銀色夏生、家族で作ったバンド“山元バンド”を語る

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詩人、作家、エッセイスト、写真家、さらにはイラストもマンガも描く。幅広い表現で根強い支持を集めている銀色夏生が、自主音楽レーベルを立ち上げ、その第一弾として“山元バンド”名義でシングル「ハイネ/神聖な想い」をリリース。ハッとする言葉が光るその世界観は、透明感に溢れ、切なく深くて珠玉。本作に込めた想いとは。20年ぶりの作詞再開について。今後伝えていきたいものとは。昨年まで表立った場所にはほとんど出てくることのなかった彼女が、飾らず、まっすぐな視線で、真摯に語ってくれた。

取材・文●赤木まみ

――今年に入ってからの銀色さんは驚くほど“開かれて”ますよね。詩集、エッセー、小説と次々発表されている他に、ツイッターを始めたり、ラジオに出演されたり、取材もけっこう受けられてて。

銀色:そうですね。

――以前、取材は受けないって、ご自身の著書でも書かれていましたが、何か心境の変化があったんですか?

銀色:私、完全に変わったんだと思う。去年1年間すごい落ち込んでて、その時に変わらなきゃいけないと思ったのね。このままここにいても楽しいことがないから、来年から変わろうって。でもそれは私の表面的な意識であって、深い意識ではそういう時期が来たんだと今は捉えてる。

――人って、例えば知らない人と対面するのが元々苦手な人は、変わろうと思っても、いざ人と会うと疲れてしまったりっていうことがあると思うんですけど、そういうのは……。

銀色:いや、そのレベルじゃないんですよ、“変わる”っていうのが。だって私、人前で話すのも苦手で、そんなことは絶対できないと思ってたんです。それが今は全然平気なんですから。だからなんか、自分のいる場所が変わった感じ。あと、今は言いたいことがあるから恥ずかしくないんじゃないかな。言いたいことがあるってことは、お腹がすいたから何か食べたいのと同じで、自然なことでしょ? だから全然恥ずかしくなくなったんだと思う。

――実際、いろいろ取材を受けてみて、いかがですか?

銀色:やっぱりね、パワーがいる。すごいじゃない? 来る人も、私も、生きてるから。だから疲れるんだけど、でも、自分が書いてきたものをずっと読んでもらってたっていうところで、確実に生まれていた何かがあるんだなって。それを必ず実感します。だから私、“いろんなところに会いに行きます”って今言ってるんだけど、待っててくれた人全員に会うつもりなんですよ、これから。

――ファンの方たちはメチャメチャ嬉しいと思います。その“開かれた銀色”さん。

銀色:はははは。

――で、そんな銀色さんが今回、山元バンド名義でシングル「ハイネ/神聖な想い」をリリースさることになりました。この山元バンドのメンバーというのは?

銀色:今のところ、歌ってるカーカっていう長女ひとりなんですけど。そのうち、甥のたいくんっていう男の子とか、さくっていう息子も入ってくれたらいいなと思ってます。

――そもそも、バンドを始めようと思ったのはどういうことから?

銀色:最初は冗談だったんですよ。カーカがギターをやってたから“(家族で)バンド作って、You Tubeにアップしようよ”って。で“みんなが歌う歌は私が作るから”って、曲を作りを始めたんですけど。私が作る曲って変わってるらしく、どうも定石を踏んでないみたいで、人に頼んでもデモテープができないんです(苦笑)。それでもちょっとずつ作ってたら、「新しい曲を聴きたい」って身内に言われて。じゃあ今、私は何がしたいかな?って考えた時に、たくさんの女の子が共感するような歌を作りたいなと、ハッと浮かんで。そこからバーッと出てきたんですよね、「ハイネ」の詞のもとになるような物語が。

――「ハイネ」はまさに女の子だったら誰もが共感できる歌詞ですよね。私は1行目からやられました(笑)。しかも全体に、10代とか20代前半の人が書いたとしか思えないみずみずしさが溢れていて、その点も驚きでした。

銀色:私は、沸き上がってくるんですよ、そういう気持ちが。

――それは、10代の頃を思い出して書いたとかではなく?

銀色:いや、10代の気持ちになるって、ちょっと遠い感じがするでしょ? それよりももっと近い感じ。何て言うんだろう……人と人って最終的に繋がってて、共通感覚とか共感する世界みたいなのがある気がするんです。で、そこと私は繋がってるんじゃないかな。だから(共感を呼ぶ詞は)そこから出てくるんじゃないかなって思うけど。
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