福山雅治、『ホットスポット 最後の楽園』で感じた命の順応、進化、変化を語るロング・インタビュー

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NHKの大河ドラマ“龍馬伝”では坂本龍馬役を熱演、近年は活動のフィールドをさらに多岐に広げている福山雅治。その“龍馬伝”とともに、日本の放送文化において優れた番組を顕彰する“ギャラクシー賞”を受賞した番組が、彼がナビゲーターを務める『ホットスポット 最後の楽園』だ。その地表面積を合わせても地球上全体の面積の3%にも満たないにも関わらず、絶滅の恐れのある珍しいほ乳類、鳥類、両生類の約75%が集中しているという場所──。その未知の自然を自ら巡り、貴重な映像記録やメッセージを伝える『ホットスポット 最後の楽園』が最終回を迎えるにあたり、ナビゲーターの福山雅治がその体験談や、この旅を通して抱いた様々な心情を語ってくれた。最終回である第6回目に訪れた日本の長野県・上高地と沖縄県・西表島の思い出、現代社会における環境問題に対する想い……。人間・福山雅治、そして、アーティスト・福山雅治の素顔が垣間見えるじつに興味深いロング・インタビュー、ぜひ熟読してもらいたい。


▲樹氷(日本)
──今回、実際に日本の“ホットスポット”を訪れられていかがでしたでしょうか?

福山雅治(以下、福山):2月に長野の上高地に初めて行ったのですが、樹氷に朝陽が当たってキラキラとまぶしく輝いていてすごく美しい自然の場所がこんなに近くにあることに驚いたのと、ものすごく寒いんですけど、ここに猿がいるっていうことも驚きでした。西表島は4月でしたね。西表島は、このロケ以外でも数年前にプライベートで行ったことがあって、好きな場所だったんです。その場所にあらためて行って、マングローブの林の中でカヤックを漕いだり、ジャングルの中をトレッキングして、新たに色々知ることができました。今、ちょうどナレーションを録ってきたんですけど……。ナガレタゴガエルとか、すごい面白いんです(笑)。メスだと思ったものに何でも飛びついていっちゃうっていう、なんかこう、男としてグッとくる……(笑)。

──日本も“ホットスポット”であるということは、福山さんはご存知でしたか?

福山:僕も正直意外でした。絶滅危惧種というものが、本当にたくさんいるんですよね。ちょうど全国ツアーをまわっているので、各地方でちょっと調べていて、色んな発見や情報を知ることができます。


▲ナガレタゴガエル
──今回、色々な生物や植物を見てこられた中でどんなものが印象に残りましたか?

福山:光るアリ塚(ブラジル・セラードにて)っていうのは本当に美しい幻想的な景色だったし、美しい生き物でしたね。あとは、オスっていうのはやっぱり切ないなという(笑)。メスが選ぶんですよね、オスを(笑)。そういうところではナガレタゴガエル、マダガスカルのフォッサ。昇ってきたオスは全部受け入れるっていう(笑)。メスのためのオス同士の戦いが、とにかく大変。人間も、仕事を一生懸命にやるのは、仕事のためじゃなくて、やっぱりメスのためかなと(笑)。

──第6回の日本編で訪れられた上高地では、すごい雪の中でどんな動物に出会ったんですか?


▲ニホンザル
福山:上高地は、猿なんですよ。ニホンザルってやっぱり日本人は見慣れてるので、驚いたというか“知ってる知ってる!”みたいな。マダガスカルとかに行くと“これ、猿なのかな!?”みたいな驚きがあるんですけど、ニホンザルは、不思議と顔が日本人っぽいなとか思っちゃうんですよね(笑)。でも、そのニホンザルの生態というものに関してまでは知らない。それはたぶん、今回の“ホットスポット”で紹介する日本編すべてだと思うんですが……。オオサンショウウオが日本にいるっていうことは誰もが知っていると思うんですが、どんな生態なんだろうっていうことまでは調べない。でも、それがまさに自然と人間というものの関係を如実に表してるな、と。“そこにいて当たり前”だと思っているからそれほど大事にしてなかったような気がするんです。僕自身も、日本にいる生き物に関して、もっと極端に言うと、自分の家族のことは実はあまり知らない、とか(笑)。でも、新しく出来た友達とか恋人のことは根掘り葉掘り調べるみたいな、そういう距離感っていうのはあるんだなって。近くにいる人やものに対しては人間ってなかなか大事に思わなかったり、興味を持たなかったりするんだなっていうことを、今回の経験を通じて感じましたね。

──西表島に訪れるのは2回目ということですが、こちらはいかがでしたか?

福山:西表島は、生き物というより、森、マングローブがメインだったので……。巨大シジミですかね、生き物は(笑)。

──番組では葉っぱを食べている場面がありましたが、あれは食べて欲しいという要請があったからなのか、それとも……?(笑)

福山:あれは、僕自身が食べたいと思って食べてるだけです(笑)。猿も食べるから大丈夫かなと思って。あと、僕達も貝を食べるから貝が食べてるものなら食べてもいいかなみたいな(笑)。やっぱり、貝が食べているものが、海水に当たって塩味がついてる分、割と食べやすかったです。他のはもう、とても食べられたもんじゃないです(笑)。この番組では、ありのままそこにたたずんでカメラの中に存在している。だから、何もかもが無理がないというか、不自然な感じがないんです。誇りとするならば、そういう作為的なものがないっていうのが貫かれていることじゃないかと思います。リアクションとかも求められなかったですし。


▲日本・西表島
──今回の番組の制作中に大きな震災があって……。そのことで、『ホットスポット』を巡る旅の中で日本の見え方が違ってきたというようなことはありましたか?

福山:繰り返されてきた地球の歴史、地球という生き物の歴史ですが、ひとつの説があって……。元々アフリカもオーストラリアもくっついていて、それが長い長い歴史をかけて、地殻変動によってどんどんどんどん分裂していったという。そういうふうにナレーションで読んだり、CGで説明していたんです。今回も、日本列島が何メートルか動いたという話になっていますが、そういう地球というものをひとつの生命体と考えた場合、その生き物がどんどん変化していくなかで、我々は地表という場所を借りて生活しているわけなので、誰も、何も責められないということをあらためて感じました。そこで起こることというのは、地球そのものの活動なんだ。それを分かったうえで、今後どうやって我々人間が知恵を絞って生きていくかということが試されていると思うんです。

──NHKの自然番組では、今回のようにメッセージ性のある終わり方をすること、あるいはそのような内容の番組はこれまであまりなかったと思うんです。それは、福山さんご自身がそういうことを発しようと思って出てきたものなんでしょうか?


▲タガメ(日本)
福山:メッセージ性ということで言いますと、例えば、温暖化の原因は何なのかというと、CO2の大量排出のせいだと。ということは、それは人間自身が行っている経済活動、生産活動によって引き起こされている環境破壊である。大ざっぱにまとめると、そういうロジックで物事が進んできたのが1990年代以降の共通認識だと思うんです。今回の番組に自分が携わるときに、NHKのチームから、ありのままの自然を今現在知りうる知識の中で表現していく、それができればいいんですとおっしゃっていただいた事がすごく嬉しくて。僕らとしてはすごく強いメッセージ性を打ち出しているつもりはないんですが、現実、現状というものをリアルに切り取っていった結果、見てくださった方々がメッセージを感じてくれているのであれば決して悪いことではないと思っているんです。我々がやっているこの“ホットスポット”のブレちゃいけない軸というのは、ありのままを切り取って、ありのままに今感じているものを表現するっていうことなんじゃないか。“これはダメですよ!”“これをしましょう!”みたいなことを言うつもりは、けっしてないんです。人間だって、生きていくうえで必要なことは、もはや後戻りできないくらいのことでもたくさんあって。本当は、まったく電気を使わないほうがたぶん地球には良いと思うんですが、まったく電気を使わなかったら生きていけないわけで。戻れない生活をしている、戻れない文明をもう築いてしまったということで言えば、動物達と違う知恵を持っている我々人類が何をできるか考えていくべきじゃないか。なので、人間が偉いとかっていうことではない。ましてや、人間が悪者っていうように表現しているつもりもないんです。


▲オオサンショウウオ
──10代、20代の若い子達にはどういうことをこの番組から感じてもらいたい、自然にどういうふうに触れていってもらいたいと思いますか?

福山:ワクワクしてもらえたら一番良いと思います。当たり前に思っていることっていうのが、じつは全然当たり前じゃないっていう。10代、20代の子にも、自転車に乗れなかったのに乗れるようになった瞬間があったと思うんです。言葉を喋れるようになった瞬間もそうですが、出来なかったことが出来るようになるっていう瞬間こそがまさに“順応”であり、“進化”の根源であるということで言うと、生き物達が繰り返していることは、より極限状態に置かれた、生きるか死ぬかの瀬戸際での“順応”と、“進化”と、“変化”だと思うんです。でもそれは人間もじつは多かれ少なかれやっている。本当は人見知りで口ベタなんだけど、営業に異動した事によって喋れるようになった人とかも、それはある種生き物としての“進化”なわけですから。自分自身も“変化”、“進化”するのが可能であるということを、この様々な生き物達の“変化”や“進化”と照らし合わせてみてもらえるとすごくワクワクできると思うんです。


▲日本・長野・上高地
──最近、福山さん自身は何か“変化”を感じたことはありますか?

福山:そうですね……。昔のVTRを見る機会があって、細いんですよね(笑)。華奢だったんです。2000年ぐらいからトレーニングを始めるようになって。コンサートでも、やっぱり体力がないと続かなくなるなんて話を先輩方から聞いていたものですから、じゃあ早めにやっていこうと思って。今、42歳ですけど、3時間ほどステージをやってますが、たぶん何もトレーニングしてなかったら今みたいなステージはできてなかったかなとは思います。たまに、旅先でバッティングセンターに身体を動かしに行ったんですが、僕より10歳近く若いマネージャーは2ゲームぐらいしかやってないのに、1週間ぐらい身体が痛いって言ってるんです(笑)。でも、僕はやるときは10ゲームぐらいやるんですが、平気(笑)。身体をちゃんと使ってるというか、トレーニングしてるとこういう差が出るんだなっていうのを感じてます。引き続き、力強いパフォーマンスをするためのトレーニングは続けるだろうなと。そうやって身体を鍛えて、順応させていかなければ。その年代なりに進化させていかないと、やりたいパフォーマンスというのは出来ないんだなっていうことは、毎年実感しています。

◆福山雅治 オフィシャルサイト
◆NHK『ホットスポット 最後の楽園』オフィシャルサイト
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