日仏ハーフのトライリンガル・バンドDUSTZ、ジャンルも言語もミクスチャーな1stアルバム『TROIS』完成
取材・文●東條祥恵
――アルバム『TROIS』は、2009年のメジャー・デビュー作「Break&Peace」から3人体制に変わったいまのDUSTZまでの楽曲を収録した形になってましたが。
Ray(Vo):デビューしてからの2年間の集大成を作らなければ、というのが一番最初からあったんですよ。だけど、昔の曲はあまりにも色が違い過ぎて。まず、初期の曲や迷走してる時代の曲を、どういまの俺らっぽくやるのかっていう感じで作っていったんだよね?
KenT(G):そうだね。「Break&Peace」が1stシングルだったんですけど。これは特に色が違ったんで、メロと歌だけは残して、後ろのオケは新しく作り直しました。
Ray:ヴォーカルを録り直さなかったのは意味があって。一番最初の曲だったんで、歌い方とかいまと違うんですね。そこはあえて残しておきたかった。だからこの曲は“いま”と“過去”、一番最初と最後を結びつけてる曲になってます。
――いわばDUSTZの過去からいまをつないだアルバムということですね。そんななかに、ニュースでも話題になっていたDragon Ashの「Fantasista」のカヴァーも収録されていて。これはどんな風にとらえればいいんですか?
Ray:僕らバンドを組むきっかけが、学校でやってたチャリティ・イベントの文化祭なんですが。そのときにカヴァーした日本の曲がDragon Ashのこの曲で、いろんな曲をやってたなか、この曲が一番フランス人の同級生たちにウケたんです。文化祭で“ウォーオーオーオー”ってレスポンスが返ってきたとき「フランス人にも通用する曲なんだ」って、ここで僕らが初めて日本人とフランス人のボーダーを越えた。
Gus(B):俺らにとっちゃあ偉大な曲ですね。
Kent:大切な曲ですね。
Ray:そういうルーツにある曲なのでカヴァーしたんです。俺らなりのヨーロピアンなエッセンスを入れつつも。
――そうそうそう。そこ大事なところですよね? ミクスチャーといっても、アメリカンな音にならないところが。
Ray:やっぱり僕ら自身がヨーロッパ系なんで、ヨーロピアンな雰囲気はすごく大切にしようと思いましたね。それでサビにシンセを入れたりして。でも、もう一つ何か欲しいなっていうときに「外タレでも呼んでみちゃう?」って。
――なんですか、そのライトなノリ(笑)。
Ray:いやいやいや(微笑)。本当にそんなノリでいったら実現したんですよ。相当ブチ上がりました。テンションは。
――だって、お相手がLimp Bizkitのウェス・ポーランド(G)とジョン・オットー(Dr)ですもんね?
Gus:本当に好きで聴いてた人たちなんで、感動しましたね。先方から「OK!」が出た瞬間に。
――その後の「Re:member」はヨーロピアンなDUSTZがアルバムのなかでも一番よく出てる楽曲で。
Ray:そうですね。“ポップさ”“ロックさ”“エレクトロ”という3つの要素だと思うんですね。DUSTZは。この曲はポップとエレクトロに寄った曲。音もワザとチャラくしてみたり、手拍子入れてみたりという普段しないようなことも入れて。だけど、こんなこともやるバンドですよというのを伝えたくて、勢いある曲と一緒に頭の方に「DUSTZってこんなバンドですよ」という自己紹介の意味も込めて入れました。この曲自体は、僕らが出会った当時の事を歌詞にしてるんでこういうタイトルに。
――歌詞が青春チックですもんね。その甘酸っぱい感じが曲調にもマッチ!
Ray:だからロックロックせずに。
Gus:ちょっと明るい感じにしたんです。
――明るい曲って、実はDUSTZ、少ないですよね。ヨーロピアンなだけに。
Ray:バレちゃいました?(笑) 僕らね、基本、根暗(ネクラ)なんで。
(一同爆笑)
Gus:根暗が出てるアルバムだけど“ノリ”はすっごいある!!!!!
Ray:そうそうそうそう!!!!(笑顔)
――そこが影響しているのか、このアルバム、やたらと暗い場所から空へと飛び立つ、解き放たれたいと願っている歌詞が非常に多くて。歌詞、さらにはコーラスやギターの音色までもがそこにフォーカスしていったのが、5曲目の「FLY」。
Ray:この曲と「Border Line」は本当に初期、16~17歳の頃に書いたものなんですよ。その頃は本当に自由になりたかったし、“俺らはこれから音楽でいくんだ”ってあがいてる曲が多かったです。
Gus:だから、この2曲は歌詞が若いっていわれてもしょうがない(笑)。
Ray:そういう歌詞もいまだから歌える。「Border Line」は一番最初にDUSTZで作った曲なんです。
Gus:一番最初にデモ音源にした曲だね。
Ray:“いろんなボーダーラインを壊していこう”って初めて思った曲でした。DUSTZのテーマって、結局そこなんですよね。垣根をなくすというか。(メンバーの)フランスと日本の垣根もそうですし、ミクスチャーという音楽の形態もそうですし。いろんなところにある垣根を初めて自覚しながら書いたのがこの曲。
――垣根という意味では、このアルバムも日本のロック? 洋楽? どっちなの? って思うんですよ。聴いてて。
Ray:そこも気にしてないですよ。僕らは。いろんな音楽を聴いてる人たちが分かってくれるであろうなという要素がいろんな曲に含まれてるから。ロック好きならこういうところ、エレクトロ好きだったらこういうところ、UKロック好きならこういうところは面白いと思ってくれるだろうな、とかありますけど。
Gus:だから音楽好きなら誰にでも響くアルバムってことです。
Ray:日本は音楽をジャンルで区切るのが好きだけど、そういう垣根さえも僕らは越えていこうかなと。
Gus:枠にとらわれたくないんですよ。
Ray:昔からずっとなんかの形にはめられることが多かったんですよ。それは、バンドやっててもそうですし、僕らは普通に生きてても“フランス人なのか日本人なのか”とか“外国人だ”とかあるじゃないですか? そういうものに対して、生まれつき拒否反応を抱いてしまう。“こうでしょ?”っていわれると“違ぇよ!”っていいたくなる。
――そこが、なんでも垣根を越えたくなってしまうDUSTZの根源にあるものだ!
Gus:そうですね。見た目は“外人だけど、なにか?”っていう気持ちはありますから。
Ray:音楽は言葉の壁を越えていくとか、人種の壁を越えていくっていうわりに、これ洋楽なんスか? 邦楽なんスか? とか聞いてくるから。別にどっちでもいいし。僕らとしては。
KenT:ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)も自分は「音楽やってるだけだ」っていってて。それを周りが「サイケデリックだ」っていってただけだからね。僕らも、聴く人が「洋楽だ」って思えばそれでいいし。聴く人次第です。
Ray:いいこというねー。さすが(ジミヘンに)似てるだけのことある(爆笑)。
――そんなDUSTZだからこそ、歌う言葉もボーダーレスで、フランス語×英語×日本語をミクスチャーして歌うのも当たり前だったんですね。でも、そんななかで、いきなり日本語詞が多い歌があると逆にびっくりしちゃうんですよね。
Ray:そうですね(笑)。日本語イケちゃうんだ! ってね。でも、逆にいうと、フランス語とか英語が“音”として耳に入ってきませんか? そこにぽーんと日本語が聴こえてくると引っかかりが出るというのは、すごい狙った部分なんですよ。曲のなかで伝えたいことは日本語。そういうところはすごく考えましたね。
――今回もジャケットのアート・ワークがすごいことになっていますが。
Ray:これCGじゃないんですよ!
KenT:実はこれ、釣り糸でつるして。
Ray:それを髪にくっつけてるんです。このアート・ワークは、シングル2枚と、このアルバム『TROIS』で3作品目で。このシリーズはこれで終わりになります。
――あっ……アルバム・タイトルって“アン、ドゥー、トロワ”(フランス語の1、2、3)の『TROIS』だったんですね!!
Ray:おっそーーーっ!!(爆笑) けして“トロイ”とは読まないで下さいね。
――アルバム発売後は、代官山UNITでのワンマン・ライヴがありますね。
Gus:テンション上げて盛り上げていこうと思います。
KenT:言葉も人種もジャンルも関係なしに、感情で盛り上げていくんで、音を楽しんでほしいです。
Ray:なので、みなさんアルバムを聴いて予習してきて下さい。恥ずかしがらずに盛り上がってもらって、ステージと客席のボーダーを越えましょう!
1st FULL ALBUM
『TROIS』
2011年12月14日発売
【初回生産限定盤】CD+DVD
ESCL 3787-8 ¥3,500(tax in)
【通常盤】
ESCL 3799 ¥3,059(tax in)
[CD]
1. Toi=Moi:▽
2. spiral
3. Fantasista
4. Re:member
5. FLY
6. Orphee
7. Ca, c'est Paris ! ( DUSTZ Version )
8. ホシクズメイロ ~ Lost in Star Dustz ~
9. Border Line
10. Criez
11. Break & Peace (Ver. 1. 3)
12. Brilliant Day DJ BASS Low-Life-Dogs Mix
[DVD]※初回生産限定盤のみ
「Criez」「Swallow」「spiral」ミュージック・ビデオ
「Fantasisuta」着うた(R)配信中
<DUSTZ "TROIS" RELEASE PARTY 2011>
2011年12月18日(日)代官山UNIT
開場17:00/開演18:00
◆チケット詳細&購入ページ
◆DUSTZ オフィシャルサイト