スマイレージ・前田憂佳の卒業について思う

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スマイレージの前田憂佳が、2011年の12月31日をもって、スマイレージおよびハロー!プロジェクトから卒業することが発表された。前田は芸能界を引退し、学業に専念する。

◆スマイレージ2010年の画像

とかく日本のアイドルシーンにおいて、その傑出したビジュアルとパフォーマンスに注目が集まりがちな前田憂佳だが、実際は、スマイレージというグループの中で、思慮深く、しっかりとした自分の考えを持ち、自分の考えと違うことについては、はっきりとした態度を取ることができる人。バランス感覚がよく、一歩引いた位置で自分自身、そして自分たちを客観的に見ることができる人。そして負けず嫌いで、不器用ながらも自分に厳しい一面を持ったストイックな人である。

また、インタビューすると、こちらの質問の意図を読み取り、期待以上の答えを返してくれる。わかりやすい具体例やたとえ話を持ち出して、自分の考えを的確に伝えることができる頭のよさを備えている。そして多分、おしゃべりをする自体、大好きな女の子だ(前回の「タチアガール」インタビュー終了後には、ダイエットに対する持論を熱く展開してくれたりもした)。

「2011年にやりたいこと…(しばし沈黙)…頭が良くなりたい! 本当に、自分で嫌になっちゃうんですけど、“やろう、やろう”って思っていても、やらないんですよ。やっても結構できないタイプで(笑)。ダンスや歌の覚えも遅いですし…そりゃ6年やってれば多少は覚えられるようにはなりましたけど(笑)。だから、やりたいことというか、“有言実行ができる人”になりたいです! ホント、切実なんです(笑)。」── 前田憂佳(BARKS「ショートカット」ミュージックビデオ撮影時インタビューより)

そして、前田憂佳というと、人一倍、謙虚だというイメージが強い。「私はばかだから」という意味合いの言葉も、これまで彼女の口からから幾度となく耳にした(今回の発表にも同じような発言が見られるが)。言うまでもなく、彼女は頭がいい。それは断言できる。ただ、本人の中ではそうではなく、もしかすると、コンプレックスにも似たようなものになっているのかもしれない。

誰にでもひとつやふたつはコンプレックスがある。そして人はコンプレックスに対して、大きく2通りの選択をとる。ひとつは見ないふりをしてやり過ごす方法。そしてもうひとつは立ち向かって克服しようとする方法。しっかりとした自分の考えを持ち、そしてストイックな一面を持つ前田に、前者の態度をとれというのは難しいことだろう。

学業と芸能活動。これらは両立できるという考え方もある。確かに両立している人も多い。しかし、これも前田の性格を考えれば選択肢にはなかったはずだ。両立とはいっても、学業を優先させれば、芸能活動に少なからず影響が出るし、芸能活動を優先させれば、少なからず学業に影響が出る。物事を客観的に見ることができる彼女は、これまで学業と芸能活動を両立させて、多くのファン、周りのスタッフ、学校や家族、近しい人たちに少なからず迷惑をかけてきたという事実を知っていた。そして何より、オフィシャルから発表された彼女のコメントにもあったとおり、どっちつかずの状態のままでいる自分自身を許せなかった。

「レコード大賞のあの場では、(私以外の)3人のことを“ほんとにすごいな”って思ってました。『最優秀新人賞を獲っちゃうなんて、この人たち、なんなんだよ』って。」── 前田憂佳(BARKS「有頂天LOVE」ミュージックビデオ撮影時インタビューより)

「おしゃべりが好きな、普通の女の子」。一方で前田は、もしかしたら自分のことをそんなふうにも感じていたのかもしれない。

高校2年生の夏から秋にかけてといえば、周りの友達がそろそろ受験へ向けて目標を定める季節。そんな中で、前田憂佳も、ひとりの普通の高校2年生の女の子として、自身の進路、将来について真剣に考えた。

「<怖いけど 自分で決めなきゃ / 私の進路だもん>っていう歌詞が好きです。中学の時とか進路相談ってあるじゃないですか。私、先生とすごく仲良くて、『私は前田にいろいろ言ってあげることはできるけど、最終的に決めるのは自分だからね。』って言われたのを、この歌詞を見て思い出しました。」── 前田憂佳(BARKS「タチアガール」ミュージックビデオ撮影時インタビューより)

誰のためでもない、自分にしかできない、自分の未来についての決断。

夢がなきゃ始まらないし、勇気がなきゃ出会いもない。自信に満ち、自慢したいような人生にするために、自分自身で下した決断。もちろんこの選択で、多くのファンを悲しませることになるのは、彼女自身が一番よくわかっている。また、我々が想像できないほどの悩み、苦しんだ期間も彼女にはあったはずだし、発表すること、そして今は発表したあとの恐怖を感じているかもしれない。それでも彼女は、ステージに立てば笑顔だったし、これからも笑顔を見せてくれるだろう。最後の最後まで、スマイレージとして、ひとりでも多くの人を笑顔にするために。

そんな彼女に、ファンとして、ひとりの人間として、どうするべきなのだろうか。

卒業を思いとどまるように願う。前田憂佳のファン、スマイレージのファンを辞める。最後の最後まで応援する。そっと見守る。いろんな反応があって当然だと思う。ただ、彼女は、決してスマイレージが嫌いになったわけでも、ハロー!プロジェクトとして活動することが嫌になったわけでもない。むしろ彼女は、かつて小川紗季や小数賀芙由香がそうであったように、スマイレージというグループやハロー!プロジェクトが変わらずに大好きだし、変わらずに大切な存在だと思っている。

大好きで、大切であるがゆえに、「いっぱいいっぱい、考えました。ばかだけど、ばかなりに精一杯考えました。」という前田憂佳が、自らに下した苦渋の選択。それが卒業だった。嫌いになったからじゃない。好きだからこそ、大好きだからこそ、自分の迷いや未来への想いで、スマイレージやハロー!プロジェクト全体に迷惑や影響を与えたくなかったのだ。

このことをひとりでも多くのファンが理解してくれることを今は切に願う。
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