だったりもする。

■人生という旅には、実にたくさんの闘いが用意されている。
■ただ、俺はそうした闘いから逃げようとは思わない。

――『ディス・イズ・ウォー』が欧米でリリースされてからすでに半年以上が経過しているわけですが、今でもこのアルバムには満足していますか?
シャノン:もちろん。依然として新しい。いまだに新鮮さは損なわれていないし、今でも誇りに思っているよ。満足感がより大きくなってきた気さえする。

ジャレッド:このアルバムからはすでに、たくさんのギフトをもらってきた。わずか6~7ヵ月間ほどのうちにね。素晴らしい経験をたくさんさせてもらったし、エキサイティングな旅をずっと続けてこられた。このアルバムのおかげでね。

トモ:同感だな。たったこれだけの時間経過のうちに、本当に数多くの素敵な経験を得てきたからね。ただ、いまだに「ライヴでいかにして演奏すべきか」という部分について学習しているようなところもあるんだけども(笑)。ツアー中、プレイしていて毎日のように新しい発見があるんだ。「ああ、ここはライヴではこうしたほうが良かったんだ」みたいなことが常にね。

ジャレッド:それは俺たち全員にとって同じことだと思う。

シャノン:まったくだ。

――アルバムが完成したとき、「素晴らしいものができた!」という興奮と同時に、「これは厄介なことになりそうだぞ」というのもあったんじゃないですか?

トモ:うん(笑)。再現することが大変なのは、最初からわかっていたからね。

――今作は、これまで以上に空間的な広がりを感じさせる作品になっていますよね。それを表現するには何かを足していけばいいというわけではないだろうし、そこがすごく難しいんじゃないかと思うんです。これまでやってきたことだけでは足りないというか、仮にトモが“単なるギタリスト”であったなら成立し得ないというか。

トモ:もしかして、俺のことを責めてる?(笑)でも、アルバムというのはあくまでひとつの作品として、独立したものとして作るべきものだと俺は思う。いわばライヴとはまったく別個のものだよ。スタジオで徹底的に追求しながら構築したものを、ステージ上で完璧に再現するなんて不可能なことだし、それに挑むことがライヴだとは思っていない。だからそこは、違った方法論で臨めばいいと思うんだ。

――ええ。たとえば何度もライヴで演奏を重ねてきたことによって、あなた方自身のなかでアルバム自体の印象が変わってきたようなところもあるんでしょうか?

ジャレッド:作品自体がより生命を持つようになってきた、と言ったらいいのかな。最大の変化はそこにあると思う。多くのオーディエンスと共有してきたことによって、より生命感のあるものになったというか。実際、このアルバムにはファンの歌声が入っていたりもするわけだけど、それは、言い換えれば彼らがバンドの一員であるのも同然だということ。音楽を共有するうえで、他の大多数のバンドたちの作品以上に、効果的なギヴ・アンド・テイクが成立している。そんな言い方もできるんじゃないかな。今後もそれは続けていきたいと思っているよ。未来について断定的な言い方をするのには無理が伴うこともあるけど、こうした関係性に則ったアプローチはこれからも繰り返していきたい。1曲1曲はショウのために構築されたもの。俺はそう考えているからね。

――すごく具体的なところで言えば、ファンによるコーラス・パートが音源中に存在していることで、観客もあらかじめ、どこを自分たちが歌えばいいかを知っているわけですよね。

ジャレッド:そう。そういった教育的過程はアルバムを聴き込んだところですでに終了しているんだ。

――つまりライヴは、ファンにとっての試験ということ?

ジャレッド:そういうことだ(笑)。

トモ:そして言うまでもなく、日本のオーディエンスは見事にそれをクリアしたってわけ。

――その言葉を聞いてホッとしました(笑)。

ジャレッド:実際、<サマーソニック>のオーディエンスは素晴らしかったよ。同時に、ああいったフェスでは、他のバンド目当てで観に来ている人たちも多いし、このバンドのことをよく知らない人たちもたくさんいる。それはそれで素敵なことだけども、自分たちが本当に最高だと思えるような相互作用が得られる機会では、必ずしもない。自分たちの単独ライヴでは、もっともっとクレイジーなことになるからね。なにしろその場にいるすべてのファンが、いつ、どこで、何をどうすべきかをすべて熟知しているわけだから。

◆2ページ目に続く
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