新製品も多数登場、クリエイターの祭典<シンセサイザーフェスタ2011>レポート

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10月8日・9日、東京・新宿でシンセサイザーメーカー、輸入代理店などによる展示、セミナーをはじめ盛りだくさんのプログラムを揃えたイベント<シンセサイザーフェスタ2011>が開催された。

<シンセサイザーフェスタ>は、日本シンセサイザー・プログラマー協会(JSPA)が主催、今回で10回目を迎える歴史あるイベント。10回目となる今回は、東京では10月8・9日(西新宿 芸能花伝舎)、大阪では10月9日(ヒューマンアカデミー大阪校B1ホール)に開催された。ここでは東京開場の模様を展示を中心にレポートする。

開場となった芸能花伝舎は小学校跡を利用した研修施設で、楽器メーカーによる展示は体育館、各種セミナーは教室で開催。トークショーやライブなどは体育館に次ぐ広さのG1スタジオで行われた。セミナーはMIDI検定セミナーのほか、各社製品の機能解説や使いこなしについて幅広くボリュームたっぷりに行われた。

校庭には淀橋町会による模擬店や屋台といった売店が出店しており、テーブルが並べられた屋外で食事もとれる(焼きそばや弁当などのほかアルコールも販売)という通常の楽器系イベントとは一線を画す空間が演出されていた。また、会場で配布されるイベントのパンフレットは価格が200円、その売上より100円が東日本大震災への支援金として「こどもの音楽再生基金」を通じて寄付される。そして、パンフレットを買うと売店で利用できる100円券がもらえ、その売上の一部も支援金として寄付される。


▲展示フロアは体育館。9つのメーカー、代理店が展示を行った。

▲8日にG1スタジオで行われたKEYBOARD SUMMIT III「鍵盤楽器はこう弾け!」。向谷実、篠田元一、小川文明、大浜和史、ゲストにソノダバンドの園田涼を迎えて開催。ピアノ、オルガン、シンセの演奏方法やアレンジ、制作の手法などについて、ヤマハ、ローランド、コルグのシンセの実演を交えながら熱く語られた。


▲小中学生優先、ニンテンドーDSとM01を使ったユニークなのセミナーが「初めてのデジタルミュージック」。M01の開発元であるDETUNEの社長、佐野氏も小学生に直接使い方をレクチャー。

▲楽器メーカーのハードウェアやパソコン用ソフトウェアだけでなく、iPad用アプリが多かったのも今回のイベントの特徴。「KORG Apps for iPadセミナー」は教室が満員になる人気。


▲「冨田勲の世界」と題してスペシャルトークセッションも開催された富田勲所有の機材が一挙公開された「The TOMITA Museum」。YAMAHA CS80、Sequential Circuits Prophet-5、Roland JUPITER-4&JUPITER-8、KORG MS-50、maestro Rhythm'n sound for guitar、Roland SYSTEM 100Mがずらり。ビンテージシンセファンにはたまらない展示。当然ながら音出し&タッチはNG。

■最新シンセが触れる・弾ける
■メーカー出店ブース

最も大きなスペースとなる体育館を利用していたのが、国内シンセメーカーおよび海外製品の輸入代理店によるメーカー出店ブース。ハードウェアシンセサイザーはもちろん、ソフトウェアシンセサイザーも多数用意され、実際に演奏ができる状態となっていた。また、メーカーの説明員に製品の特徴や使い方が聞けるとあって、楽器店では味わえない体験ができるイベントならではの光景が多く見られた。また、発売前の新製品も多数展示され、シンセ好き、楽器好きを大いに満足させる内容となっていた。

●コルグ

会場入口に一番近いブースを設けたコルグ。9つの音源を搭載したワークステーション「KRONOS」をはじめ、NordやAccessのシンセがずらり。nanoシリーズやmicroKEY、padKONTROLといったMIDIコントローラーと並び、Propellerheadの「Reason 6」と同社のオーディオインターフェイス「Balance」も展示。「ELECTRIBE SX」に加え、「monotribe」、「monotron」といったガジェット系楽器、「WAVEDRUM」、「WAVEDRUM Mini」などのシンセパーカッションも人気を集めていた。










●クリプトン・フューチャー・メディア

数多くのソフトウェア・シンセサイザー、音源を取り扱うクリプトン・フューチャー・メディアは、ソフトウェア音源やサンプルを扱うダウンロード販売サイトSONICWIREで販売される膨大な音源をすぐに再生できる状態でスタンバイ。札幌で開催された子ども向けイベント「ジュニア・チャレンジ・ジャム2011」においてROUTER.FM主催で行われたワークショップで小学生が作ったダンボールシンセも展示。ボタンを押せばちゃんと音が鳴り、つまみでピッチも変わるかわいいシンセだ。セミナー会場では、Vienna製品を使用した「バーチャルオーケストラ+α活用法」も実施。






●フックアップ

Arturia製品を中心に展示したのがフックアップのブース。Arturiaのハードウェアシンセ「Origin」はデスクトップモデルとキーボードモデルをラインナップ。ソフトウェア+キーボードの「Analog Exprerience」シリーズも最新モデル61鍵バージョンを含む各モデルを用意。他社製品ではWaldorfの「BLOFELD KEYBOARD」もスタンバイ。8日に行われた氏家克典氏によるセミナーには、ArturiaのCEOのフレデリック氏も登場、世界初公開(!)となる新製品「SEM V」の紹介も。Oberheim SEMを元にしたソフトウェアシンセサイザーで、現在、開発中。2011年中には出したいとのこと。









●アビッド テクノロジー

「Pro Tools」関連製品を中心としたアビッドのブースには、オーディオインターフェイス「Mbox」シリーズがずらり。M-Audioブランドの製品ではオーディオインターフェイスのほか、USB MIDIコントローラーの「Axiom」シリーズも用意。超小型の32鍵キーボードコントローラー「Keystation Mini 32」はiPadとともにデモ。49鍵を備えたバーチャルアナログシンセの「Venom」もそのサウンドに試奏者を集めていた。







●インターネット

インターネットは音楽制作ソフト「Singer Song Writer」とボーカロイド製品を中心に展示。10月21日発売の「VOCALOID3 Megpoid」がいち早く触れる機会となった。セミナー会場では、MegpoidとSinger Song Writer Proifessionalによる制作方法の解説も。シンセの音づくりやMegpoidの調整テクニックなどが披露された。




●エムアイセブンジャパン

アナログリズムマシンやギターアンプ、MPCをモチーフにしたSynch社のバッグの数々が並ぶエムアイセブンジャパンのブース。設計者であるトム・オーバーハイムにより復刻を果たした「SEM」3機種(PRO/ with Patch Panel/with MIDI to CV)は演奏できるようMIDIキーボードとともにスタンバイ。






●モリダイラ楽器

モリダイラ楽器はモーグシンセサイザーを多数展示。試奏者が絶えない人気機種「Little Phatty Stage II」「Minimoog Voyager XL」のほか、3段重ねで展示された「Slim Phatty」、アナログ・ペダルシンセ「TAURUS」などがスタンバイ。異色の電子楽器「Eigenharp(アイゲンハープ)」はイギリスのアイゲンラブ社の製品。Mac対応(Windows対応も予定)でUSBにより接続、専用のソフトウェアでソフトウェア音源をコントロールする。コントローラーに搭載されたボタン状のプレイキーは、それぞれがボリュームやピッチのアップ・ダウン、複数のエフェクトのコントロールが可能な3Dベロシティセンサー構造。トリガリングやフィルタリングを呼吸でコントロールするブレスパイプ、ベンドなどに利用できるリボンコントローラーも備える。展示モデルは最もコンパクトな「Eigenharp Pico」。







●ローランド

最も多くのハードウェアシンセを展示していたのがローランド。フラッグシップモデルの「JUPITER-80」をはじめ、「V-Synth GT」「Fantom G6」、ショルダーシンセ「AX-Synth」、ステージキーボードの「V-Combo」や「RD-700NX/300NX」、ボーカルデザイナー「VP-770」、ボーカルプロセッサーの「VP-7」も。「JUNO」シリーズはキーボードアンプ「KC-110」とともにセットアップ。発売されたばかりの6ch録音可能なポータブルレコーダー「R-26」、「QUAD-CAPTURE」をはじめオーディオインターフェイス各種も多数展示。ブース内では「GAIA」のセミナーなども実施。










●ヤマハ

ヤマハのブースは会場を入って正面に見える位置。「MOTIF XF」や「MOX 6/8」といったハードウェアシンセは、エディターやコントローラーをインストールしたiPadとともに展示。「TENORI-ON」はハードウェア版とともにiPad版の「TNR-i」も比較できるようスタンバイ。スタインバーグ関連では、新製品のオーディオインターフェイス「UR28M」「UR824」、Cubase用コントローラー「CMCシリーズ」6モデル(11月1日発売)が登場。CMCシリーズには、某海外メーカーのスタッフも興味津々。G1スタジオでは、GakushiによるMOTIF XF、MOXを用いた「ヤマハシンセサイザートーク&ライブ」が多くの来場者を集めた。










■シンセサイザーフェスタならではの多彩な展示
■クリエイターズサロン

クリエイターズサロンと名付けられたのが、インディーズレーベル、同人音楽サークル、出版社、専門学校、スマートフォンアプリなど多彩な展示販売ブース。ほかの楽器系イベントでは見られない展示が多数見られた。


▲beatnic.jpは、KORGのmonotoronを改造したモデル「Monotron++」や、monotron、学研大人の科学マガジンのSX-150に対応したMIDIインターフェイスを展示・販売。SX-150用は本体への改造は不要とのこと。「ChipTrick」は初心者向けの電子楽器キット。キットにはケースは含まれないが、イベント用にケース入りで展示されていた。

▲電子楽器博物館は、ハンドメイドのアナログドラムシンセ「XR-NoizBoxII」、LEDテクノバッジなどを展示・販売。アナログドラムシンセは圧電素子を貼りつけたタッパーなどを叩くことで発音をトリガーするデモ。単体での発音も可能。ポラードのSYNDRUMのクローン展示も(写真右上)。


▲米本電音楽器は、電気音楽家である米本実の活動を紹介。アルミの箱に組み込んだ電気回路をケーブルでつなぐことで音作り以外の実験も楽しめるシンセサイザーSYSTEM Yを中心に展示。キュートな電子楽器ヨネミンや書籍の販売も。

▲アールテクニカは、iPhone/iPad用アプリを展示。ループ再生や音程を変えずに速度を変えることで耳コピーを支援する「mimiCopy」は、iPodライブラリからのインポートやピッチ変更も可能。ギタリスト必携のアプリだ。App Storeで販売。


▲アールテクニカは発売間近のiPad用VJツール「COLORCODE VJ」もいち早く展示。画面のタッチで複数の映像を切り替え、映像出力用アダプターで外部ディスプレイに出力。動画のほか画像やテキストも表示可能、iPad内の音楽ライブラリーの曲も再生できる。

▲コウスキミュージックアンドサウンドはシンセ、ドラムマシン、サンプラーといった機材の修理をサポートする「Save the Vintage Project」を紹介。30年以上業界の技術に携わってきたプロの技術集団が修理方法を提案してくれる。CME社のキーボードなどの特価販売も。


▲同じくコウスキミュージックアンドサウンドで展示されていたSONUS社のオーディオ to MIDIコンバーター製品。「G2MV2」(ギターtoMIDI)、「B2M」(ベースtoMIDI)、オーディオをMIDIノートに変換してPC/MacにUSB経由でソフトシンセが演奏できる「i2M musicport」をラインナップ。CMEの高速、80mの電波到達距離を誇るワイヤレスMIDI「WIDI-X8」2個1組でいずれも送受信が可能。

▲SHIN-RYUのブースではペーパークラフトシンセサイザーや、シンセのつまみを模したマグネット、色鮮やかなマグネットパッチケーブルなどを展示。マグネットは冷蔵庫などにメモを留めたりするのに使うシンセ好きのためのグッズ。

◆シンセサイザーフェスタ2011
◆BARKS 楽器チャンネル
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