【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]Vol.4「THE 構築美」

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1970年代前半、キング・クリムゾン、ELPなどの活躍により黄金期を迎えるプログレッシブ・ロック。最重要バンドのひとつとして今回ご紹介するのが“イエス”です。

上記2バンドがデビューアルバムから、いきなり完成されたサウンドで世間をあっと言わせたのに比べると、イエスはコツコツ型?、徐々に自分達のサウンドを完成させていった良い例です。デビューは1968年、個性的なハイトーンヴォイスのジョン・アンダーソンを中心に、抜群のコーラスワーク、テクニカルな演奏で頭角を現します。とかく“暗さ”が売りのプログレ界にあっては珍しく、明朗、リズミカルなサウンドで、ポップで聴き易い面もあるかもしれません。2nd、3rdとメンバーチェンジを繰り返し確実に進化を遂げ、1972年発表の4枚目「こわれもの」で確固たる“イエス・サウンド”を確立し、一気に華を咲かせます。

J・アンダーソンの抽象的な詩、壮大な世界観を、4人の凄腕プレーヤーが一糸乱れぬ演奏で繰り広げる、凄まじくも感動的な楽曲。特に今作から加入したリック・ウェイクマン(Key)のクラシカルな要素が、“ユニークなロックバンド”であったイエスを明確な“プログレッシブ・バンド”へと成長させたような気がします。特筆すべきはどこを取っても一聴でイエスと分かるエッジの利いたアンサンブルで、通常の4リズムロックバンド編成でありながら、それぞれがバッキングの枠をはみ出した極めて個性的な演奏。自己主張が強過ぎて、音楽的に破綻してしまうギリギリのところで、絶妙なバランスの上に成り立っています。リズミカルなプログレの決定版「ラウンドアバウト」、イエス流交響曲とも言えそうなスケールの大きい「燃える朝焼け」など、各々のソロ曲と合わせてロックのスタンダードとも言える名盤です。

「こわれもの」でその名を知らしめたイエスですが、よほどメンバーのポテンシャルが高かった時期なのでしょう。いとも簡単にそれを上回る傑作を同じ1972年にリリースします。誰もが認めるイエスの最高傑作「危機」です。旧A面を締める18分を超える組曲「危機」、感動の盛り上がりを見せる「同志」、アグレッシブな「シベリアン・カートゥル」の全3曲。これが気に入るかどうかは好みもあるかと思いますが、一分の隙もないプログレ史上に燦然と輝く超名盤です。長尺の曲ばかりですが、じっくり腰を落ち着けて聴いていただければと思います。

驚異の全力投球で歴史的大傑作を作ってしまったイエス。やはり1972年という時代の空気が奇跡を起こしたという面もあるのでしょう。その後、さすがに息切れか(^^;)そこまでの出来には到達せず、長い歴史の中で、解散、再結成を繰り返し現在も現役バンドとして活動しています(メンバーは順列組み合わせのような状態ですが…)。個人的な好みでは上記2枚がとび抜けていて(他にも3rdや「究極」の「悟りの境地」、ポップス界で大成功を収めた「ロンリーハート」などの好盤が)、プログレ入門としては是非、「こわれもの」→「危機」の順番で聴いていただけたらと思います。バンドがどのように進化していったのかがよくわかると思います。

といった感じで今回はイエスのご紹介。イエスを特徴づけるワードとして「THE構築美」とさせてもらいましたが、“構築されたロック”の代表格として、その後のテクニック志向のロックバンドに多大な影響を与えました。私のバンドの話で恐縮ですが、ロックバンド編成の「エレクトリック・アストゥーリアス」が9/4に1stアルバムをリリースします。“構築された美しさによる感動”を追求した21世紀型プログレバンドです。9/3(土)レコ発記念ライブが赤坂GRAFFITIで行われます。よろしかったら是非お越し下さい!。

◆レコ発記念ライブサイト
◆アストゥーリアス・オフィシャルサイト
◆アストゥーリアスMySpace
◆『Legend of Gold Wind』オフィシャルサイト
◆【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]チャンネル
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