OGRE YOU ASSHOLE、初のUSツアーで見せたジャパニーズ・オルタナティヴ・ロックの在り方

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初のアメリカツアーを行っているOGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)。インディ系バンドのUSツアーといえば、狭いガレージをドサ回りする過酷な内容を思い浮かべてしまうが、今回は人気バンド、ウルフ・パレードのサポートということもあり、ツアーの会場はほとんどが1500~2000人収容の大型ライヴハウス。どこへ行っても熱心なファンが待っているという恵まれた状況だ。その中の中盤戦となるアトランタの「Variety Playhouse」(11/12)、そしてオックスフォードの「The Lyric Cxford」(11/13)で行なわれた2公演を追いかけた。

◆OGRE YOU ASSHOLE“U.S TOUR (Wolf Parade TOUR support)”画像

耳の肥えたミュージシャンを中心に、数年前から話題となり、“オウガのセンスは別格だ”、“オルタナティヴ日本代表”だと騒がれてきた彼ら。外国でもきっと遜色ないはずだという期待は多くのファンが共有するものだろうが、実際の現場を観て安心、そして納得。

彼らは地元のファンやメディアから大きな賞賛を浴びながら、妙に浮かれることも必要以上に構えることもなく、いつもどおりのライヴを続けていたのだ。大きなトラブルも移動のストレスもさほどないようで、あくまでフラットなテンションだったところが彼ららしい。

夜9時頃からのんびり始まるライヴ。メイン目当てに集まる観客は10時を過ぎた頃から本格的に増えていくため、オウガ登時の客の入りはまだ1/3程度といったところ。若者だけでなく中年層も多く見受けられるから、ただでさえ若いメンバーはあどけない子供にしか見えないかもしれない。“最初は様子を見ましょう”という感じの対応は、とても自然なものだったと思う。

しかし「ステージ」から「ヘッドライト」、そして「ピンホール」と曲が進んでいくうち、反応は目に見えて変わっていく。うきうきと体を揺らす者、唐突に笑顔で踊りだす者、激しくジャンプしだす者。日本語の歌詞は意味不明だろうし、単純コール&レスポンスなどもない音だが、リスナーそれぞれがふっと魔法にかかっていくように音のなかに吸い込まれていく。奇妙なエフェクトの効いた馬渕のギターが覆いかぶさってくる瞬間、また淡々としていたリズムが一気に加速していく瞬間など、次第にフロア全体の温度が目に見えて高くなっていくようだった。

3曲目を過ぎたところで簡単な自己紹介が終わり、すぐにまた演奏へ。新作からの「バランス」に続くのだが、奇妙なほどポップでユーモラスなこの曲は、今のオウガの真骨頂だろう。無邪気な少年のような愛らしさ、思わず頬が緩んでしまう親近感。しかし近づいてみれば得体の知れない空洞が広がっていて、あっという間に知らない世界へと運ばれてしまう。約45分のステージが終わる頃、気づけば満員に近くなっていた会場中は、すっかりオウガ・ワールドに陶酔していたようだ。

いまや海外はさほど遠くないし、日本のバンドが海外に行くという話自体は珍しくないものになった。だから今回のツアーも「いよいよ海外進出!」と力んで紹介するものではないだろう。だが、地元長野で落ち着いた日常生活を過ごしながら、次々と強烈な作品を作り、ふと思いついたようにアメリカツアーも成功させてしまうというオウガ・ユー・アスホールのスタンスは、誰よりも新しく挑戦的なジャパニーズ・オルタナティヴ・ロックの在り方なのかもしれない。彼らの可能性はまだまだ計り知れない。

取材・文●石井恵理子

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