「10年経って帰って来たら、以前よりもかっこよくなっていた」なんて、そんなバンドがこれまでどこにどれだけいただろう。5人全てのメンバーがいくら現役だとはいえ、バンド全盛期に起こした若きバンドマジックをいとも簡単に再現し、次の次元でさらなる化学反応を起こすなんて、そんな都合のいい奇跡のシナリオは見たことも聞いたこともない。

◆LUNA SEA 東京ドーム3days画像他

でも、17万5千人がそれを目撃している。これは後世にも語り継がれる音楽史に刻まれた事実だ。

元来いつでも「時」は残酷なもの。時は人にキャリアとスキルを与え、代わりに若さゆえの過ちを奪う。勝ち得た「安定」は素晴らしき芸術を生み出す最大の武器となるが、進化を失ったものはいずれ朽ち果てるものだ。LUNA SEAは己の身に迫る危険を察知し、自ら鼓動を止めた。RYUICHIは2010年12月25日、東京ドームのステージから自らの口でこう語った。「LUNA SEAはでっかいバンドになりました。でかくなりすぎて、自分たちの手の長さ、足の長さを忘れてしまった」と。進化もしないが退化もしない状態にLUNA SEAを置き、彼らは5つの旅路に出た。10年前の話だ。彼らはそれを終幕と呼んだ。

そして2010年。変化すること、進化すること、そのためのエネルギーは5人5様のメンバーが持ち寄り、それぞれがLUNA SEAというモンスターに投げ込んで見せた。5つのエネルギーは鮮烈な化学反応をみせ、LUNA SEAの鼓動がドクンと波打った。それだけでも奇跡だ。未だやんちゃなメンバー5人は、素直に喜び、LUNA SEAというモンスター・マシンの乗り心地を再確認したことだろう。「すげえな、LUNA SEA、カッコいいぜ」…さしずめ、そんな感想だったのではないだろうか。

彼らは23日には「Days of Repetetion」を、24日には「Maria」という別の新曲を披露した。滑らかなメロディとキャッチーなビートを毒々しいプレイで飾り付けた極上の楽曲を、挨拶代わりに産み出してみせた。

彼らはいたずらっこのように、既に形骸化し存在すらしないと思われたLUNACYという器に、20年ぶりにエネルギーをかざしてみたわけだ。するとどうだ、そこから発せられた閃光の輝きは、5人のメンバーにも眩しく妖しいものだったのではないか。25日に登場するLUNACYは、シナリオライターには決して描けない、バンドマジックの奇跡の象徴となった。

25日はRYUICHIも真矢も髪をぶっ立てて現れた。用意された曲目はそのほとんどをインディーズ・アルバム『LUNA SEA』とメジャーデビューアルバム『IMAGE』からピックアップ、中には、LUNACY時代のデモテープ作品「SUSPICIOUS」「NIGHTMARE」といったレアな楽曲も飛び出した。アンコールの最後には、大曲「MOTHER」をも披露してくれた。自分の胸の奥にしまわれた甘酸っぱい部分を刺激され、大事な楽曲をシャワーのように浴び、涙がとまらなかったオーディエンスも続出したはずだ。

そして、12月23日、24日、25日を経て、認めなくてはいけない明らかとなった事実がもうひとつ。SLAVE達のエネルギーの高さだ。言葉にするまでもなく、ライブはアーティストとリスナーの呼吸であり、ステージ・サイドとオーディエンスとのエネルギーの交換の場でもある。オーディエンスのパワーがアーティストに還流しうねりを生み出し、会場一体となった感動を共有して初めてライブが成立する。ライブの善し悪しは、オーディエンスに委ねられる点も大きい。

「俺たちは5人でグルーブしている。(SLAVE達は)5万人でグルーブしているからカッコイイね」。そう語ったのは24日アンコールで再登場した時のRYUICHIのセリフだ。実際、この日のアンコールにはちょっとした奇跡が起きていた。SUGIZOのギターのノイズ音を残して本編が終了したのち、会場から一向にアンコールの手拍子も掛け声も上がらないのだ。通常では考えられない光景だが、静まり返った会場でどこからともなく聞こえ始めたのは「きよしこの夜」の歌声だった。予定調和のアンコールを避け、メンバーがステージを降りたその静寂の空間で、SLAVEたちは12月24日の夜に奇跡の協演を産み出し、まもなく「きよしこの夜」は5万5千人の大合唱となって東京ドーム中に響き渡った。

RYUICHIが言うように、聖なる夜のメロディでLUNA SEAを再び呼びだしたSLAVEの一体感こそ、バンドに勝るとも劣らない奇跡のグルーブだ。SLAVEは、10年間LUNA SEAが終幕していた間も常に存在し続けていた。LUNA SEAを見守りLUNA SEAを愛し、LUNA SEAを育む母なる大地「MOTHER」のようなSLAVEの存在こそが、2010年のLUNA SEAを目覚めさせたに他ならない。

東京ドーム3Daysを制覇した人がどれほどいたかは分からないが、日を重ねるたびにサウンド・クオリティーが上がっていくLUNA SEAの末恐ろしさと、LUNA SEAのポテンシャルをぐいぐいと引き出すSLAVEたちのエネルギーの巨大さ、これこそが驚異であり驚愕であり奇跡であった。そしてこの関係性こそ、今の音楽シーンが失いつつあるアーティストとオーディエンスが取り持つ純潔の契りの理想形であることが浮き彫りとなった3日間でもあった。

軽薄短小なムーブメントに翻弄されている今の日本の音楽状況に、目覚めのカウンターをお見舞いしたLUNA SEAとSLAVE。この3日間にわたる濃密な共演の様子は、人々の口々でしっかりとじっくりと日本中に伝達させていく必要がある。

text by BARKS編集長 烏丸

<LUNA SEA 20th ANNIVERSARY WORLD TOUR REBOOT -to the New Moon- >
2010年12月23日@TOKYO DOME
1.LOVELESS
2.PRECIOUS...
3.G.
4.SLAVE
5.TURE BLUE
6.Sweetest Coma Again
7.LUV U
8.gravity
9.UNTIL THE DAY I DIE
10.VIRGIN MARY
11.Dr & BASS Solo
12.Bea Awake
13.BREATHE
14.STORM
15.DESIRE
16.TIME IS DEAD
17.ROSIER
18.TONIGHT
EN1.I for You
EN2.Days of Repetetion(新曲)
EN3.Dejavu
EN4.IN MY DREAM
EN5.WISH
EN6.FOREVER & EVER

2010年12月24日@TOKYO DOME
1.Time Has Come
2.Dejavu
3.JESUS
4.END OF SORROW
5.SHINE
6.FACE TO FACE
7.gravity
8.RAIN
9.Providence
10.GENESIS OF MIND~夢の彼方~
11.Dr & BASS Solo
12.IN FUTURE
13.I for you
14.STORM
15.DESIRE
16.TIME IS DEAD
17.ROSIER
18.TONIGHT
EC1.IN SILENCE
EC2.Maria(新曲)
EC3.BELIEVE
EC4.LOVE SONG
EC5.PRECIOUS
EC6.WISH

<Lunacy 黒服限定GIG ~the Holy Night~>
2010年12月25日@TOKYO DOME
1.FATE
2.Dejavu
3.MECHANICAL DANCE
4.IMITATION
5.Image
6.SLAVE
7.BRANCH ROAD
8.SANDY TIME
9.SYMPTOM
10.SUSPICIOUS
11.SEARCH FOR REASON
12.Dr & Bass Solo
13.BLUE TRANSPARENCY限りなく透明に近いブルー
14.SHADE
15.CHESS
16.TIME IS DEAD
17.PRECIOUS...
18.NIGHTMARE
EC1.ROSIER
EC2.MOTHER