竹内まりや、自分で決めた音楽との関係

ポスト
2010年12月4日、日本武道館で行なわれた竹内まりやの10年ぶりのライブ<souvenir again>、彼女の生き方を象徴するステージとなった。

オープニング、白いロングドレスにシルバーの上着、ギターを抱えて登場。彼女が歌い始めた瞬間、その世界に引き込まれる。ライブは10年ぶり、テレビもNHKで放送された「SONGS ~人生の扉~」以外では彼女を見ることがなかったのに、なぜかとても近くに居てくれたような感覚。そう、CDでしか繋がっていないのに、彼女の存在感はとても大きい。

途中、シルバーの上着を脱ぎ、白いロングドレスに。MCでは自分と音楽の関係を語った。デビュー後、約3年間の芸能活動を含めた音楽活動ののち、家庭に入った彼女。そこには明確な理由があったこと。3年間の活動で彼女が音楽に対して考えたことがあったのだ。しかし、音楽は家庭に入って片手間にやることではないという気持ちもある。しかしオファーをうけて、楽曲提供をはじめたという話。

彼女の音楽との関わり方は、音楽をする人間としては、本当にレアケースだが、彼女はそれをひとつのスタイルとして確立させている。家庭人としてしっかり生活をしながら、プロとして音楽の制作も行なう。女性としてとても憧れる生き方。しかし誰にでもできることではないし、憧れるけれどとても難しいことだということも分かる。

そしてそれが実現できたのは、彼女自身も語っていたが、人生のパートナーである山下達郎の存在が大きい。同じ音楽の世界で生きるパートナーと暮らすことで、音楽との素敵な距離ができたのだろう。そして今回のライブのバックバンドは、山下達郎率いる超豪華なメンバー。そんな男性たちを引き連れて、マドンナ竹内まりやは彼女の世界を歌う。

彼女の歌は、とても具体的で自分に置き換えてしまうものから人生という大きなテーマを歌ったものまで幅広い。それが彼女の生き方そのものなんだろうなと思う。そして、その歳ごとに彼女は自身が思うことを大切に言葉にしている。

ライブの途中、今回のライブについて還暦前にはやりたいと思っていたけれど、オファーがあって今なんだと思って決めたというような発言があった。還暦という言葉にちょっとビックリしつつ、改めて彼女の年齢を思った。確かにそうなんだ。でもステージの上の彼女は、とてもキュートで、アクティブで、ビューティで、クレバー。ダンナ様をリスペクトしていることもしっかり伝わってくる。

オリジナル曲以外にも、楽曲提供しセルフカバーしている曲も披露。薬師丸ひろ子に提供した「元気を出して」。この曲は、自分でも歌うたびに元気になるという言葉も。そしてステージの隣でギターを弾く佐橋佳幸の奥様である松たか子に提供した「みんなひとり」。そして名曲「駅」も聴かせてくれた。

彼女の存在は多くの女性の憧れであり、自分の生き方は自分で決めていいんだと勇気をくれる人。だからこそ、彼女の曲は聴き継がれている。

ライブの途中には、市場調査的に10代から70代の人まで拍手で人数をチェックするシーンも。これがまた、とっても楽しくやってくれるから脱帽だ。圧倒的に多かったのは、50代、40代だったが、10代、70代の人も会場には来ていた。これこそ彼女の歌の力だ。

本編のラストは「人生の扉」。日々を大切に生きてきたからこそ創ることができ、歌うことができる1曲。彼女がライブで、こんなにも自分のことを話をしてくれるとは思わなかった。楽しくて笑っちゃうことも、そして深く考えることも。歌とは別に彼女の発言がとても心に響いた。

そしてアンコール。赤いTシャツに膝までの白いという超キュートな姿で現れた彼女は「不思議なピーチパイ」「September」を歌う。声が詰まったのは、涙? 席が遠くて確認できなかったけれど、そんなシーンもあった。

そしてラストは、ピアノの弾き語りで茉奈佳奈に提供した「いのちの歌」。この歌詞は、初めてペンネームMiyabiで書いたものとのこと。生きていく意味を歌ったこの歌が、じわりラストに身体に染みた。

<ケンタッキーフライドチキンPresents TOKYO FM/FM OSAKA 開局40周年記念スペシャル「souvenir again」竹内まりや LIVE 2010>
2010年12月21日(火)
@大阪城ホール
17:30開場/18:30開演(オープニングアクト:センチメンタル・シティ・ロマンス)
2010年12月22日(水)
@大阪城ホール 17:30開場/18:30開演(オープニングアクト:BOX)

◆竹内まりやオフィシャルサイト

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
この記事をポスト

この記事の関連情報