-異種格闘技対談-Ring【round2】第15回/真鍋昌平(漫画家)

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-異種格闘対談-Ring【round2】第15回

真鍋昌平(漫画家) / 逹瑯(Vo) ムック

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逹瑯:俺、バンドの世界観とか自分のキャラクターとか、普段はあんまり気にして生きてないんですよね(笑)。
真鍋:あぁ、Twitterとかも垂れ流しですもんね(笑)。

真鍋:なるほどなるほど。逹瑯さんは少年漫画が好きなんですか? 『ONE PIECE』が好きなんですよね?

逹瑯:『ONE PIECE』大好きですね。あとは、古谷実さんの『ヒミズ』が大好きなんですよ。めちゃめちゃ暗いですよね。あの暗さが大好きで。

真鍋:ほほぉ。逹瑯さんって吉井和哉さんお好きなんですよね? BARKSでの対談を読んで来たんですけど、もともと長渕剛さんとかお好きだって言ってて。曲も暗めの方がお好きなんですか?

逹瑯:暗い曲好きですね。

真鍋:昔はその感じがすごく前面に出ていらっしゃいましたけど、最近のアルバムでは暗くコアな感じというよりは、広い層の人たちに向けて作られている気がしたんですよ。初期の頃のドロドロした感じって今はもうやらないんですか?

逹瑯:いや、根本や好きなモノってあまり変わらないので、初期のムックの要素がまったくなくなるということはないと思うんですよね。今でも、初期の音も歌詞も自分的に好きだし、聴くのもやるのも、やっぱ暗いモノは好きなんですよ。実際に自分たちが経験したことや感じたことを歌詞や曲として作品にしていこうとすると、まだ32歳なんで限界があるんですよね。昔はきっと、鬱積した想いを吐き出して浄化させたいっていうところが強かったと思うんです。それは、実際に感じたことを吐き出していたから。けど、やっぱりまだ32歳だから、これから経験することもまだまだたくさんあるわけで。経験したことで、またそういう鬱積した感情というのが生まれてくると思うんですよね。そういう感情が生まれてきたときじゃないと、昔みたいな歌詞って書けないと思うんです。フィクションじゃ書けないというか。ノンフィクションじゃないと薄っぺらくなっちゃうと思うんで、そういう歌詞って。そういう暗い感じのリアルな歌詞を歌うなら、やっぱり嘘は歌いたくないんで。今は、今で想うことを書いているとこうなるっていう感じなんですよね。だから、根本的に好きなモノは変わっていないです。暗いモノとか悲しいモノって今も大好きなんで。

真鍋:それは生い立ちとか関係しているんですか?

逹瑯:いや。俺の場合はそこはあんまり関係してないですね。単なる好みなんだと思います。

真鍋:逹瑯さんのご実家は美容室なんですよね? ご自身も美容師を目指していらした。

逹瑯:はい。でも、バンドを始めたらバンドの方が楽しくなっちゃって。たぶん、それがバンドじゃなくて他のモノだったとしても、その夢中になったモノに没頭していったと思うんですよね。何でも良かったと思うんです。でも、そのとき出逢ったバンドというモノの中で歌詞を書いたり歌を歌っていくというところで自分を一番吐き出せたから、それが楽しくなっていったんだと思うんです。自分を表現できると思える場所が、絵や小説や漫画だったとしたら、きっとそっちに向かっていたと思います。そういう意味では、どうしても音楽がやりたかったっていう感じで始めた訳ではなかったんですよね。

真鍋:なるほど、そうなんですね。バンドのヴォーカリストでこうやって対談の連載を持ってる方って珍しいと思うんですけど。対談って自分が話すだけじゃなく、相手に合わせないといけないリスクもあると思うんですよ。それをやることで、ムックの逹瑯としてのイメージが崩れるとか、そういうリスクは考えないですか?

逹瑯:あぁ、それはないですね。俺、バンドの世界観とか自分のキャラクターとか、普段はあんまり気にして生きてないんですよね(笑)。そのまんまで生きてるというか。

真鍋:あぁ(納得)。Twitterとかも垂れ流しですもんね(笑)。

逹瑯:そうなんですよ(笑)。別に表に出るキャラクターは何でもいいんですよ。馬鹿でもいいし。逆に真面目になってるとこを見られたくないかも。常におちゃらけていたいんですよね。ステージの上にいるときだけピシッとしてたら、それ以外ではどう思われてもいいと思ってて。俺、いろんな話を聞きたいんです。だからこの対談とかもすごく好きで。

真鍋:なるほど。ムックって、アルバム何枚か聴かせてもらったんですけど、1曲目と最後の曲って繋がっているように作られているんですか? 一枚でひとつの世界観をすごく上手く表現しているなって思ったんです。

逹瑯:そうですね。ド頭の1曲目と2曲目3曲目の流れと、1番ケツの曲は1番大事だと思ってるんで、そこの流れはすごく考えて作ってますね。

真鍋:アルバムごとにいつもテーマがあるんですか? 曲調を揃えようとか。

逹瑯:いや、曲調をどうこうと言うより、ウチのバンドは楽曲のメイン・コンポーザーがギターでリーダーのミヤなので、リーダーがそのときに興味を持ったモノがモロに出てるって感じなんですよね。それにバンド的に面白そうだなって思ったことをその都度出して。だからいつも、結果こういう感じになりましたっていう感じなんですよ。

真鍋:毎回曲調とジャケットのイメージがすごくリンクしてるなって思ったんですけど、そこもやっぱりこだわっているんですか?

逹瑯:ですね。アートワークもこだわってますね。

真鍋:ムックっていうバンド名の付け方も面白いですね。雪男のムックから取ってるんですね!

逹瑯:そうなんです(笑)。地元の友達がバンド名決めてるときに“ガチャピンでいいんじゃね?”って言ったことをきっかけに、だったらムックの方がまだいいよって(笑)。ガチャピンに比べてムックってメイン・キャラクターじゃないから、一歩引いてるちょっと影の存在っていうのもいいかなって。そういうの好きなんですよ、メンバーも。昔っからちょっと捻くれたとこあって。捻くれものが集まってる気がしますね(笑)。

真鍋:ガチャピンとムックは子弟関係なんですよね。

逹瑯:そうなんですか!?

真鍋:はい。ウィキペディアで調べたんですけどね(笑)。

逹瑯:あははは。

真鍋:逹瑯さんは、ミヤさんが書かれた歌詞の方が感情的に歌われる気がしたんですけど。

逹瑯:不思議なもので、自分の書いた歌詞って、書いた時の心境から時を経てだんだんそのに込めた感情も変化していくんですよ。だからその時々によって歌い方も変化したりするんですけど、人の歌詞は変化しないんです。共感できる部分もあるけど、作詞者がそこに書いた想いを代弁する気持ちで歌うから、そこは最初に歌ったときと感情が変化しないんです。だからそう感じるのかもしれないですね。何年経っても変わらない。

真鍋:ダメ出しとかあるんですか?

逹瑯:ありますよ。“ここはもうちょっとこう歌ってほしいんだよね”とかっていうやりとりを擦り合せていく作業をします。バンドは共同体だから、自分がやりたいことを人に押し付けるだけじゃダメだと思うんですよ。それぞれがやりたいことをみんなで代弁してあげるものだと思うんで。だから、ダメ出しとかあって当然だと思うし。リアルに伝えていくためには必要不可欠なやりとりであると思いますね。

真鍋:なるほど。結成14年ですよね。解散とかは考えてないんですか?

逹瑯:解散は考えていないですね。いま走っている途中なので、解散を考えては走らないと思うから。いずれそういうときが訪れたときは、きっとそれなりにそういう決断をする何か大きな理由があるんでしょうけど。今は考えてないですね。

真鍋:ムックが目指す方向ってあるんですか?

逹瑯:なんですかね? 昔からあんまり目標とかないんですよ。昔から、いま、いま、いま、で生きてきてるんで。こうなりたいっていう明確なヴィジョンを持ったことがない。だからこうやって続いているんだと思うし。まぁでも逆にそこがダメなとこだったりもするのかもしれないけど。

真鍋:枠にはめるのが嫌なんですか?

逹瑯:ん〜。どうなんだろうな? やっぱカッコ付けるのが嫌なのかも。それだけですね。でっかいプライドって持った方がいいと思うんですけど、小せぇプライドは要らないと思うんですよ、俺。

真鍋:逹瑯さんが持ってるでかいプライドって何ですか?

逹瑯:俺の持ってるでっかいプライドは、自由でいることかな。作らないこと。それがでっかいプライドなのか解らないけど、そこはこだわりなのかなって思いますね。自然体でいたいし自由でいたい。

真鍋:自由じゃない瞬間ってあるんですか?

逹瑯:“こうして”って言われるのが嫌ですね。自分が共感できない部分での“こうして”は本当に嫌ですね。“こうしてみた方がいいと思うんだけど、どうかな?”っていう問いかけに対して、自分が面白そうだなと思えたら受け入れるんだけど。“こうした方が絶対いいから”って言われたことでも、自分が納得できないことはやりたくないんですよね。例えば、“こういう曲やったら絶対に売れるから”って言われても納得できなかったら絶対にやらないし。それを自分が納得したならやるし。

真鍋:いまは上手くやれてる感じなんですか? 自由に。

逹瑯:そうですね。やりたくないことや面倒なことをいっさいやっていないってことではないんですけど、ちゃんとそれを自分が納得できる形に持っていけてます。実際、バンドを仕事にしてると、しんどいこと多いですからね。製作に関しても、作詞をする作業は本当に楽ではない。そんなにつらつら書けるものでもないんで。でも、それが完成したときとか、ライヴでみんなの歓声を聴いた瞬間に、そのしんどさが全部飛んでいくんですよ。

真鍋:ライヴってそんなに楽しいんですね。

逹瑯:楽しいですね。

⇒NEXT INTERVIEW-3

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